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大学・研究所にある論文を検索できる 「ビッグデータを用いたI型アレルギー疾患関連要因の網羅的探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ビッグデータを用いたI型アレルギー疾患関連要因の網羅的探索

森井, 航 筑波大学

2022.11.24

概要

目  的:アレルギー性鼻炎などのI型アレルギー疾患は、環境要因と遺伝的要因により発症する多因子疾患であり、罹患率の高さと経済的損失の大きさから、極めて社会的影響の大きい疾患であると考えられている。I型アレルギー疾患遺伝的要因の探索を目的に多くの疾患レベルでの関連解析が行われてきた一方で、抗原感作に基づく解析はほとんど行われていない。またI型アレルギー疾患は罹患者の生活の質を下げる症状を呈すが、適切な治療により抑えることができるため、通院率の改善が求められる。本研究では第一に遺伝学的要因の探索として、アレルゲンコンポーネント感作などの多くのアレルギー関連表現型について全ゲノム関連解析を実施し、抗原特異的な遺伝的要因の検出や、抗原間の関連についての比較を行った。また第二に通院に関わる要因の探索として、国民生活基礎調査データを用いた環境要因の網羅的な関連解析を実施した。

対象と方法:遺伝学的解析においては、国立成育医療研究センターにおいて集められた日本人出生ゲノムコホートデータ744名分を用いた。遺伝子型データはSNPアレイによるGenotypingと、whole genome imputationにより取得した。更にHLAアレル・アミノ酸多型については別途imputationを行った。また表現型データとして5歳時/9歳時のアレルゲンコンポーネント特異的IgE値データを用い、0.35ISU-Eをカットオフに抗原感作陽性・陰性に二分した。更にコンポーネントのタンパク質類似性から抗原グループ感作を、5歳時/9歳時の抗原感作数から汎抗原感作を定義した。更に5歳時点でのアレルギー症状データを使用した。更に5歳時IgEと9歳時IgEを組み合わせて早期抗原陽性者を定義し、9歳時IgEのうち相関の強い抗原ペアを定義した。これらの表現型についての全ゲノム関連解析をロジスティック回帰分析により検討した。
通院関連要因の探索においては、2016年国民生活基礎調査データセットを用いた。年齢区分、性別、世帯規模、家計支出、教育状況、飲酒・喫煙習慣、睡眠の質、心理的苦痛、喘息・アトピー性皮膚炎通院を解析対象項目とし、アレルギー性鼻炎通院との関連をロジスティック回帰分析により検討した。

結果:抗原特異的な関連として、9歳時Amb a 1感作とIGHVとの関連を検出した。更に9歳時Phl p 1感作とHLA領域との関連を検出し、関連の疑われるアミノ酸多型をHLA-DRで箇所HLA-DQで箇所見出した。更に抗原グループ特異的な関連として、9歳時プロフィリンとHLA領域との関連を検出し、関連の疑われるHLAアレルとしてHLA-DRB1*09:01, HLA-DQB1*03:03, HLA-DQA1*03:02を見出した。またプロフィリン感作のアミノ酸多型関連解析では、関連が疑われる多型をHLA-DRで箇所、HLA-DQで箇所見出した。更に疾患レベルでの解析では、喘息診断歴の関連遺伝子としてSMAP1, B3GAT2を検出した。更にスギ抗原Cryj1の早期感作に関連する遺伝子としてFAT1、RERGを検出した。また国民生活基礎調査データを解析した結果、アレルギー性鼻炎通院率は1.9%であり、アレルギー性鼻炎通院に関わる要因として高齢・喫煙習慣・睡眠不足・心理ストレス・世帯人数・家計支出の多さ・他のアレルギー疾患の通院といった社会的要因を明らかにした。

考 察:アレルギー関連表現型について網羅的に全ゲノム関連解析を実施した結果、抗原特異的な関連と非特異的な関連の双方を検出することができた。今回新規の関連として検出したAmb a 1感作関連遺伝子IGHVは、免疫グロブリンの可変部を構成する遺伝子であり、免疫グロブリンの多様性獲得に寄与している。他の抗原感作との関連はみられなかったが、IGHVはB細胞の成熟過程において遺伝子再構成を経て発現する性質を持っており、これによりAmba1抗原特異的な関連として検出された可能性が高い。またプロフィリン抗原とPhl p 1において関連がみられたHLAは代表的な免疫関連遺伝子であるが、今回の研究ではHLAアレル・アミノ酸多型レベルの解析によりそれぞれ関連が疑われるHLAアミノ酸多型を検出した。これは抗原とHLAタンパク質の抗原結合性が起因している可能性が高い。一方抗原非特異的な関連として、喘息診断歴とSMAP1, B3GAT2との関連が検出された。両遺伝子共にアレルギー疾患との既報は存在しないものの、B3GAT2遺伝子は肥満関連代謝物との関連が報告されており、肥満は喘息の憎悪因子に含まれているため、間接的に関連している可能性は否定できない。更にスギ抗原の早期感作で検出されたFAT1、RERGについては、FAT1と自己免疫疾患の既報が存在するものの、両遺伝子共に免疫細胞での遺伝子発現が見られず、どのようにアレルギーに関与しているかを含め、さらなる考察が必要であると考えている。そのため今後もさらなる検討が必要であると考えられる。今回の研究では表現型特異的な関連が検出され、一つの遺伝子が複数の形質に影響を与える現象(Pleiotropy)についての考察は困難であったが、今後サンプル数が拡充し各形質の関連遺伝子が同定されればPleiotropyについての考察が有用になると考えられる。
 また国民生活基礎調査データ解析において、アレルギー性鼻炎通院率は一般的なの有病率よりも遥かに低く、全国レベルで大きな乖離があることが示された。また経済的要因・心理的要因が検出されており、他のアレルギー疾患の通院も検出されていることから、他の疾患を併発する段階で初めて外来受診を考慮している可能性が示された。また本来罹患率の最も高い年齢層である労働者層における通院率は低く、時間的余裕などの要因からアレルギー性鼻炎通院治療を受けられていないことが示唆された。

結論:I型アレルギー疾患関連表現型の網羅的解析を通じて、I型アレルギー疾患の遺伝的要因を明らかにし、アレルギー性鼻炎の通院治療充実の必要性を示すことができた。

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