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Changes in the proportion of clinical clusters contribute to the phenotypic evolution of Behçet’s disease in Japan

副島 裕太郎 横浜市立大学

2021.09.21

概要

1.序論
ベーチェット病(Behçetʼs disease: ベーチェット病)は発作性の眼・粘膜⽪膚症状に加えてさまざまな症状を引き起こす,原因不明の全⾝性炎症性疾患である(Behçet and Matteson 2010).とくに眼・⾎管・神経・腸管病変は,強⼒な治療が必要になることが多い予後不良な病態であり,これらの発症を事前に予測できれば,ベーチェット病の個別化医療を進める⼤きな⼀歩になる.

過去の研究は年齢・性別や遺伝学的・地域的差異がベーチェット病の表現型に相互に関連していることを⽰唆している.しかし移⺠の流⼊が少なく遺伝学的には⽐較的均⼀な集団であるはずの本邦ベーチェット病患者でも,「腸管型の増加,および眼病変とヒト⽩⾎球抗原(Human leukocyte antigen: HLA)-B*51 陽性率の低下」という経時的な臨床像の変遷があり(Kirino et al. 2016),同様の傾向は韓国でもみられる.

ベーチェット病患者に病型分類についてはいくつか既報がある.有名なトルコからの報告は,「因⼦分析」という⼿法を⽤いて,「⼝腔内潰瘍・陰部潰瘍・結節性紅斑様⽪疹」「ぶどう膜炎」「表在静脈⾎栓症・深部静脈⾎栓症」「⽑嚢炎様⽪疹・関節症状」という 4 亜群に分類している(Tunc et al. 2002).このうち最後の亜群は家族性発症が多いという報告もあり (Karaca et al. 2012),遺伝学的な違いがこの亜群形成に関連していることを⽰唆している.

これらの過去の研究から,ベーチェット病患者を臨床症状や患者背景という⽐較的簡便に得られる情報をもとにして,重症度の異なる臨床的亜群に分類できる可能性がある.ただ Tunc らの研究では解析した患者数が少ないため神経・腸管病変(それぞれ 3%・1%)については解析されておらず,疫学の違いがある本邦ベーチェット病患者で,海外の亜群分類をそのまま臨床応⽤することは難しいと考える.そのため本邦の 2 つのベーチェット病患者レジストリにおいて,クラスター分析という⼿法を⽤いた臨床的亜群分類を試みた.

2.実験材料と⽅法
Discovery cohort として横浜市⽴⼤学とその関連施設(横浜市⽴⼤学レジストリ)のベーチェット病患者 657 例を対象に,ベーチェット病の臨床症状(⼝内炎・⽪膚病変・眼病変・陰部潰瘍・関節炎・腸管病変・⾎管病変・神経病変)を変数として,ユークリッド平⽅距離を利⽤した Ward 法による階層的クラスター分析をおこなった.次に Validation cohort として厚⽣労働省の特定疾患データベースにおける新規診断ベーチェット病患者6754 例で同様の解析をおこなった.最後に横浜市⽴⼤学レジストリにおいて,ベーチェット病患者における亜群の構成割合をベーチェット病診断年代ごとに⽐較した.

3.結果
横浜市⽴⼤学レジストリではクラスター分析の結果,「⽪膚粘膜」「⽪膚粘膜+関節」「消化管」「眼病変がメインでほかの症状が少ない」「神経」という 5 つの亜群に分類された.また同様の亜群分類パターンは,全国規模のレジストリである厚⽣労働省のデータベースでも再現された.

また,「消化管」「眼病変メインでほかの症状が少ない」という亜群は経時的に増加しており,後者に関しては昨今 TNF 阻害薬の早期導⼊が眼病変に対しておこなわれている影響と考えた.また「⽪膚粘膜」「⽪膚粘膜+関節」「神経」といういわゆる典型的なベーチェット病といえる亜群は経時的に減少していた.

4.考察
本研究はベーチェット病をいくつかの亜群に分類できるという考えを強く⽀持するものである.とくに我々は腸管病変をメインとする亜群を”intestinal variant”として,HLA-B*51陽性率の低さからその遺伝学的背景の違いが⽰唆されることも合わせて,典型的なベーチェット病の臨床像を⽰すほかの亜群と区別して捉える必要性があると考える.この "intestinal variant”は免疫抑制薬や⼿術といった集約的な治療が必要になることも多く,経時的にベーチェット病全体での割合も増加しているため,我々の⽇常診療で治療に悩むことも多い.しかしこの亜群に対する国際的な診療・研究のまとまったデータは少ない.我々としては,本邦をはじめとする東アジアから,この分野の診断・治療についての知⾒をより発信していく必要があると考える.

また治療と表現型の関連(IFX 早期投与がほかのベーチェット病症状を抑制している可能性)も,興味深い事項である.必要な患者に先制的な治療や検査をおこなうことで,特殊型に代表される重篤臓器病変の発症を抑制することができる,いわゆる”precision medicine”につながるものであると考える.

ベーチェット病における”precision medicine”実践のためには,⻑期経過を含めた詳細な臨床情報の集積し,同時にその患者検体を⽤いて遺伝素因・バイオマーカーなどについても検索し,ベーチェット病のいわゆる「予後不良因⼦」を⾒つけ出すことが必要になってくる.この⽬的を達成するため,現在我々は本邦における全国規模の多施設前向きベーチェット病レジストリ構築を進めている.

参考文献

Behçet, H. and Matteson, E.L., (2010), On relapsing, aphthous ulcers of the mouth, eye and genitalia caused by a virus. 1937, Clin Exp Rheumatol, 28, S2-5.

Karaca, M., Hatemi, G., Sut, N. and Yazici, H., (2012), The papulopustular lesion/arthritis cluster of Behçet's syndrome also clusters in families, Rheumatology (Oxford), 51, 1053-1060.

Kirino, Y., Ideguchi, H., Takeno, M., Suda, A., Higashitani, K., Kunishita, Y., Takase- Minegishi, K., Tamura, M., Watanabe, T., Asami, Y., Uehara, T., Yoshimi, R., Yamazaki, T., Sekiguchi, A., Ihata, A., Ohno, S., Ueda, A., Igarashi, T., Nagaoka, S., Ishigatsubo, Y. and Nakajima, H., (2016), Continuous evolution of clinical phenotype in 578 Japanese patients with Behçet's disease: a retrospective observational study, Arthritis Res Ther, 18, 217.

Tunc, R., Keyman, E., Melikoglu, M., Fresko, I. and Yazici, H., (2002), Target organ associations in Turkish patients with Behçet's disease: a cross sectional study by exploratory factor analysis, J Rheumatol, 29, 2393-2396.

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