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大学・研究所にある論文を検索できる 「The effect of macrophages on an atmospheric pressure plasma-treated titanium membrane with bone marrow stem cells in a model of guided bone regeneration」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The effect of macrophages on an atmospheric pressure plasma-treated titanium membrane with bone marrow stem cells in a model of guided bone regeneration

外山, 直人 名古屋大学

2021.04.06

概要

【緒言】
 Guided bone regeneration (GBR)は、骨再生を目的とした治療法として臨床応用されている。GBRは生体材料の遮蔽膜により骨再生のスペースを保持し非骨形成性組織の侵入を防ぐことが原理とされるが、根底にある分子レベルでの生物学的メカニズムは十分に説明されていない。
 埋入された生体材料に最初に付着するマクロファージは炎症性のM1と抗炎症性のM2と双極性を示し、その分極は生体材料の表面修飾により影響される。GBRの遮蔽膜として用いられるチタン(Ti)の表面修飾による骨再生、特に骨髄間葉系幹細胞(hBMSC)に及ぼす影響は近年報告されるようになってきたが、マクロファージに着目した報告は少ない。
 大気圧プラズマ(APP)処理は、安全かつ容易な操作が可能であり、Ti表面を親水化させるために有用な方法である。本研究では、GBRの遮蔽膜として用いられるTiをAPP処理することにより骨再生が促進され、その機序としてマクロファージが関与するとの仮説を立て、検証した。

【方法】
 厚さ0.02μmのTiを6mm径の円形に成形し、窒素ガスを用いた大気圧プラズマ発生装置を使いAPP処理した(APP-Ti)。未処理のものをN-Tiとして実験に用いた。Ti表面を走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分光法、原子間力顕微鏡、水接触角(WCA)で評価した。
 2種類のTi上でマクロファージに分化させた単球細胞株THP-1(hMps)を培養した。hMpsについて細胞増殖能をWST-8、炎症性/抗炎症性遺伝子をqPCR(CD80、CD163、CD206、IL-1β、IL-10)、蛍光免疫染色(IL-1β、IL-10)で評価した。また培養上清を液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS/MS)で評価した。
 またAPP-TiとN-Tiで培養したhMpsと非接触型共培養し、細胞遊走能をhMpのqPCR(SDF-1)およびhBMSCのcell migration assayで評価した。また、hBMSCの骨形成関連遺伝子をqPCR(Runx2、OCN、Col1)、石灰化能をアリザリンレッドS染色、ALP活性で評価した。
 動物実験では、10週齢のSprague-Dawleyラットの頭蓋骨に4.7mm径の骨欠損を設定しAPP-Ti、N-Tiで被覆したGBRモデルをμCT、ヘマトキシリン-エオジン染色で評価した。

【結果】
1. Tiの表面解析
 N-TiとAPP-Tiの間でトポグラフィーに有意な変化はなかった(Fig.1a、b、d-f)。APP-Tiの表面の元素の割合はOがN-Tiの表面よりも有意に高くなった(Fig.1c)。APP-TiのWCAは、N-Tiと比較し有意に小さかった(Fig.1g-i)。
2. Ti上におけるマクロファージの細胞増殖能、炎症/抗炎症性遺伝子の発現解析
 WST-8の結果、APP-TiはN-Tiに比べて2時間後の細胞数が有意に少なかった。(Fig.2a)。APP-Ti上のhMpsでは、炎症性遺伝子であるIL-1βの発現は低下し(Fig.2c)、抗炎症性マーカー遺伝子であるIL-10、CD163、CD206の発現は有意に上昇した(Fig.2d-f)。蛍光免疫染色像においても同様の結果を示した(Fig.2g-i)。
3. 培養上清のLC/MS/MS
 LC/MS/MSの結果、N-Ti、APP-Tiで培養したhMpsに由来する特異的なタンパク質をTable.1に示す。骨芽細胞の分化に関連するタンパク質としてPAI-1およびSyndecan-2を同定した。
4. 単球細胞株THP-1(hMps)との非接触型共培養によるhBMSCsの解析
 APP-TiではhMpのSDF-1、hBMSCsのRunx2、Col1の遺伝子発現がN-Tiと比較して有意に上昇した(Fig.3a-d)。MigrationassayではAPP-TiにおけるhBMSCsの遊走能はN-Tiと比較して有意に向上していたが(Fig.3e)、石灰化能に関してN-TiとAPP-Tiとの間に有意な差はなかった(Fig.3f-h)。
5. GBRモデルによる解析
 μCT解析では、N-TiとAPP-Tiの骨欠損部の不透過性は時間の経過とともに向上していたが、両群間に有意差を認めなかった(Fig.4b、c)。組織学的解析でも1〜2週間で欠損部に新たに形成された骨が観察されたが両群間に有意差を認めなかった(Fig.4e)。

【考察】
 APP処理はトポグラフィーを変化させることなく、Ti表面のO原子の割合を増加させ濡れ性を向上させた。これは、早期の段階よりhMpsの細胞接着と増殖速度、炎症/抗炎症性マーカーの発現に影響を与えた。特に炎症性マーカーであるIL-1βの低下、抗炎症性マーカーのIL-10の上昇はM2マクロファージに分極したことが考えられる。
 培養上清のLC/MS/MSにより、N-Ti上およびAPP-Ti上で培養したhMpsは異なる機能を持つことが示唆された。またN-Ti上で特異的に検出されたPAI-1、Syndecan-2は骨芽細胞の骨形成能に関連しており、hMpsがhBMSCの骨形成能へ影響を及ぼすことを裏付けることになった。
 APP-Ti上での非接触型共培養はhMpのSDF-1の遺伝子発現を上昇させhBMSCの遊走を促進した。骨形成関連遺伝子の発現もN-Tiに対して有意に上昇したが、石灰化結節の形成やALP活性に有意差はなかった。この不一致は骨形成遺伝子の内因性発現よりも外因性タンパク質の影響が大きいことが窺われる。先行研究の多くは骨形成関連遺伝子の発現と石灰化結節の形成とALP活性の結果は一致するとしているが、IL-4およびIL-13によって誘導された従来のM2マクロファージを用いており、本研究のようにAPP処理で誘導したhMpsは、M2マクロファージとは異なる表現型である可能性が示唆される。
 動物実験では放射線学的および組織学的解析の結果、APP-TiおよびN-Tiは新生骨の体積に有意差はなく、Tiに付着したマクロファージの効果は限定的であることが示唆された。GBRで骨形成を促進するためには、トポグラフィーの変化やTi表面への成長因子やサイトカインの固定などのさらなる改変が必要である。

【結論】
 Tiに付着したhMpsがhBMSCの遊走能、骨芽細胞分化に影響を与える。APP処理によりhMpsはhBMSCの遊走をさらに促進するが骨形成への影響は限定的であることが示唆された。

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