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大学・研究所にある論文を検索できる 「原発性アルドステロン症における腎障害の定量的病理組織学的検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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原発性アルドステロン症における腎障害の定量的病理組織学的検討

尾形 博子 東北大学

2021.03.25

概要

【研究背景・目的】
 原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism; PA)は病的副腎皮質組織からの自律性アルドステロン過剰産生をきたす疾患であり、全高血圧の約5-10%を占める二次性高血圧症最大の原因疾患である。PA患者は、本態性高血圧症(Essential hypertension; EH)の患者に比べ心血管合併症の発生率が高く、初診時の慢性腎疾患(chronic kidney disease; CKD)の有病率が高いことが知られている。さらに、PAはEHに比べ、より若年性かつ難治性である。CKDは患者の長期予後を左右する合併症であり、これを防ぐための早期介入が求められる。しかし、PAにおけるヒト腎組織の詳細な病理組織学的解析はこれまで報告されておらず、実際にどのような障害が生じているのかの詳細は明らかなっていない。そこで、本研究ではPA患者におけるアルドステロン産生やその代謝に関わる酵素などに着目しEHと比較することにより、PAにおける腎障害の病理組織学的所見について検討した。

【研究対象と方法】
 本研究では、アルドステロン産生腺腫(aldosterone producing adenoma; APA)と診断されたPA症例19例および、PA症例の術後estimated glomerular filtration rate(eGFR)と合致する集団のEH症例31例を対象とした。対象症例の腎組織を糸球体硬化の程度、糸球体径、尿細管間質の線維化、炎症細胞浸潤、動脈硬化および細動脈硝子化について病理組織学的評価を行った。さらに尿細管上皮ではmineralocorticoid receptor(MR)、アルドステロン代謝に関わる11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1 and 2(11βHSD1/2)の免疫組織化学的検討を行った。副腎ではアルドステロン産性能の確認を免疫組織化学(cytochrome P450 family 11sub family Bmember 2; CYP11B2)により施行した。画像解析はデジタルイメージングソフトウェア(HALOTM)を使用した。PAのうち3例は電子顕微鏡による観察を行った。

【結果】
 尿細管におけるMR、11βHSD2の発現はEHに比べPAで高値であった(MR, p<0.0001; 11βHSD2, p<0.0001)。尿細管間質の線維化はEHに比べPAでより強く認められた(p=0.001)。分節性糸球体硬化(segmental glomerulosclerosis; SGS)はPAにおいてEHに比べより強く認められたが(p<0.0001)、全節性糸球体硬化(global glomerulosclerosis; GGS)は同等であった(p=0.4905)。GGSは術後eGFRの低下を直接的に反映した(ρ=-0.7317, p=0.0006)。糸球体径はPAでEHに比べ腫大していた(p=0.0001)。電子顕微鏡での観察では糸球体係蹄の内皮下腔拡大や軽度の足突起消失といった微小変化のみが認められた。中等大の動脈では内腔狭窄がEHに比べPAで強く認められたが(p=0.09)、内膜中膜比(intima-to-media ratio; IMR)はPAの値が低かった(p=0.03)。細動脈硝子化はPAでEHに比べ高度にみられ(p=0.03)、特に輸出細動脈の硝子化が目立っていた(p=0.005)。

【結論】
 本研究はPAのヒト腎組織における傷害像を特徴づけ、その傷害像はEHと異なることを初めて示した。PAでは同等のeGFRレベルであっても、EHに比べ腎全体に進行性の組織傷害が認められた。アルドステロンは、尿細管、podocyte、血管などに存在するMRを介して腎傷害を起こす可能性がある。特筆すべきは、PAの尿細管では11βHSD2優位に発現しており、腎での局所的なアルドステロン作用が増強されていた。これにより本来のネガティブフィードバックによる恒常性が保てず、腎障害が増悪する悪循環が生じていることが示唆された。したがって、PAではMR拮抗薬または遮断薬の投与を含む早期介入が必要と考えられた。

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