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Inhalation adherence for asthma and COPD improved during the COVID-19 pandemic: a questionnaire survey at a university hospital in Japan

福谷, 衣里子 名古屋大学

2023.12.01

概要

主論文の要旨

Inhalation adherence for asthma and COPD improved
during the COVID-19 pandemic: a questionnaire
survey at a university hospital in Japan
COVID-19流行期における気管支喘息・COPD患者の吸入
アドヒアランスの改善:日本の大学病院のアンケート調査

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

呼吸器内科学分野

(指導:石井 誠
福谷 衣里子

教授)

【緒言】
吸入薬は、気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)において主要な治療薬であり、良
好な治療効果を得るためには、適切な吸入手技と良好なアドヒアランスが重要である。
しかし吸入薬のアドヒアランスは他の慢性疾患と比較しても特に低いと報告されてい
る。吸入治療の成功は患者の主体性や動機が重要であり、医療者と患者との良好なパ
ートナーシップの形成、治療に対する Shared decision making が重要である。
名古屋大学では、薬剤師外来(Pharmacist-managed clinic :PMC)において喘息・COPD
患者に対し吸入方法の説明に加え、病態生理、症状のモニタリング・治療目標の設定
などの包括的カウンセリングを行っており、これまでに PMC 介入による症状や吸入
アドヒアランス、病状の理解の向上を報告してきた。
また、吸入技術の指導、患者教育、リマインダーの使用など、医療者の様々な介入
による吸入アドヒアランスの改善についても様々なグループから報告されているが、
患者自身の環境とその変化が治療意欲にどのように影響するかは明らかにはされてい
ない。
近年の COVID-19 の流行は、人々の行動、生活、心理に大きな影響を与えており、
気管支喘息・COPD 患者の吸入アドヒアランスにも影響した可能性がある。この吸入
アドヒアランスの変化を調査することで治療動機に影響する要因を明らかにできる可
能性があると考え、通院歴のある患者にアンケート調査を実施した。また、アドヒア
ランスの変化の理由、吸入薬に対する考え方、生活習慣、PMC でのカウンセリングの
経験の有無がアドヒアランスの変化にどのように影響したかについても調査した。
【対象及び方法】
2015 年 9 月 1 日から 2020 年 8 月 31 日までに名古屋大学医学部附属病院呼吸器内科
外来を受診した 20 歳以上の気管支喘息または COPD の患者を電子カルテの病名を基
に抽出した。そのうち同時期に PMC の吸入療法カウンセリングを受けた患者につい
ても特定した。診断が異なる患者、死亡した患者、現在吸入器を使用していない患者、
認知症などで回答が困難な患者は除外した。
アンケートは、2021 年 1 月 12 日から 2021 年 3 月 31 日の間に郵送または手渡しで
配布し、2021 年 4 月 30 日までに郵送で回収した。アンケート内容は、通院状況、
COVID-19 流行前・流行後のアドヒアランス、アドヒアランスの変化があった場合は
その理由、生活習慣、症状、など 24 項目とした。症状の評価として喘息患者に Asthma
Control Test(ACT)、COPD 患者には COPD assessment test(CAT)の質問紙票をそれぞれ
使用した。アドヒアランス障壁の評価として Adherence Starts with Knowledge-12(ASK12)の質問紙票を使用した。
【結果】
アンケートの対象者として 716 人を選別した。そのうち 30 人は配布が不可能であ
り、残りの 686 人にアンケートを配布した。433 人が回答し、回答率は 63.1%(喘息:58.6%、

