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歯周病は耐糖能異常非依存的に非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の憎悪因子となりうる

田利 美沙子 広島大学

2021.03.23

概要

学 位 論 文





歯周病は耐糖能異常非依存的に非アルコール性脂肪
肝疾患(NAFLD)の増悪因子となりうる






田利 美沙子
広島大学大学院医歯薬保健学研究科
博士課程 医歯薬学専攻
修了年度 2020 年



主指導教員:河口 浩之 教授
(広島大学病院 歯科医学教育学)



謝辞

本研究につきまして、ご指導、ご高覧を賜りました広島大学病院歯科医学教育学
河口 浩之 教授に対し謹んで感謝の意を表します。また、研究の遂行ならびに本論
文作成においてご指導、ご鞭撻をいただきました本学大学院医系科学研究科歯随生物
学研究室 柴 秀樹教授、本学大学院医系科学研究科細菌学研究室 小松澤 均 教
授に深厚なる謝辞を表します。さらに、本研究の遂行、本論文の作成にあたり数多く
のご指導ならびにご高覧を賜りました本学大学院医系科学研究科歯周病態学研究室
加治屋 幹人 助教に深謝致します。加えて、数多くのご助言とご協力を頂きました
本学大学院医系科学研究科歯周病態学研究室の皆様に深くお礼申し上げます。
最後に、勉学、研究の機会を与え常日頃より私の支えとなってくれた両親の晶、倫
子に対して心から感謝致します。



2021 年 1 月
広島大学医歯薬保健学研究科 医歯薬学専攻
歯周病態学研究室
田利 美沙子





1

目次

第 1 章 緒論…………………………………………………………………………………5

第 2 章 肥満、耐糖能異常を併発しない脂肪肝モデルマウスの樹立…………………8
第 1 節 概要………………………………………………………………………………8
第 2 節 材料と方法………………………………………………………………………8
第 1 項 実験動物………………………………………………………………………8
第 2 項 飼料……………………………………………………………………………8
第 3 項 体重測定………………………………………………………………………9
第 4 項 経腹腔ブドウ糖負荷試験……………………………………………………9
第 5 項 経腹腔インスリン抵抗性試験………………………………………………9
第 6 項 組織標本作成法………………………………………………………………9
第 7 項 Hematoxylin-eosin(HE)染色法……………………………………………10
第 8 項 統計解析………………………………………………………………………10
第 3 節 結果………………………………………………………………………………10
第 1 項 高脂肪食、高炭水化物食摂取による体重の変化…………………………10
第 2 項 高脂肪食、高炭水化物摂取による耐糖能、インスリン感受性の変化…10
第 3 項 高脂肪食、高炭水化物摂取による肝臓の肉眼的、組織学的変化………11

第 4 節 考察………………………………………………………………………………11


2

第 3 章 高炭水化物摂取が肝臓の脂肪変性を惹起するポイントと歯周炎が高炭水化物
摂取による肝臓の脂肪変性に及ぼす影響 ……………………………………14
第 1 節 概要………………………………………………………………………………14
第 2 節 材料と方法………………………………………………………………………14
第 1 項 マウス歯周炎モデル…………………………………………………………14
第 2 項 体重測定、経腹腔ブドウ糖負荷試験………………………………………15
第 3 項 組織学的解析…………………………………………………………………15
第 4 項 遺伝子発現解析法……………………………………………………………15
第 5 項 統計解析………………………………………………………………………16
第 3 節 結果………………………………………………………………………………16
第 1 項 絹糸結紮による歯周炎が体重、耐糖能に与えた影響……………………16
第 2 項 肝臓の肉眼所見、組織学的所見……………………………………………16
第 3 項 脂質合成酵素、TGFβ、炎症性サイトカインの発現 ……………………17
第 4 節 考察……………………………………………………………………………17









