Expression of hemoglobin beta is associated with poor prognosis and aggressive phenotypes in clear cell renal cell carcinoma
概要
背景・目的:
ヘモグロビンβ(hemoglobin β, HBB)はヘモグロビンを構成するサブユニットとして知られている。近年、腫瘍細胞におけるHBBの発現と癌悪性度との関連が報告されている。しかし、その役割は十分に解明されていない。淡明細胞型腎細胞癌(clear cell renal cell carcinoma, ccRCC)におけるHBB発現が予後、癌悪性度に及ぼす影響について検討した。
方法:
2000年から2010年の間に山形大学医学部附属病院で手術を行った非転移性 ccRCC 203症例の免疫組織化学染色を行い、HBB の発現と臨床病理学的因子との関連を検討した。腎癌細胞株(A498, Caki-1, 769-P, 786-O)のHBB 発現を確認し、siRNA を用いたノックダウン実験で機能解析を行った。
結果:
非転移性ccRCC において、HBB 陽性症例は陰性症例と比べ、無再発生存期間、癌特異的生存期間、全生存期間のいずれも有意に不良であった。4 種の腎癌細胞株(A498, Caki-1, 769-P, 786-O)すべてが細胞内にHBB を発現していた。siRNA による HBB ノックダウンにより、A498 細胞内の活性酸素種(ROS)が増加し、増殖能と浸潤能の低下を認めた。 A498 細胞における HBB の発現は過酸化水素(H2O2)投与による酸化ストレスにより上昇した。
結論:
本研究により、HBB を高発現している ccRCC 症例は予後不良であることが明らかになった。その機序として、HBB が活性酸素種を除去することにより ccRCC の増殖能と浸潤能を亢進させると考えられた。