書き出し
低カリウムブルーベリー果実の生産および樹勢回復に関する研究
概要
カリウムなどの摂取制限が課せられている腎臓病患者のため,可食部中のカリウム含量が少ない野菜の生産が行われているが,果樹は露地で栽培され土耕栽培が一般的であることや同じ樹を再利用して毎年の生産を続けることから,果樹を対象に低カリウム果実生産を目的とした報告は見当たらない.そこで,本論文では果樹であるブルーベリーを対象に低カリウム果実の生産の可能性や連年で低カリウム果実を生産するための樹勢回復について検討した.
ポットを用いた養液栽培の有効性が示され,果実中のカリウム含量は開花期からの 10 週間のカリウム制限処理により 53%減少すること,また,培地量の制限,灌水施肥,ウレタンスポンジ培地の使用および培地の水洗処理により,約 5 週間の短期間のカリウム制限処理で果実中のカリウム含量は 48%減少することを明らかにした.一方,カリウム制限処理から低カリウム果実収穫後のカリウム施用までにおけるカリウムの減少および蓄積経過や樹勢低下後の低温処理による樹勢回復の実験結果から,複数年での低カリウムブルーベリー果実生産の可能性が示された.