3

第 4 章 歯周炎が高炭水化物摂取による肝臓の脂肪変性に及ぼす影響………………18
第 1 節 概要………………………………………………………………………………18
第 2 節 材料と方法………………………………………………………………………18
第 1 項 マウス歯周炎モデル…………………………………………………………18
第 2 項 体重測定、経腹腔ブドウ糖負荷試験、経腹腔インスリン抵抗性試験…18
第 3 項 組織学的解析…………………………………………………………………19
第 4 項 遺伝子発現解析法……………………………………………………………19
第 5 項 マイクロ CT 解析法 …………………………………………………………19
第 6 項 統計解析 ………………………………………………………………………19
第 3 節 結果 ………………………………………………………………………………19
第 1 項 絹糸結紮による歯周炎が体重、耐糖能に与えた影響 ……………………19
第 2 項 肝臓の肉眼所見、組織学的所見 ……………………………………………20
第 3 項 脂質合成酵素、TGFβ、炎症性サイトカインの発現 ……………………21
第 4 項 歯槽骨吸収量 …………………………………………………………………21
第 4 節 考察 ………………………………………………………………………………21

第 5 章 総括 …………………………………………………………………………………24

第 6 章 参考文献 ……………………………………………………………………………26




4

第 1 章 緒論
歯周炎は、口腔内細菌感染の結果生じる炎症性組織破壊疾患である[1][2]。さらに、
歯周炎は口腔局所に限らず、全身に対する細菌あるいは炎症性サイトカインの供給源
となり、遠隔臓器に影響を及ぼすことが報告されており、心血管疾患、2 型糖尿病、
早産、リウマチなどの全身性疾患や健康に影響を及ぼすことが明らかになっている
[3][4][5][6][7][8]。
その中でも 2012 年に歯周炎が非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD: non-alcoholic
fatty liver disease)の増悪因子であることが報告されて以来、その分子メカニズムを明
らかにするためのマウスを用いた研究が行われてきた[9]。NAFLD は常習的な飲酒歴
とは無関係に肝臓に脂質の沈着をきたす疾患で、成人の約 30%と高い有病率を示し、
その一部は肝硬変、肝癌まで進行して致死的な変化を引き起こす[10]。NAFLD は肥
満、糖尿病など他のメタボリックシンドロームと相関関係にあることが報告されてお
り[11][12]、NAFLD 患者の約 2 割が糖尿病、肥満を併発することが報告されている
[13][14]。これまでの基礎研究では NAFLD の軽症段階である脂肪肝を発症させるた
めに高脂肪食をマウスに与え、実験的歯周炎モデルを組み合わせることによって歯周
炎の NAFLD に対する影響を調べてきた[9][15][16][17]。しかし、この高脂肪食は脂
肪肝のみならず糖尿病や肥満を併発すること、さらに歯周炎は糖尿病の増悪因子であ
るため[18]、高脂肪食と歯周炎モデルの組み合わせから得られる NAFLD の重症化
が、歯周炎が肝臓に直接影響を与えた結果であるか、あるいは歯周炎による糖尿病、
肥満増悪の条件下でのみ起こりうるのかを判別することが困難だった。歯周炎による
NAFLD 進展のメカニズムを明らかにすることは、NAFLD の予防、治療方法や予後
を考える上で非常に重要であると考えられる。歯周炎が肥満、耐糖能異常を介さずに

5

NAFLD を進展させるか明らかにするには、肥満、耐糖能異常を併発しない脂肪肝モ
デルを樹立することが必要である。また、前述の通り NAFLD 患者のうち肥満、糖尿
病を併発するものは約 2 割であることを踏まえても、肥満、耐糖能異常を併発しない
脂肪肝モデルの樹立は、臨床に多く存在する NAFLD の予後に歯周炎がどの程度寄与
するかを検討するうえで重要であると考えられる。高脂肪食は飽和脂肪酸などを大量
に供給し、肝臓を含む様々な組織に有害な脂質蓄積を促すことで、脂肪肝や糖尿病を
生じる。一方、食事から摂取された過剰な果糖やブドウ糖が肝臓に達すると、脂質合
成経路を活性化し、脂肪肝を発症させることが知られているが[19]、カロリーは脂質
と比較して約半分である。本研究では、マウスに高炭水化物食を与えることで、糖尿
病、肥満を併発しない脂肪肝モデルマウスを樹立し、歯周炎が肥満、糖尿病を介さず
に NAFLD に及ぼす影響を検証した。
これまで歯周炎が NAFLD に及ぼす影響を調べる歯周炎モデルとしては、

