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Analysis of genetic risk factors in Japanese patients with Parkinson’s disease

金谷 雄平 広島大学

2021.05.27

概要

論文内容要約

Analysis of genetic risk factors in Japanese patients with Parkinson’s
disease
(日本人パーキンソン病患者における遺伝的リスク要因の検討)

主指導教員:丸山
(医系科学研究科

博文教授

脳神経内科学)

副指導教員:川上

秀史教授

(原爆放射線医科学研究所

分子疫学)

副指導教員:森野 豊之准教授
(医系科学研究科 脳神経内科学)

金谷

雄平

(医歯薬保健学研究科

医歯薬学専攻)

【背景】パーキンソン病(PD)は遺伝的要因と環境要因が関与して発症する神経変性疾患である。
本邦での有病率は 10 万人あたり 150 人程度と言われており、そのうち 5–10%は家族歴を有す
る。PD の遺伝的要因としては浸透率の比較的高い 19 の遺伝子が同定され、病因となる変異と
して一塩基多型(SNV)とコピー数多型(CNV)の両者が存在する。優性遺伝形式としては SNCA
や LRRK2、劣性遺伝形式としては PRKN や PINK1 が知られている。さらに、浸透率は低いが
発症リスクとなる感受性遺伝子として MAPT や GBA がある。これらの遺伝子の多くは孤発性
および家族性 PD の両方で報告されているが、同じ遺伝子でもバリアントによって浸透率が異な
る場合があり、原因遺伝子と感受性遺伝子を明確に区別することは難しい。そのため、本研究で
は PD の原因遺伝子と感受性遺伝子を合わせて PD 関連遺伝子と総称する。これまでの日本人に
おける研究では、PRKN と LRRK2 が頻度の多い遺伝子として知られている。一方で、遺伝的
リスク要因は人種や地域によって異なることがこれまでの研究により明らかになっており、特に
アジア人においては LRRK2 p.G2385R バリアントが孤発性 PD の遺伝的リスク要因となること
が示されている。しかし、日本人における PD 患者の遺伝的リスク要因を網羅的に調べた報告は
まだない。本研究では日本人の孤発性および家族性 PD 患者において PD 関連遺伝子の SNV と
CNV を網羅的に解析し、遺伝的リスク要因を検討した。
【方法】神経内科医により PD と診断さ
れた 221 人を対象とした。発症年齢(age at onset: AAO)ごとに 3 つの集団に分類した。①グル
ープ E、AAO < 50 歳 (n=38)、②グループ M、50 ≤ AAO< 70 歳 (n=98)、③グループ L、AAO
≥ 70 歳 (n=85)。全ての検体で次世代シークエンサを使用した既知の 15 の PD 関連遺伝子の SNV
解析と MLPA キットを使用した CNV 解析を行った。GBA 遺伝子に関しては、ターゲットシー
クエンスに加えて、日本人の GWAS においてリスク要因と同定された 3 つのバリアントに対し
てサンガー法を追加で行っている。同定されたバリアントの病原性は MDSGene と ClinVar を
参照して判断した。それらのうち病原性ありと判断したバリアントを解析対象とし、良性と判断
したバリアントは今回の解析から除外した。次に、病原性不明と判断したバリアントは 4 つの

in silico 予測ツール(SIFT、PolyPhen-2、MutationTaster、CADD)を使用して病原性を評価し
た。3 つ以上の予測ツールで病原性ありと判断されたバリアントを本研究の対象とした。これら
のバリアントのうち dbSNP に記載されていない新規バリアントはサンガー法で確認した。劣性
遺伝形式の PD 関連遺伝子に存在するヘテロ接合性バリアントについては議論が分かれるが、明
確に病原性があるとは認められていないため、本研究では遺伝的リスク要因から除外した。統計
学的解析は AAO グループごとの遺伝的リスク要因保有率の比較には Fisher の正確検定を行い、
多重比較に Bonferroni 法を使用した。また PRKN と LRRK2 の AAO の比較には Welch の t 検
定を使用した。有意水準は p<0.05 に設定した。【結果】221 人の PD 患者のうち 58 人(26.2%)
に遺伝的リスク要因を認めた。そのうち家族歴が明らかな患者は 26 人(12.0%)で、家族歴が明
らかでない患者にも遺伝的リスク要因をもつものが同等数いるという結果であった。AAO グル
ープ別では、グループ E は 44.7%、グループ M は 25.5%、グループ L は 18.8%となりグループ
L と比較するとグループ E で有意に遺伝的リスク要因保有率が多かった(p=0.012)。グループ E
とグループ M の比較では有意差はなかったが、グループ E で遺伝的リスク要因保有率が多い傾

向となっていた。グループ M と L の比較では保有率に明らかな差は認めなかった。これまでの
報告と同様に、若年発症患者では PRKN の CNV が最も多く見つかった。SNV ではアジア人に
おける感受性バリアントである LRRK2 p.G2385R が最も多く同定され、グループ M と L に多
い傾向にあった。これらの結果より、グループ E にはタンパク構造に大きな変化やタンパク発
現に影響するような CNV を有する患者が多く、さらにグループ M と L には比較的病原性が低
い SNV を有する患者が多い傾向にあることがわかった。次に我々は関連遺伝子ごとの発症年齢
を比較した。PRKN バリアント保有者と LRRK2 バリアント保有者の AAO を比較すると、PRKN
バリアント保有者は有意に若年発症であった(p=0.03)。遺伝的リスク要因を認めなかった患者は
幅広い年代に分布していたが、比較的高齢発症者に多い傾向があった。また、新規バリアントと
して LRRK2 p.S973G と GIGYF2 p.P371L を同定し、サンガー法で確認した。【考察・結論】
本研究では PD 患者 221 人の解析を行い、58 人(26.2%)に遺伝的リスク要因を認めた。日本人の
PD 患者ではこれまでの報告と同様に若年発症患者ほどより高率に遺伝的リスク要因を有して
いた。PD 患者全体では、PRKN や LRRK2 バリアントが最も頻度の高いリスク要因であった。
本研究における家族歴を認める患者の割合(12.0%)は一般的な家族性 PD の割合と同等であった。
しかし、本研究の PD 患者の遺伝的リスク要因保有率は 26.2%であり、遺伝的リスクを有して
いても家族歴が明らかでない患者が多いことも明らかになった。
しかし、MLPA では複数の CNV
の cis もしくは trans 位置を特定できないこと、家族歴を有する患者を優先的に登録する選択的
バイアスがかかっている可能性があること、GIGYF2 など病原性不明バリアントに対して正常
コントロール群との比較が出来ていないことは本研究において遺伝的リスク要因の過剰評価に
繋がっている可能性がある。逆に、新しく見つかった CHCHD2 や VPS13C などスクリーニン
グ出来ていない遺伝子バリアントもあり、遺伝的リスク要因の過小評価となっている可能性もあ
る。また、GBA 遺伝子は PD における重要なリスク要因であるが、偽遺伝子の存在のために次
世代シークエンサでは解析が難しい遺伝子である。本研究ではターゲットシークエンスに加えて
日本人 GWAS でリスク要因と同定された 3 つのバリアントに限定してサンガー法で解析した。
そのため、3 つのバリアント以外を偽陰性として過小評価しているかもしれない。PD の遺伝的
要因は未解明なことがまだ多い。今後も引き続き多くの遺伝的知見を引き続き蓄積していくこと
が、PD 発症機序の解明や将来的なテーラーメード治療への貢献に繋がっていくと考えられる。

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