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臨床応用を目指した食道粘膜血流センサーの新規構造開発と臨床モデル動物における実験的研究

河原井, 駿一 東北大学

2023.03.24

概要

博⼠論⽂

臨床応⽤を⽬指した⾷道粘膜⾎流センサーの新規構造開発と
臨床モデル動物における実験的研究

東北⼤学⼤学院 医学系研究科 医科学専攻
外科病態学講座 ⼼臓⾎管外科学分野
河原井

駿⼀

⽬次

ページ
1. 要約..........................................................................................................................5
2. 略語........................................................................................................................10
3. 研究背景.................................................................................................................11
3.1 ⼤動脈瘤に対するステントグラフト治療の実際...............................................11
3.2 胸部⾷道の解剖と⾎流⽀配................................................................................12
3.3 ステントグラフト治療後の⼤動脈⾷道瘻(aortoesophageal fistula: AEF).........13
4. 研究⽬的.................................................................................................................17
5. 研究⽅法.................................................................................................................18
5.1 新たな⾷道粘膜⾎流センサーの作製と⼯学的性能評価....................................18
5.1.1

⾷道粘膜⾎流センサーの作製...................................................................19

5.1.2 ⾷道粘膜⾎流センサーの⼯学的性能評価.................................................19
5.1.3 レーザードップラー⾎流計の測定原理.....................................................20
5.2 実験 1 実験動物................................................................................................21
5.2.1

⿇酔............................................................................................................21

5.2.2

実験中の⾎⾏動態のモニタリングの確⽴...................................................22

5.2.3

ステントグラフト内挿術の⼿順.................................................................22

5.3

測定項⽬と⾎流測定.......................................................................................23

1

5.4 ステントグラフト挿⼊前後の⾷道粘膜⾎流評価.............................................24
5.5 実験 2-1 ステントグラフト出⾎性ショックモデル.........................................24
5.6 ステントグラフト出⾎性ショックモデルの⾷道粘膜⾎流評価.......................25
5.7 実験 2-2 ノルアドレナリン投与モデル...........................................................25
5.8

ノルアドネナリン投与モデルの⾷道粘膜⾎流評価.........................................25

5.9 統計解析...........................................................................................................26
6. 研究結果.................................................................................................................27
6.1 新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーの⼯学的評価..................................27
6.1.1

新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーの測定深度と測定可能範囲.....27

6.1.2 従来⾎流センサーと新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーの⽐較.....27
6.1.3 ⾷道粘膜⾎流センサーの細径化による⽐較.............................................28
6.2 臨床モデル動物における実験的研究...............................................................28
6.2.1

実験 1 ⾎⾏動態........................................................................................29

6.2.2

実験 1 ステントグラフトモデルの⾷道粘膜⾎流変化.............................29

6.2.3

実験 2 ⾎⾏動態.........................................................................................30

6.2.4

実験 2-1 ステントグラフト出⾎性ショックモデルの⾷道粘膜⾎流変化....31

6.2.5

実験 2-2 ノルアドレナリン投与モデルの⾷道粘膜⾎流変化......................31

7. 考察........................................................................................................................33
7.1

⾷道粘膜⾎流センサーの新規構造開発と測定精度評価..................................33

2

7.2

⾷道粘膜⾎流センサーの細径化に関する評価................................................36

7.3 ⼆次性⼤動脈⾷道瘻(S-AEF)に関する考察.................................................37
7.3.1

好発部位....................................................................................................37

7.3.2 発症時期....................................................................................................39
7.4 ステントグラフト留置前後の⾷道粘膜⾎流変化.............................................40

7.5 ステントグラフト出⾎性ショックモデルの粘膜⾎流変化..............................42

7.6 ノルアドレナリンの⾷道粘膜⾎流に与える影響.............................................42
7.7

今後の研究の発展性.........................................................................................46

7.7.1

⾮閉塞性腸間膜虚⾎(non-occlusive mesenteric ischemia; NOMI)の研究

への応⽤.......................................................................................................................46
7.7.2

7.8

新薬開発への応⽤.......................................................................................47

他分野への臨床応⽤.........................................................................................48

8. 本研究の限界.........................................................................................................49
9. 結論........................................................................................................................50
10. 謝辞......................................................................................................................51
11. 参考⽂献...............................................................................................................52
12. 図の説明...............................................................................................................58
13. 表..........................................................................................................................69
3

14. 図..........................................................................................................................70

4

1.

