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大学・研究所にある論文を検索できる 「農地集積・資源保護に果たす集落営農の役割とその経営効率性に関する研究―地域差と2006年担い手政策後の変化を中心に―」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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農地集積・資源保護に果たす集落営農の役割とその経営効率性に関する研究―地域差と2006年担い手政策後の変化を中心に―

小田, 昌希 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23963

2022.03.23

概要

我が国において地域農業の持続可能性と継承は非常に重要な問題である。しかし、地域農業は我が国が抱える農業構造問題により個別農家による営農の継続だけでは持続可能性を担保することが非常に難しい状況となっている。

個別農家による地域農業の維持継承が困難な地域では、集落内の農家を構成員として営農組織が地方自治体や行政からの支援を受けて組織化が進められ、個別農家の営農の補完機能や農業諸資源の保全機能の役割を担っていた。中でも集落を基盤とする集落営農組織は中核的農家が不在となる地域で中心的な農業経営体として機能しており、中核的農家が枯渇していた北陸・近畿・中国地方で普及が進められていた。しかし、2002年から始まる米政策改革大綱による食料・農業・農村基本計画の改定や2006年に施行された担い手経営安定法とそれに基づく品目横断的経営安定対策(経営安定対策)による集落営農の担い手化推進策により集落営農は「助成金の受け皿」として全国的に普及することとなった。また政策支援の対象となる組織は農政が求める自立経営が可能な地域農業の担い手として展開する組織に限られ、その様な要件が設定されたことから、多様な組織形態を持つ集落営農が組織化されることとなる。これにより地方自治体を含めて、各地域で農業構造が大きく変化しただけでなく、集落営農組織そのものの設立理念の変化も求められることとなった。さらに担い手政策の施行からすでに15年近く経過したことから、政策後に普及が進んだ地域でも様々な問題に集落営農組織は直面している。中でも、人的資源の問題と財政面の問題は組織の維持継承を困難にしている。また集落営農組織が全国的に普及したことで、集落を基盤とした組織である関係から地域社会の中核的存在として機能しているため、組織の維持継承の問題が地域社会の存続に大きく影響する状況となっている。

以上から、集落営農は担い手政策施行前後でその設立理念が異なり、さらに政策後全国的に普及が進んだことで組織の維持継承が地域農業だけでなく地域社会にとっても必要不可欠となっている。そこで本研究は米政策改革における担い手政策による集落営農の担い手化推進策がもたらした影響について、農地、農業資源、法人化の影響の観点から明らかにし、また現在の集落営農の経営効率性を分析することで、農業構造改革による集落営農の普及が地域社会に与えた影響を明らかにし、今後の集落営農の展望と課題を議論した。

第一章では、集落営農組織の形成背景と米政策改革における担い手政策が集落営農に与えた影響、そして現在の集落営農が抱える問題について整理し、課題を明らかにした。特に担い手政策の前後での集落営農の設立理念の変化について考察している。第二章では、集落営農の普及時期や農業諸環境の異なる東北、北陸、近畿の3地域を分析対象とし、集落営農の農地集積効果について検証した。農地集積の要因分析は地域ごとに抱える問題と密接な関係を持ってはいたものの、集落営農そのものは農地集積を促進しており、政策施行により集落営農が全国的に広まったことは農地集積を加速化させたことを明らかにした。第三章では、二章と同じく、東北、北陸、近畿の3地域を対象に、耕作放棄地の発生要因と担い手政策に伴う集落営農の性質変化の影響に関するインパクト分析を行い、それを通じて、集落営農がもつ耕作放棄地抑制効果とその変化について明らかにした。集落営農を設立している地域では耕作放棄地の発生が抑制されており、担い手政策施行後に設立された集落営農も政策前の集落営農と同様に農業資源の保全機能を備えた組織であることを明らかにした。

第四章では、担い手政策における集落営農の担い手化への展開推進策による法人化が、農地利用と生産活動、資源保全活動にどのような影響を及ぼしているのかについて、PSMおよびPSM-DIDを用いたインパクト分析をおこなった。農業生産法人化による農地に対する政策効果は先行研究が明らかにしたようにほとんど影響がないといえるが、東北では若干の影響があることから、政策後に集落営農の急増した地域では法人化と任意組織の間で農地に与える影響に差異が存在する可能性があることを示した。法人化により集落営農組織の複合経営が大きく促進されたが、環境保全活動および集落内農家の意識への影響は顕著ではなく、またその影響についても地域ごとに異なっていたことを明らかにした。

第五章では、集落営農の経営を展望するため、集落営農の類型別構成や各類型組織の変化を概観し、「集落ぐるみ」の組織化を行っている集落1農場型と協業組織型組織間の農業生産の効率性についてDEA法を用いて計測し、また効率スコアの影響要因について比較分析をおこなった。集落ぐるみの集落営農である集落1農場型と協業組織型の農業生産の効率性の間には差があり、集落1農場型の組織の効率性は向上しているのに対して、他方協業組織型の効率性は減少傾向にあった。また、特定農業法人として法人化している集落営農の全体効率性が高く、特に協業組織型の場合ではその傾向が強いことが明らかとなった。農業生産の効率性の向上には経営規模拡大による規模の効率性を向上させる必要があるが、そのためには適切な投入要素の改善が必要となることが示唆された。

終章では、各章の分析結果を踏まえ、担い手政策による集落営農への影響と今後の集落営農における農業の持続可能性の展望及びその為の課題について考察している。今後の集落営農組織の展開に必要な要素として以下の4点が提言される。第一に、集落営農の普及とその維持継承を地方自治体だけでなく、政策的に支援する必要がある。第二に、集落営農の法人化の推進をおこない、組織の営農機能の向上を促進する必要がある。法人化は農業資源の利用・保全に対する影響では、任意組織との差はほとんど存在しない一方で、法人化により複合経営化が進められ、地域コミュニティーの活性を促す。第三に、組織間の合併・再編による集落ぐるみの集落営農の形成促進、とりわけ集落1農場型の集落営農への発展の促進が重要である。第四に、農業生産のさらなる効率性の向上には制約があることから、補助金増額等による政策支援により集落営農の経営状況の改善を進めることも重要と考えられる。

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