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COPD:70.0%)であった(Figure 1)。回答時において、喘息患者の 52.1%、COPD 患者の
41.9%が当院へ通院していた。COVID-19 流行時の自己申告による吸入薬のアドヒアラ
ンスの平均は、喘息で 87.9%、COPD で 89.3%であった(Table 1)。喘息、COPD ともに
吸 入 ア ド ヒ ア ラ ン ス は COVID-19 流 行 前 と 比 較 し て 有 意 に 改 善 し て い た (Table 2,
Figure 2)。アドヒアランスの改善は、喘息患者、PMC でのカウンセリング経験のない
患者、ベースラインアドヒアランスが低い患者で有意に多く認めた(Table 3)。生活習
慣については外出時間の多い患者ではアドヒアランスが改善する患者を有意に多く認
めたが、睡眠時間や家族との会話時間などについて差異は認めなかった。吸入アドヒ
アランスが改善した理由で最も多いものは「感染に対する不安」であり、2 番目は「咳
が出ると人目が気になるため」であった(Figure 3)。また吸入薬の使用により COVID19 の重症化を防ぐことができると考えた患者は、改善した患者では 55.9%認め、改善
しなかった患者よりも有意に多かった(Figure 4)。
ASK-12 を用いたアドヒアランス障壁の解析では、COVID-19 流行によりアドヒアラ
ンスが増加した患者は、改善しなかった患者と比較して、
「Q1: 時々、薬を服用するの
を忘れることがある」、「Q8: 指示された服薬回数を上回ったり、下回ったりしたこと
がある」の項目にアドヒアランス障壁を持つ患者が有意に多かった(Table 4)。
【考察】
COVID-19 流行期では流行前と比較して喘息・COPD の両方で吸入アドヒアランス
が改善した。この結果は海外における報告とも一致している。本研究では、アンケー
トで患者に吸入薬のアドヒアランスが変化した理由を尋ねた。
「感染に対する不安」や
「咳が出ると人目が気になる」といった理由が多く、患者の思考は治療アドヒアラン
スと強く関連していることが示された。
本研究でアドヒアランスが改善した患者は、吸入薬の使用が COVID-19 感染に対し
て保護的な効果をもたらすと考える傾向にあった。これは本邦でパンデミックの初期
にシクレソニド吸入による治療効果が報告された影響が考えられる。治療の必要性お
よび有効性に対する認識の高まりが、アドヒアランスの改善に影響を与えた可能性が
ある。
服薬アドヒアランスの意思決定や行動変容には、個人の知識やスキルのみならず、
社会的・文化的な要因なども複雑に関与しており、行動経路を概念化するためにさま
ざまな行動モデルが提唱されている。その 1 つである Information-Motivation-Behavioral
(IMB)skills model を用いて、本研究の COVID-19 流行によるアドヒアランスの改善を
考察した(Figure 5)。COVD-19 流行により、感染のリスクや予防措置の重要性など、
多くの健康に関する情報が報道された。それらの情報が治療の必要性や有益性につい
ての認識を促し、個人的な動機としてアドヒアランス行動に影響を与えた可能性があ
る。また、健康の維持がある種の社会的規範として認識された可能性があり、咳など
の症状を軽減することは個人的のみならず社会的動機としても作用した可能性がある。
COVID-19 によるアドヒアランスの改善は、喘息患者、PMC のカウンセリング未経

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験者、ベースのアドヒアランスが悪い患者でより多くみられた。PMC カウンセリング
経験者は、未経験者よりも ASK-12 の合計スコアが有意に低く(経験者:21.1 ± 5.2、
未経験者:22.8 ± 5.7、p = 0.021)、カウンセリングによりアドヒアランスの障壁が減
少していたと考えられた。これらのことから COVID-19 流行に伴う吸入アドヒアラン
スの改善は、適切な動機付けによる改善の余地が残されている患者で起こりやすかっ
たと考えられる。通常診療においてこのような患者に PMC のカウンセリングなどを
通じて治療動機を高めることは効率的な介入として有効な可能性がある。
本研究の限界として、吸入アドヒアランスの評価が患者の自己申告や過去の記憶に
基づいていたための自己選択バイアスや社会適合性バイアス、想起バイアスが考えら
れる。PMC のカウンセリングは主治医の判断と患者の同意に基づいて実施されたため、
経験者と未経験者でとは患者特性が異なる可能性がある。また、本研究は大学病院の
単施設研究であり、一般化が可能かどうかについても考慮を要する。
【結語】
COVID-19 流行期において喘息・COPD 患者の吸入アドヒアランスは改善した。患
者の思考や治療意識はアドヒアランスに強く関連しており、特に、喘息患者や医療者
とのコミュニケーションが少ない患者では、治療動機を高めることで、アドヒアラン
スの効率的な改善につながる可能性がある。

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