Porphyromonas gingivalis(以下 P.g.)の歯性感染や静脈内投与、 Aggregatibacter
actinomycetemcomitans(以下 A.a.)の口腔内塗布などの方法が用いられてきた
[9][20][21]。P.g.は最も代表的な歯周病原細菌であり[22][23]、A.a は侵襲性歯周炎と
相関が高い細菌として知られているが[24]、SPF マウスの口腔内に P.g.を感染させる
と骨吸収をきたすものの無菌マウスに P.g.を感染させても骨吸収はみられないことか
ら[25]、歯周炎の発症には口腔常在菌の共生バランスの破綻が大きく関与しているこ
とが指摘されている[26][27]。さらに、歯周病原細菌の口腔内への感染を用いた歯周炎
モデルでは SPF 環境下においても骨吸収を生じるまで 2 か月以上かかり、骨吸収の程
度も軽微であるという報告がある[28]。以上をふまえて、本研究では、より広い範囲
の口腔内常在菌による歯周組織破壊の影響を調べるため、絹糸結紮による歯周炎モデ

6

ルを用いることとした。絹糸結紮による歯周炎モデルは、マウスの臼歯に絹糸を結紮
することで 1 週間程度の短期間で顕著な歯槽骨吸収を生じる歯周炎モデルである
[29]。また、抗菌薬の事前投与により骨吸収が抑制されることや、A.a と相同性が高い

N1060 が歯槽骨吸収の原因であることが報告されていることから、口腔内細菌依存的
なモデルと考えられている[30][31]。
本研究では、高炭水化物食摂取による脂肪肝モデルを樹立し、絹糸結紮による歯周
炎モデルを組み合わせることによって、口腔内細菌感染とそれによる歯周組織破壊が
肥満、耐糖能異常非依存的に NAFLD の増悪における影響を検討した。














7

第 2 章 肥満、耐糖能異常を併発しない脂肪肝モデルマウスの樹立

第 1 節 概要
マウスに高脂肪食、高炭水化物食を 6 週間摂取させ、普通食群と比較して、肥満、
耐糖能異常の発症、肝臓の脂肪変性の評価を行った。

第 2 節 材料と方法
第 1 項 実験動物
実験には、C57BL/6 と比較して耐糖能異常をきたしにくいと報告されている
BALB/cAJcl マウス(雄、4-6 週齢、日本クレア、東京)12 匹を用いた[32]。マウス
を無作為に 3 群に分け、それぞれ普通食、高脂肪食、高炭水化物食を自由摂取させ
た。実験動物は広島大学自然科学研究支援開発センター生命科学研究支援分野・ライ
フサイエンス教育研究支援部動物実験施設の実験指針に基づいて行った。マウスは
SPF 環境下で飼育した。

第 2 項 飼料
マウスに与える飼料は、普通食としてオリエンタル酵母工業の MF、高脂肪食とし
て日本クレアの High Fat Diet32 を用い、高炭水化物食はオリエンタル酵母に依頼し
て作成した。High Fat Diet32 は 507.6kcal/100g であり、飼料 1kg 中炭水化物を
274.28g、脂質を 358.8g 含む。高炭水化物食は動脈硬化の研究などで用いられている
飼料[33]を参考に、450kcal/100g、飼料 1kg 中炭水化物 506.45g、脂質 245g となる

8

ように作成し、形状は普通食、高脂肪食と同様にペレット状とした。飼料の組成は表
1 に示す。

第 3 項 体重測定
1 週ごとにマウスの体重測定を行った。

第 4 項 経腹腔ブドウ糖負荷試験
マウスを 16 時間絶食後、10%グルコースを 2g/kg 体重の負荷量で腹腔内に投与し
た。非麻酔下で尾静脈より 0、15、30、60、90、120 分後に採血し血糖値を測定し
た。10%グルコースは D-グルコース 1mg あたり 10ml の生理食塩水に溶解して調整
した。

第 5 項 経腹腔インスリン抵抗性試験
マウスを 6 時間絶食後、1 U/kg 体重の負荷量で速効型インスリン溶液を腹腔内に投
与した。非麻酔下で尾静脈より 0、15、30、60、90 分、120 分後に採血し血糖値を測
定した。 インスリン溶液はヒューマリン R(日本イーライリリー株式会社)を生理食
塩水に溶解して調整した。

第 6 項 組織学的解析
マウスを頸椎脱臼法により屠殺後、肝臓を摘出し、外側左葉を回収後に 4%パラホ
ルムアルデヒドで浸漬固定した。固定した組織を 75%エタノール(和光)、100%エ
タノール(和光)の順で脱水し、キシレン(和光)にて脱脂した後にテッシューテッ

