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大学・研究所にある論文を検索できる 「A functional single nucleotide polymorphism in ABCC11, rs17822931, is associated with the risk of breast cancer in Japanese」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A functional single nucleotide polymorphism in ABCC11, rs17822931, is associated with the risk of breast cancer in Japanese

Ishiguro, Junko 石黒, 淳子 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
 乳がんは日本でも増加しており、その原因は遺伝的要因と環境要因とが関係している。近年、ヒトゲノムの解析研究の進歩により、乳がんの原因となる可能性のある遺伝子がいくつも同定されている。そのなかでも、一塩基多型(SNP)は、一つ一つが乳がんの発症リスクにおよぼす影響は少ないものの一般人口における多型の頻度が高いことから、そのSNPによる人口全体への影響が注目されている。
 エストロゲン曝露は乳がんリスクと関連があり、授乳や出産はリスクを下げ、エストロゲン補充療法や肥満はリスク因子であることが知られている。本研究では、膜型輸送体ABCファミリーの一員で、エストロゲン前駆体などのステロイドホルモンの細胞外排出を主な役割とするABCC11の機能変化をもたらす多型であるrs17822931(G>A, Gly180Arg)と乳がんリスクとの関連を評価するため、症例対照研究を実施した。

【対象および方法】
 愛知県がんセンター中央病院において2001年から2005年の間にHERPACC(Hospital based Epidemiological Research Program at Aichi Cancer Center)に参加した乳がん患者697人と、年齢と月経状況を適合させた非がん患者1394人を対象とした。自記式質問票を用いて、初診から一年前の生活習慣などの情報を取得した。各因子と乳がんリスクとの関連は、交絡要因を調整した条件付きロジスティック回帰分析によりオッズ比(Oddsratio; OR)と95%信頼区間で評価した。エストロゲンに関連する因子(授乳の有無、出産の有無、初潮年齢、閉経年齢、初産の年齢、閉経後のBMI、ホルモン補充療法の有無、大豆の摂取量、運動の有無)によって層別化解析を行い各因子とABCC11多型との交互作用を評価した。共変量には乳癌家族歴、初産年齢、ホルモン補充療法の有無、通院の契機を含めた。

【結果】
 乳がん患者は対照群に対して、初参年齢が高く(年齢±SD; 26.2±3.43 vs. 25.6±3.60, p=0.001)、乳がん家族歴が多かった(7.8% vs. 5.3%)。また、通院契機は自己発見、その他の理由より医療機関から紹介された患者の方が多かった。マイナーアレルはGアレルで乳がん患者のGアレル頻度は10.6%、対照群のマイナーアレル頻度は13.1%であった。対照群の遺伝子多型分布ではHardy-Weinbergの法則が成立していた。ABCC11多型は、統計学的有意に乳がんリスクと関連していた。(Aアレルに対するGアレルのper allele OR=0.76、95%信頼区間0.61-0.94 p=0.012)。また、乳がん組織のエストロゲンレセプター(ER)発現の有無により、ABCC11の影響の大きさが異なっていた(P for interaction=0.047)。プロゲステロンレセプター、HER2の発現の有無に対するABCC11の影響の強さの差はなかった。エストロゲン曝露に関連する因子による層別化では、授乳歴無し(授乳歴無し群; per allele OR=0.51、95%信頼区間0.30-0.84、授乳歴あり群0.82、0.65-1.04、P for interaction=0.093)、低大豆製品消費(低大豆消費群; per allele OR=0.45、95%信頼区間0.29-0.69、中大豆消費群; 0.82、0.59-1.14、高大豆消費群; 0.98、0.65-1.46、P for interaction=0.005)においてGアレルの影響が強く認められた。

【考察】
 エストロゲンは細胞増殖促進因子であり、曝露量が多いほどER陽性乳癌が増加する。また、rs17822931はエストロゲン前駆体の排出に関連していることは知られている。その多型の頻度には人種差があり、日本人に多いAアレルを有する人は、ABCC11のエストロゲン前駆体の排出能力がGアレルを有する人より劣る事がこれまでの研究より知られている。本研究で、Gアレルの乳がんリスク減少効果がER陽性乳がんに強く認められた背景に、ABCC11を介した細胞内エストロゲン前駆体排出能の向上が存在した可能性が考えられる。また、エストロゲン関連因子による層別化解析において、体内エストロゲン曝露量が多い群(授乳歴なし)にGアレルの乳がんリスク減少効果が強く認められた事も、遺伝子多型の機能変化から推定される機序と矛盾しなかった。大豆摂取量が低いと大豆に含まれるイソフラボンによるエストロゲン作用抑制効果が低いことから、低大豆摂取群は細胞内におけるエストロゲン曝露量が多いと考えられ、Gアレルの乳がんリスク減少効果が強く出たことも矛盾しない結果だった。
 本研究は、参加者からの情報取得は診断前であることからリコールバイアスが少ないと考えられる。また、対照群の遺伝子多型分布ではHardy-Weinbergの法則が成立し、対立遺伝子の頻度は公的データベースと類似しており、妥当であると考えられる。さらに、参加者の生活習慣の特徴が名古屋市の一般住民のものと類似していること、また名古屋市の生活習慣の特徴は日本人のものと類似しており、外的妥当性が高いと考えられた。リミテーションとしては、サブグループ解析を行うにはサンプルサイズが十分でない可能性があり、さらに大規模な研究が望まれる。また、生活習慣因子などの参加者の情報は自己記入の質問紙法であり、避けがたい情報バイアスのある可能性は否定できない。最後に、既知のあるいは未知の交絡因子が存在する可能性も否定はできないと考えられた。

【結論】
 ABCC11 rs17822931遺伝子多型と日本人の乳がんリスクに関連を認めた。Gアレルは乳がん発症リスクと負の相関を示した。この関連は、特にER陽性乳がん、エストロゲン高曝露群の発症リスクに強く関連していた。ABCC11はエストロゲン前駆体の細胞外輸送機能を介して、乳がんリスクに寄与している可能性がある。

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