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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on Canine Breed-Specific Gastrointestinal Disorders in Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on Canine Breed-Specific Gastrointestinal Disorders in Japan

大参, 亜紀 東京大学 DOI:10.15083/0002008260

2023.12.27

概要

審 査 の 結 果 の 要 旨
氏 名 大参 亜紀
犬や猫では多種多様な「品種」が存在する。また、それぞれの品種において
特徴的な「品種特的疾患」が好発することは以前からよく知られている事実で
ある。とりわけ日本国内では伴侶動物としての犬の流行に大きな波があり、動
物集団の遺伝的背景に偏りがあることから、品種特異的疾患が生み出されやす
いという土壌がある。そこで本研究では、日本における犬の品種特異的消化器
疾患に関する一連の研究を行った。
第 1 章:ミニチュア・ダックスフンドの炎症性結直腸ポリープにおける臨床的
および病理組織学的特徴に関する回顧的研究

本章ではまず、日本の犬における結腸および直腸ポリープの発生について調
査するために疫学的研究を実施したところ、ミニチュア・ダックスフンドは他
の犬種に比べて炎症性結直腸ポリープ(ICRP)の発生リスクが統計学的に有
意に高いことが明らかとなった。この結果を受け、続いて ICRP と診断された
ミニチュア・ダックスフンドを対象とし、その臨床的特徴を明らかにするため
に回顧的研究を実施した。本犬種における ICRP は直腸および下行結腸におけ
る多発性ポリープとして認められるものが多く、病理組織学的検査では粘液産
生の亢進と肉芽組織の増生が典型的であった。また、内科的治療として免疫抑
制療法が多くの症例において有効であった。
本研究により、ミニチュア・ダックスフンドの ICRP は国内における品種特
異的消化器疾患の一つであることが示された。また、病理組織像や治療反応性
などから背景には免疫学的異常が関与しているものと考えられた。
第 2 章:ジャック・ラッセル・テリアの消化管腺癌における臨床的および病理
組織学的特徴に関する回顧的研究

本章では、国内において発生頻度の増加傾向が認められていたジャック・ラ
ッセル・テリアの消化管腺癌について、その臨床的特徴を明らかとするために
回顧的研究を実施した。その結果、ジャック・ラッセル・テリアは他の犬種に
比べて消化管腺癌の発生リスクが有意に高いことが示された。病変は胃幽門や
直腸において単発性あるいは多発性に認められ、病理組織学的検査では乳頭状
あるいは管状腺癌に分類される所見が確認された。治療としての外科的あるい
は内視鏡的切除後の再発率は高いものの、予後は良好となる傾向があり、特に
胃腺癌については他の犬種と比較して生存期間の有意な延長が認められた。

本研究より、ジャック・ラッセル・テリアで発生する消化管腺癌は他の犬種
とは異なる病態を示す品種特異的消化器疾患であることが疑われた。
第 3 章:柴犬の慢性腸症に関する回顧的研究

3-1:柴犬の慢性腸症における臨床的特徴と予後
本章では最初に、柴犬において発生する慢性腸症の臨床的特徴を明らかとす
るために回顧的研究を実施した。柴犬は他の犬種よりも慢性腸症の発生リスク
が有意に高く、また、病理組織学的検査では特に十二指腸において重度の病変
を示す傾向が認められた。さらに、慢性腸症と診断された柴犬の生存期間は他
の犬種に比較して有意に短いことが明らかとなった。
本研究により、柴犬において好発する慢性腸症は極めて予後不良であり、他
の犬種で発生するものとは区別して捉えるべき品種特異的消化器疾患の一つで
ある可能性が示された。
3-2:柴犬の慢性腸症におけるリンパ球クローン性検査の意義
次に、柴犬の慢性腸症における PCR 法を用いたリンパ球抗原受容体遺伝子
再構成(PARR)解析の意義について検討するために、慢性腸症と診断された
柴犬を対象としてさらなる回顧的研究を進めた。その結果、PARR 解析におけ
るクローン性の有無と病理組織学的検査におけるリンパ球上皮向性の有無との
間に統計学的に有意な関連性が認められた。さらに、PARR 解析においてクロ
ーン性が陽性であった柴犬は陰性であったものよりも生存期間が有意に短縮す
ることが示された。
本研究により、慢性腸症と考えられていた柴犬の一部は消化器型小細胞性リ
ンパ腫の診断がより妥当であることが示唆された。また、柴犬では当初は慢性
腸症であったものがのちにリンパ腫へと変化する可能性が疑われたため、その
病態発生についてさらなる研究が必要であると思われた。
以上の研究により、これまでに報告のなかった、日本に特有の品種特異的消
化器疾患の存在が明らかにされた。ここで得られた多くの知見は、それぞれの
疾患における病態を解明するための糸口を提供し、今後の研究における起点と
なるものと考えられた。また、品種特異的疾患に関する情報は、医学領域にお
ける類似疾患の研究にも大きく貢献することが期待された。
これらの研究成果は、学術上ならびに臨床応用上寄与するところが少なくな
い。よって、審査委員一同は本論文が博士(獣医学)の学位論文として価値あ
るものと認めた。

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