9

ク・パラフィンワックスⅡ60(サクラ)に包埋し、作成したブロックをミクロトーム
(TU-213、大和光機工業)で厚さ 5µm に薄切してスライドガラス(松浪硝子工業)
上で伸展し、乾燥、接着した。

第 7 項 Hematoxylin-eosin(HE)染色法
パラフィン切片をキシレンで脱パラフィン後、ヘマトキシリン(Merck、New
jersey)、エオジン(ナカライテスク)を用いて HE 染色し、Mount Quick(大道産
業)で封入した。標本は光学顕微鏡(ECLIPSE E600W;ニコン)で観察した。

第 8 項 統計解析
Student の t 検定を用いて 2 群間の差の統計解析を行った。

第 3 節 結果
第 1 項 高脂肪食、高炭水化物食摂取による体重の変化
実験開始 6 週後、高脂肪食群の体重は、普通食群と比較して有意な(P>0.05)高値
を示した (図 1A)。一方、高炭水化物食群の体重は、実験開始から 6 週まで普通食群
と比較して有意な差を認めなかった(図 2A)。

第 2 項 高脂肪食、高炭水化物摂取による耐糖能、インスリン感受性の変化
実験開始 6 週後、16 時間絶食とし、経腹腔グルコース負荷試験を行った。 また、6
時間絶食後に経腹腔インスリン負荷試験を施行した。
高脂肪食群における経腹腔グルコース負荷試験では、16 時間絶食時、 負荷後 15 分、

10

30 分、60 分、120 分のすべてで普通食群と比較して血糖値の有意(P>0.05)な上昇
を認めた(図 1B)。一方、高炭水化物食群における経腹腔グルコース負荷試験におい
ては、16 時間絶食時、負荷後 15 分、30 分、60 分、90 分、120 分のいずれの時点に
おいても、普通食群と比較して有意な血糖値上昇は認めなかった(図 2B)。経腹腔イ
ンスリン負荷試験では、高脂肪食群、高炭水化物食群のいずれにおいても、すべての
測定時点で普通食群との有意な血糖値の差を認めなかった(図 1C、図 2C)。

第 3 項 高脂肪食、高炭水化物摂取による肝臓の肉眼的、組織学的変化
高脂肪食、高炭水化物食摂取による肝臓の脂肪変性の評価を行うため、肝臓を肉眼的、
組織学的に観察した。実験開始 6 週後、高脂肪食群の肝臓は普通食群と比較して肉眼所
見で白色化が認められた。また、HE 染色像にて大滴性の脂肪変性が観察された。高炭
水化物食群においても、高脂肪食群と同様に、普通食群と比較して肉眼所見での白色化、
大滴性の脂肪変性を認めた(図 3A、B)。

第 4 節 考察
体重測定の結果、高脂肪食群では実験開始 6 週後に普通食群と比較して体重に有意
な差を認めたが、高炭水化物食群では普通食群と比較して有意な体重の差を認めなかっ
た。また、経腹腔ブドウ糖負荷試験の結果から、高脂肪食群では血糖値が普通食群と比
較して有意に上昇しており耐糖能異常が惹起されている一方、高炭水化物食群では血糖
値は普通食群と比較して有意な上昇を認めず、耐糖能異常未発症であることが示された。
経腹腔インスリン抵抗性試験の結果から、耐糖能異常を認める高脂肪食群においても、
耐糖能異常未発症の高炭水化物食群と同様インスリン抵抗性は未発症であることが示

