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大学・研究所にある論文を検索できる 「日本周辺で漁獲されたケンサキイカのふ化場所と移動経路に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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日本周辺で漁獲されたケンサキイカのふ化場所と移動経路に関する研究

山口, 忠則 YAMAGUCHI, Tadanori ヤマグチ, タダノリ 九州大学

2020.09.25

概要

ケンサキイカUroteuthis edulisはヤリイカ科に属する暖水性のイカで、青森県以南の日本周辺から東南アジア、オーストラリア北部に至る広い海域に分布し、日本海の山陰沿岸から対馬東水道の九州北西岸海域では重要な漁業対象種になっている。沿岸域では主にいか釣り漁業によって漁獲されるが、漁獲量は年々減少の一途をたどっており、適切な資源管理が求められているなか、日本周辺に来遊するケンサキイカのふ化場所や移動経路は未だ明らかになっていない。本研究では、本種の資源管理を行う上で重要な生物情報となるふ化場所と移動経路を、頭部に存在する平衡石に形成される日周輪の解析と、平衡石に含まれる微量元素(Ca, Sr)の電子線マイクロアナライザーによる分析、ならびに海洋データ同化システムによる海況情報(水温、海流)を通して推定した。

 水温管理下で飼育したケンサキイカから平衡石を採取し、Sr/Ca比と飼育水温の関係を調べたところ、一定の負の相関がみられた。対馬東水道で6月に採集されたケンサキイカは、2月頃に最も高い水温を経験していたことから、10月頃に東シナ海南部でふ化し、2月前後に黒潮流域を通過した後、対馬東水道に来遊したと推測された。当該海域では、同一漁船の一度の操業で大小さまざまなサイズのケンサキイカが漁獲されるが、大サイズの個体は黒潮流域から天草海周辺に移動し、成長しながらゆっくりと五島列島沿岸を北上したと考えられた。一方、小サイズの個体は黒潮流域から比較的速い海流によって済州島の南部海域を経て、対馬周辺海域へ移動したと考えられる。同様に、日本海南部や対馬西水道、相模湾、伊勢半島(尾鷲沖)でサンプリングされた大小サイズのケンサキイカ(6~8月齢)も東シナ海南部がふ化場と考えられ、特に相模湾で夏に漁獲される大サイズのケンサキイカは、天草海周辺を経由して黒潮で運ばれたことが推測された。

 日本海南部と対馬東水道では、秋にブドウイカと呼ばれる季節来遊群が漁獲され、未成熟個体が多く、胴部や触腕が太いことが特徴である。これらは春に東シナ海南部でふ化して、小サイズの状態で対馬水道を通過し、対馬北東の渦構造の海域で夏を過ごした後、水温躍層の崩壊をきっかけに周辺漁場に移動したものと考えられた。東シナ海と同じ大陸棚とはいえ、底層水温が著しく低い海域での滞在が成熟等に影響したものと推察される。さらに、海洋数値モデルを利用した粒子追跡実験を東シナ海南部から行ったところ、ケンサキイカが海流に沿って移動していることが矛盾なく示された。

 以上、本研究により、ケンサキイカは東シナ海南部で主に秋から春にかけてふ化して、海流によって日本の東西沿岸に運ばれ、その移動経路には重要な分岐点が複数存在することが初めて明らかになった。

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