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大学・研究所にある論文を検索できる 「Synthetic biological study on cyclic electron transport around photosystem I in Arabidopsis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Synthetic biological study on cyclic electron transport around photosystem I in Arabidopsis

Zhou, Qi 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23740

2022.03.23

概要

サイクリック電子伝達は、二酸化炭素の固定に必要なATPとNADPHのうちATPのみを合成することで、両者の合成バランスを調整する。一方、光が過剰な時にチラコイドルーメンを酸性化することで、電子伝達にブレーキを掛ける。被子植物では、PGR5依存経路とNDH依存経路が存在するが、二つの経路が、いかに協調的に働き、使い分けされているかは、明らかになっていない。

 過剰な光による光傷害の標的は光化学系Ⅱであるが、傷害を受けた光化学系Ⅱは、速やかに修復を受ける。一方、野外のように光の強さが変動する下では、光化学系Iに過剰な電子が流れ込むことで、光化学系Iの光傷害が起こる。これは植物にとって致命傷になる。サイクリック電子伝達は、光化学系Iの上流(ドナー側)で電子伝達を抑制することで、光化学系Iに過剰な電子が流れ込むことを防いでいる。一方、サイクリック電子伝達が、光化学系Iに留まる過剰な電子を汲み出すことで、光化学系Iの光傷害を防ぐモデルが考えられているが(アクセプター側制御)、その貢献の大きさや電子の汲み出しメカニズムは未知である。

 本研究は、シロイヌナズナの野生株及びそれぞれのサイクリック電子伝達を欠く変異株の電子伝達制御を人工的に改変し、その影響を調べることで、アクセプター側制御の生理機能とメカニズム、また、光化学系Iを光傷害から保護するために、二つのサイクリック電子伝達がいかに関わるかを明らかにすることを目的とした。

 周氏は、この電子伝達の人工的改変の手段として、クラミドモナスのPTOX2遺伝子を選んだ。PTOX2は、プラストキノンから電子を受け取り、酸素を水まで還元する酵素で、クラミドモナスでは、過剰な電子の安全弁として機能することが知られている。一方、シロイヌナズナもPTOXをもつが、その活性は、PTOX2に比べて、格段に低い。シロイヌナズナ野生株に導入されたPTOX2は、光合成の誘導時に、効率的な電子の安全弁と機能した。また、光化学系Ⅱと連動し、ルーメンを酸性化することで、電子伝達のブレーキを瞬時に誘導した。この二つの機能から、PTOX2は、光合成誘導時に、光化学系Iに過剰な電子が流れ込むことを防ぐ、優秀なドナー側制御装置であることが明らかになった。

 PGR5依存サイクリック電子伝達を欠損するシロイヌナズナ;変異株は、ルーメンを酸性化することができず、電子伝達にブレーキを掛けられない。pgr5変異株に、PTOX2を導入したところ、野生株背景同様、電子の安全弁としての効果とルーメンの酸性化に依存したブレーキの誘導が確認された。しかし、それでも過剰電子が光化学系Iに蓄積した。このことは、PGR5が、ドナー側の制御以外で光化学系Iの酸化に関わることを示している。この未知の機能は、PTOX2が相補したΔpΗの形成とは独立であり、光化学系Iのアクセプター側の電子プールをプラストキノンプールに移す、アクセプター側の制御のモデルを提唱した。

 さらに、PTOX2をNDH複合体を欠損するcrr2変異株に導入した。crr2変異株では、光合成誘導時に電子伝達ブレーキの誘導が遅れる。したがって、その程度はPGR5より低いものの、ドナー側の制御に貢献していることがわかった。変異株背景と異なり、PTOX2の導入により、光化学系Iは完全に酸化された。この結果から、PGR5依存経路は、ドナー側とアクセプター側の両方に機能するが、NDH依存経路は、ドナー側のみ貢献することがわかった。NDHは、PGR5よりΔpΗの形成には効率が良く、電子伝達速度が遅くてもルーメンの酸性化には有効であり、ドナー側の制御に特化したことは、理にかなっている。

 さらに周氏は、深刻な光化学系Iの光傷害が起きる光強度が変動する環境下でのΡΤΟΧ2導入株の表現型を調べた。光合成誘導時と同様に、ΡΤΟΧ2は、crr2背景で光化学系Iの酸化に有効であったが、pgr5背景では、光化学系Iを酸化することはできなかった。またPTOX2株は、crr2背景でのみ、光化学系Iの変動光による光傷害を軽減することを示し、変動光下における、アクセプター側制御の重要性を明らかにした。

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