11

された。
以上の結果から示されるように、高脂肪食群、高炭水化物食群では体重、耐糖能に
与える影響には差があるものの、肝臓の肉眼所見、組織学的所見からは、いずれの飼
料を与えた場合も肉眼での肝臓の白色化、大滴性の脂肪変性が観察され、肝臓は脂肪
変性をきたしていることが示された。このことから、今回作成した高炭水化物食を
BALB/cAJcl に 6 週間与えることで肥満、耐糖能異常を来さない脂肪肝モデルマウス
が樹立できたと言える。実験開始 6 週でマウスを屠殺したため、高炭水化物食を摂取
させた場合に肥満、耐糖能異常を発症しない最長期間は不明であるが、今後さらに実
験を行うことによって肥満、耐糖能異常を併発しない脂肪肝モデルマウスとしてより
長期に飼育できる可能性がある。これまで報告されてきた NAFLD モデルマウスで
も、肥満、耐糖能異常を併発しないモデルは存在しており、PtenKO マウスやメチオ
ニン・コリン欠乏食を摂取させて NAFLD を誘導する系が挙げられる[34][35]。しか
し、PtenKO マウスは遺伝子改変動物モデルであること、メチオニン・コリン欠乏食
では肝臓の中性脂肪の排出に関与するアミノ酸を欠乏させることにより肝臓の脂肪蓄
積を誘導する一方で筋肉量の減少など全身的な影響が強く、重篤な体重減少を示すこ
とから[36]、いずれも臨床における NAFLD の病態とは乖離した表現型であると考え
られる。今回樹立した高炭水化物摂取による脂肪肝モデルは、これらのモデルと比較
して臨床的に多く存在する肥満、糖尿病未発症の脂肪肝患者により近い病態であると
考えられる。
高炭水化物食群で肥満、耐糖能以上を来さないにも関わらず肝臓の脂肪変性が見られ
た理由として、肝臓が糖代謝において中心的な役割を担っていること[37]、過剰な糖の
摂取が肝臓の脂質合成経路を活性化する[38]ことが原因として考えられる。炭水化物摂

12

取と脂肪摂取による耐糖能異常への影響については、糖尿病発症への影響はないとする
報告があること[39]、脂肪酸の種類によっても肥満、耐糖能異常発症に違いがあること
から[40]、飼料の詳しい組成や総カロリーによって大きく差が出るものと考えられる。























13

第 3 章 高炭水化物摂取が肝臓の脂肪変性を惹起するポイントと歯周炎が高炭水化物
食食食食食摂取による肝臓の脂肪変性に及ぼす影響

第 1 節 概要
前章で高炭水化物摂取 6 週間で肥満、耐糖能異常を来さない脂肪肝モデルマウスが
樹立されたことをふまえて、より短期(2 週間、4 週間)に高炭水化物摂取した場合で
も肝臓の脂肪変性が誘発されるかを検討した。また、高炭水化物摂取と同時に絹糸結紮
による歯周炎を惹起することによって、高炭水化物食摂取 2 週、4 週で肥満、耐糖能異
常非依存的に肝臓の脂肪変性が進行するかについても検討した。歯周炎の惹起により肥
満、耐糖能異常を発症する可能性があるため、体重測定、経腹腔ブドウ糖負荷試験を行
い、歯周炎が肝臓の脂肪化、炎症性変化に与える影響を組織学的に評価した。また、肝
臓の脂質合成酵素である Acc1、グルコキナーゼ、炎症性サイトカインである IL-1β、
TNF-α、線維化の指標である TGFβ の mRNA 発現を real-time PCR 法で解析した。

第 2 節 材料と方法
第 1 項 マウス歯周炎モデル
口腔内常在細菌依存的に骨吸収を生じる歯周炎モデルとして、2013 年に Abe らによ
ってマウスの歯に絹糸を結紮する方法が確立されている[29]。
本研究では、この絹糸
結紮によるマウス歯周炎モデルを使用した。まず、マウスに 3 種混合麻酔薬を腹腔内投
与し全身麻酔を行った。3 種混合麻酔薬はメデトミジン(ドミトール)1.875ml、ミダ
ゾラム(ドルミカム)2ml、ブトルファノール(ベトルファール)2.5ml を混合し生理
食塩水で 50ml にメスアップした溶液を体重 1g あたり 10µl 投与した。麻酔奏功後、マ

14

ウスを開口させ、実体顕微鏡(SZX10、オリンパス)下で上顎両側第二臼歯に 5-0 絹糸
(白川)を結紮し、口蓋側に結び目を設けた。

第 2 項 体重測定、経腹腔ブドウ糖負荷試験
体重測定、経腹腔ブドウ糖負荷試験は第 1 章第 2 節第 3 項、第 4 項、第 5 項と同様
の方法で行った。

第 3 項 組織学的解析
組織標本作製、HE 染色は第 1 章第 2 節第 6 項、第 7 項と同様の方法で行った。

第 4 項 遺伝子発現解析法
マウス肝臓の組織をRNAiso plus(タカラバイオ)を用いて全RNAを抽出した。 ...

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