要約

【背景】

胸部⼤動脈瘤に対する⾎管内治療であるステントグラフト内挿術(thoracic
endovascular aortic repair; TEVAR)は開胸操作や体外循環を必要とせず、体への
負担が少ない低侵襲治療である。フレイルを有する⾼齢者や併存疾患により従来の
⼈⼯⾎管置換術が困難であった症例に対しても治療可能となり、世界的に症例数は
増加の⼀途にある。TEVAR 周術期の脳梗塞、脊髄障害の発⽣率はそれぞれ 4.0%、
2.7%と報告されており、初期成績は⼈⼯⾎管置換術と遜⾊ない結果が得られている。
しかし、⽐較的新しい治療であるため、⻑期的な成績はいまだ不明である。術後遠
隔期に⾎管内治療特有の合併症であるステントグラフトのずれ(migration)や動脈
瘤内への⾎液の漏れ(endoleak)が発⽣する可能性がある。また発⽣頻度は 1.5−1.
9%と⾼くないが、TEVAR 術後に⼆次性⼤動脈⾷道瘻(secondary aortoesophageal
fistula; S-AEF)を発症することも知られている。⼀旦発症すると根治を⽬指すた
めには⾷道抜去、ステントグラフト摘出と⼈⼯⾎管置換術を⾏わなければならず、
⼿術の侵襲は⼤きく、致死率が40%以上と⾮常に⾼いのが現状である。全⾝状態
が安定した後に⾷道再建を⾏う必要もあり、術後 QOL の著明な低下が⼤きな問題
となっている。近年の TEVAR 症例数の著しい増加により、S-AEF の症例も増加し
てきている。臨床的には看過できない問題となってきているが、S-AEF の早期診断
の⽅法は未だ確⽴されていないのが現状である。

5

S-AEF の発症には様々な要因が複雑に関わっていると考えられているが、⾷道組織
の⾼度な虚⾎がベースにあると想定されている。そのため、⾷道粘膜⾎流の低下を
直接測定できる⾎流センサーの開発が望まれていた。⽚平らが Micro Electro
Mechanical system (MEMS) 技術を⽤いて、レーザードップラー⾎流計(laser
Doppler flowmeter ; LDF)の原理を応⽤した⾷道粘膜⾎流センサーを開発し、動物
実験においてブタステントグラフトモデルを作成し、TEVAR 急性期に⾷道粘膜⾎流
(esophageal mucosal blood flow; EMBF)が低下することを実証した。⾷道粘膜⾎
流センサーは S-AEF の早期発⾒に⾮常に有⽤な測定装置と考えられたが、従来の⾷
道粘膜⾎流センサーには組み⽴ての煩雑さ、構造的な未熟さや体内での指向性の⽋
如など克服すべき課題が存在していた。
【研究⽬的】

本研究では臨床応⽤を⽬指した⾷道粘膜⾎流センサーの新規構造開発を⾏うこと、
新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーの測定精度評価を⾏うことを⽬的とした。
【研究⽅法】

・⾷道粘膜⾎流センサーの新規構造開発と性能評価実験
新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーの基本的なコンセプトは⽚平らが作成した
ものを踏襲した。⾷道粘膜⾎流センサー本体は 2 本の光ファイバー、レーザー光反
射⽤の直⾓プリズムミラー、これらを固定するための治具から構成されている。今
回センサーの作製に⽤いた素材や固定⽤の接着剤は、臨床での使⽤を考慮して全て

