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書き出し

単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおける励起子輸送特性

島崎, 雅史 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24927

2023.09.25

概要

( 続紙 1 )
京都大学
論文題目

博士(エネルギー科学)

氏名

島崎 雅史

単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおける励起子輸送特性

(論文内容の要旨)
本論文は、新たな半導体としての学術研究ならびに次世代光・電子デバイス応用に向け注目
されている二次元半導体(単層遷移金属ダイカルコゲナイド)における、励起子の輸送特性と
その制御に向けた研究結果について述べている。序論(第 1 章)
、遷移金属ダイカルコゲナイ
ドの物理的性質 (第 2 章)
、試料作製及び実験方法(第 3 章)
、研究結果(第 4―6 章)
、本研究
のまとめと今後の展望(第 7 章)より構成されている。
第 1 章では研究背景として、将来に向けて半導体デバイスの性能向上のアプローチの一つと
して、二次元半導体のような量子物質が候補となりうることを示し、そのポテンシャルの高さ
や、社会実装するにあたって克服すべき課題について述べている。
第 2 章では、単層二次元半導体の結晶構造及び電子構造、その光物性を支配する励起子や特
異な電子構造に由来するバレー物性に関する、基本的な内容について説明している。
第 3 章では、試料作製に用いた化学気相成長法の詳細、励起子輸送特性を明らかにするため
に構築した光学測定系とその原理について説明している。
第 4 章では、接合界面に急峻かつ非対称なエネルギー構造を有する単層 WSe2/MoSe2(二セ
レン化タングステン/二セレン化モリブデン)面内ヘテロ構造における、室温での励起子発光
特性の結果を示している。このヘテロ構造に対して、接合界面付近の発光特性とその空間プロ
ファイルを詳細に評価し、
WSe2 から MoSe2 に一方向の励起子輸送が生じていると結論づけた。
第 5 章では、温度が励起子輸送特性に与える影響を調べるため、低温下において励起子発光
特性を測定し、室温でのそれと比較をした。実験結果の解析から、低温では WSe2 から MoSe2
へ長距離に渡って励起子輸送が生じ、MoSe2 の発光が増強されていることを確認した。また、
低温の WSe2 励起子の拡散長が、室温でのそれよりも短くなっており、その励起子輸送の媒体
として暗励起子が関与している可能性を指摘した。さらに、低温での偏光分解発光測定から、
WSe2 でのバレー情報が MoSe2 に移送されていないことを明らかにしている。
第 6 章では、マイクロメートルオーダーで化学組成が変化する単層 WS2xSe(2-2x)ヘテロ構造
において、エネルギー勾配中における励起子発光特性を評価した。エネルギー勾配が大きいほ
数値計算によって、
ど、低エネルギー方向に発光領域が広がっていることを実験的に確認した。
エネルギー勾配が作り出す駆動力によって、非対称な励起子輸送が再現できる事を見出した。
最終的に第 7 章において、本研究で得られた知見を要約し、今後の研究展望につ
いて述べている。
このように本論文で示した、二次元半導体ヘテロ構造での励起子輸送特性の解明
と そ の 制 御 に 関 す る 研 究 成 果 は、将 来 の 光・電子デバイス応用ならびにエ ネ ル ギ ー 応 用
研 究 に 大 き く 寄 与 す る も の で あ り、博 士 の 学 位 審 査 の 請 求 に 値 す る と 認 め る 。ま た 、
修了に必要な単位を修得済みであることを確認した。

(続紙 2 )
(論文審査の結果の要旨)
本論文は、半導体二次元物質である単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおいて、その光
学的性質やデバイス応用に深く関与する、励起子輸送特性に関する研究について述べてい
る。新たな物性探求としてのみならず、次世代光・電子デバイス応用の観点から注目され
る単層遷移金属ダイカルコゲナイドにおいて、エネルギーや情報輸送が可能な励起子の輸
送制御が求められている。励起子は電気的に中性な粒子であるため、その輸送制御には既
存の電子デバイスのような電圧を用いた駆動方式が適用困難であり、それ以外の方式を構
築する必要がある。今回、単層遷移金属ダイカルコゲナイドからなる面内ヘテロ構造を主
な対象とし、その特異な励起子輸送特性に関して以下の結果が得られた。
1) 室温において単層二セレン化タングステン(WSe2 )と単層二セレン化モリブデン
(MoSe2)からなる、面内接合ヘテロ構造の光学特性を詳細に調べた。その結果、接合部付
近において WSe2 からの発光が減少し、MoSe2 の発光は増強する振る舞いを見出した。さら
に界面付近での MoSe2 の発光が、WSe2 の光吸収に由来していることを示し、WSe2 から
MoSe2 への励起子輸送を介したエネルギー移動が、一方向に生じていることを実験的に明ら
かにした。また、励起子のエネルギー移動はおよそ 10 ピコ秒程度のオーダーの時間で高速
で生じることが判明し、デバイス動作の周波数に換算するとサブ THz の高周波域で駆動可
能なことを突き止めた。
2) 室温で得られた単層面内ヘテロ構造の発光特性を低温の場合と比較することで、WSe2
から MoSe2 への励起子輸送距離が低温下で伸長し、MoSe2 での励起子発光がより増強され
ることを確認した。その一方で、低温下の WSe2 の明励起子の拡散長が室温下よりも短くな
っていたため、そのエネルギー輸送過程において寿命が長い WSe2 の暗励起子が関与してい
る可能性を指摘した。さらに偏光分解発光測定を行い、WSe2 のバレースピン分極の情報が、
エネルギー移動過程を介して MoSe2 に輸送されないことが判明した。
3) マイクロメートルスケールで化学組成が変化した混晶 WS2xSe(2-2x)において、励起子輸
送特性を評価した。その結果、混晶比の変化によるエネルギー勾配が大きいほど、得られ
る発光イメージが、非対称になり広がることがわかった。数値計算によって、エネルギー
勾配が作り出す駆動力によって励起子が拡散し、この非対称な発光イメージが再現できる
ことを見出した。
以上のように、本論文では二次元半導体からなる特異なヘテロ構造において励起子輸送
特性を明らかにし、従来の等方輸送ではない一方向輸送が可能であることを明らかにした。
ここで得られた知見は、物性創発の観点での基礎科学的意義とともに、電気的に中性な励
起子を用いた高速かつ省エネルギーオプトエレクトロニクス構築の基礎となるなど、工学
的に重要な貢献が認められる。また、令和 5 年 8 月 25 日に実施した論文内容とそれに関連
した試問の結果合格と認めた。
論文内容の要旨、審査の結果の要旨及び学位論文の全文は、本学学術情報リポジトリに
掲載し、公表とする。ただし、特許申請、雑誌掲載等の関係により、要旨を学位授与後即
日公表することに支障がある場合は、以下に公表可能とする日付を記入すること。 ...

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