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大学・研究所にある論文を検索できる 「時間分解ライマン分光によるダイヤモンド励起子の微細構造と熱的安定性の研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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時間分解ライマン分光によるダイヤモンド励起子の微細構造と熱的安定性の研究

市井, 智章 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k22871

2021.01.25

概要

電子とホールのクーロン束縛状態である励起子は、半導体物理の基礎概念の一つとして古くから注目されてきた。エネルギー構造や微細構造分裂、光・フォノンとの相互作用など数多くの研究があり、光物性分野の基礎構築に大きく貢献してきた。また、ホールを陽子と見なせば水素原子様であり、しばしば「固体における水素原子」と記述される。これまで、励起子は、水素原子とのアナロジーによって、エネルギー構造が説明されてきた。しかし、本来「離散的対称性を持つ固体中の励起子」と「連続的対称性を持つ真空中の水素原子」は、対称性の観点から異なるものである。特に間接遷移型半導体では、結晶場により電子とホールがそれぞれ異方的エネルギー分散を持つ。そのため間接遷移型半導体における励起子の対称性は、水素原子が持っていた連続的な回転対称性が破れ、大きく低下していると考えられる。結晶場による対称性の破れは、それまで縮退していたリュードベリ準位に分裂をもたらすとLipariらにより予測されている。しかし、そのような分裂はGaAsやSiのような典型的な半導体では小さく、長い励起子研究の中でも未解決な問題として残されていた。

そこで、近年合成技術が飛躍的に進歩し、高純度な単結晶試料が得られるようになったダイヤモンドに注目した。間接遷移型のバンドギャップを持つことから、電子・正孔対の寿命は長く、それぞれ異方的なバンド分散を有する。さらに、GaAsやSiのような典型的な半導体と比較して1桁以上大きなリュードベリ定数を持つ。励起子の対称性の破れによるエネルギー分裂はリュードベリ定数に比例することから、大きな励起子微細構造分裂が期待される。

本研究では、ダイヤモンドの励起子内部遷移の周波数域をカバーする広帯域テラヘルツ時間領域分光システムを構築した。これにより、紫外光によりダイヤモンドに励起子を生成し、励起子内部遷移による吸収スペクトルを測定できる。この測定手法はライマン分光と呼ばれ、励起子の内部エネルギー構造を直接観測できる利点を持つ。この装置を用いて、対称性の破れに起因したダイヤモンド励起子の2P準位の微細構造分裂を観測することに成功した。また、電子とホールの異方的エネルギー分散を、摂動論的に取り入れた有効質量ハミルトニアンを用いて、分裂エネルギーを計算した。その結果、実験結果を定量的に再現・記述できることがわかり、Lipariらによる理論予想の妥当性を示した。2P準位の微細構造分裂から、ダイヤモンド励起子の束縛エネルギーの値を93.5±2.0 meVと初めて決定し、リュードベリ定数から10%程度異なることを示した。

ライマン分光を用いて、ダイヤモンド励起子とその熱的解離状態である電子・正孔プラズマの存在比率の温度依存性を決定した。励起子の熱的安定性は、サハの方程式と呼ばれる化学平衡モデルによって記述されることが示されている。しかし、これまでダイヤモンドにおけるサハ方程式の平衡定数は文献によって大きく異なっていた。また、束縛エネルギーとしてリュードベリ定数が使用され、対称性の破れによる効果を考慮できていなかった。今回、ライマン分光の結果を用いて平衡定数を精密に決定することにより、束縛エネルギーとして対称性の破れの効果を考慮した値を使用すべきであることがわかった。これにより、様々な温度・密度におけるダイヤモンド励起子の存在比率を予測することが可能となった。

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