6

⽣体適合性のあるものを使⽤した。組み⽴てたセンサーを経管栄養注⼊⽤経⿐胃管
カテーテルに内挿して固定し、⾷道粘膜⾎流センサーを作製した。新規構造開発し
た⾷道粘膜⾎流センサーは体内でのセンサーの指向性を⾼めるために、2 本の⽩⾦
マーカーを装着した。⾎液モデルシステムを構築して新規構造開発した⾷道粘膜⾎
流センサーの測定精度を評価した。従来⾎流センサーでも同様の実験を⾏い、測定
結果を⽐較し、相関性を評価した。また同⼀のデザインでサイズの異なる 3 種類の
⾎流センサーを作製し、センサーの細径化による測定精度への影響を評価した。

・新規⾷道粘膜⾎流センサーによる臨床モデル動物における⾷道粘膜⾎流評価
実験1

ブタステントグラフトモデル

家畜ブタに全⾝⿇酔を施し、実際の⼿術⼿技に準じてステントグラフトを留置して
ブタステントグラフトモデルを作成した。留置前後の⾷道粘膜⾎流変化を新規構造
開発した⾷道粘膜⾎流センサーを⽤いて評価した。この際、胸椎をメルクマールに
Th 1 から Th 10 までの胸部⾷道の粘膜⾎流の経時的変化を、ステントグラフト⾮カ
バー領域(上部⾷道:Th 1-Th 3)と、ステントグラフトカバー領域(下部⾷道:
Th 6-Th 8)の 2 領域に分けて測定を⾏った。
実験 2-1 ステントグラフト出⾎性ショックモデル
瀉⾎により破裂性胸部⼤動脈瘤の⾎⾏動態を模擬したステントグラフト出⾎性ショ
ックモデルを作成し、⾷道粘膜⾎流の変化を評価した。この際、出⾎性ショック状

7

態の評価としてショック・インデックス(shock index; SI)を⽤いた。重症出⾎性
ショックモデルとして SI が 1.0 以上を維持するように瀉⾎を⾏なった。
実験 2-2 ノルアドレナリン投与モデル
ステントグラフト出⾎性ショックモデルに対し昇圧剤であるノルアドレナリンを経
静脈的に持続投与し、平均⾎圧を 70mmHg 以上に維持した。ノルアドレナリン投与
による昇圧効果が⾷道粘膜⾎流に及ぼす影響を評価した。
【研究結果】

新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーは、⾎液モデルシステムを⽤いた性能評価
実験では、良好な測定精度を⽰した。従来の⾎流センサーと⽐較し、測定結果には
良好な相関性が得られた。また、サイズの異なる⾷道粘膜⾎流センサーの測定結果
においても、良好な相関性が得られており、センサーの細径化による測定精度への
⼤きな影響は認められなかった。
臨床モデル動物における⾷道粘膜⾎流評価では、ステントグラフト留置前のベース
ラインの⾷道粘膜⾎流は均⼀ではなく、多峰性のパターンを⽰した。ステントグラ
フト留置後、ステントグラフトカバー領域の⾷道粘膜⾎流は、留置前と⽐較して有
意に低下した(前:34.1±18.8ml/min/100g VS 後:16.7±6.6ml/min/100g,
P<0.05)。⼀⽅、⾮カバー領域では有意な⾎流の変化は⾒られなかった。
ステントグラフト出⾎性ショックモデルではステントグラフトカバー領域の粘膜⾎
流は、低値ながら有意な変化を認めなかった。⾮カバー領域では、ショック前と⽐

8

較すると有意な⾎流の低下を認めた(前:20.8±9.8ml/min/100g VS 後:12.9±
8.6ml/min/100g、P<0.01)。
ノルアドレナリン投与モデルでは、⾎圧上昇後、ステントグラフトカバー領域の
⾷道粘膜⾎流は、ショック直後と⽐較して上昇した(15.7±7.8ml/min/100g VS
34.7±24.6ml/min/100g, P<0.05)。⾮カバー領域の⾷道粘膜⾎流も(20.8±9.8
ml/min/100g VS 34.3±17.5ml/min/100g, P<0.05)と上昇し、いずれの部位におい
てもショック直後と⽐較して⾎流は有意な増加を認めた。ノルアドレナリン投与後、
ステントグラフト⾮カバー領域では⾷道粘膜⾎流は安定して経過したが、カバー領
域では⾷道粘膜⾎流は低下傾向にあった。
【結論】

⽣体適合性素材を⽤いて⾷道粘膜⾎流センサーの新規構造開発に成功した。⾎液モ
デルシステムを⽤いた実験では、新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーは、良好
な測定精度が得られていた。また測定精度を損なうことなくセンサーの細径化を⾏
うことは可能であった。新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーは臨床モデル動物
において、⾎⾏動態の変化に応じた⾷道粘膜⾎流の変化をリアルタイムに評価する
ことが可能であった。新規構造開発した⾷道粘膜⾎流センサーの臨床応⽤により、
S-AEF の早期発⾒の可能性、センサ―の細径化による低侵襲化や、様々な医療分野
への応⽤の可能性が⽰唆された。

9

2.

略語

・TEVAR:thoracic endovascular aortic repair, 胸部⼤動脈ステントグラフト内挿術
・S-AEF:secondary aortoesophageal fistula, ⼆次性⼤動脈⾷道瘻
・MEMS:Micro Electro Mechanical System, 微⼩電気機械システム
・LDF:laser Doppler flowmeter, レーザードップラー⾎流計
・EMBF:esophageal mucosal blood flow, ⾷道粘膜⾎流
・HR: heart rate, ⼼拍数
・SBP: systolic blood pressure, 収縮期⾎圧
・SI:shock index, ショックインデックス
・ID:inner diameter, 内径
・OD: outer diameter, 外径

10

3.

研究背景

3.1 ⼤動脈瘤に対するステントグラフト治療の実際

従来の胸部⼤動脈瘤の治療法は、開胸して動脈瘤を露出し、動脈瘤を切除して代⽤
⾎管を縫着する⼈⼯⾎管置換術を⾏うのが⼀般的であった。直接動脈瘤を露出する
には胸⾻正中切開や開胸操作を必要とするため創部が⼤きく、また体外循環の使⽤
が必要であるため、体への侵襲が⼤きいのが実情であった。そのためフレイルを有
する⾼齢者や、併存疾患を多く合併する症例には、⼈⼯⾎管置換術は実施困難であ
った。近年、より低侵襲な⾎管内治療である、胸部⼤動脈ステントグラフト内挿術
(thoracic endovascular aortic repair; TEVAR)が普及してきている。ステントグ
ラフトとは、⾦属製のバネ状の⾃⼰拡張型ステントを取り付けた⼈⼯⾎管であり、
これを圧縮してカテーテル内に収納して使⽤する。TEVAR はカテーテルを⾎管内に
挿⼊して動脈瘤のある部位まで進めて展開し、動脈瘤への⾎流を遮断する⼿術⽅法
である。体外循環使⽤を必要とせず、通常は⿏径部の⼩切開で⾏うことが可能であ
り、⼿術時の体への負担が少ないのが特徴である。その低侵襲性のため、TEVAR は
世界的に急速に広まった 1-4。現在⽇本で使⽤できる企業製ステントグラフトは、以
下の 5 種類である。①
system (テルモ)、②

Bolton Medical 社製 Relay Thoracic Stent-graft with Plus
Najuta thoracic stent graft system (SB カワスミ株式会社)、③

Zenith Alpha thoracic stent graft (COOK Japan)、④
graft(⽇本メドトロニック)、⑤

Valiant Captivia thoracic stent

Gore TAG thoracic endoprosthesis (⽇本ゴア合

11

同会社)(図1)。 ...

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