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大学・研究所にある論文を検索できる 「ジネンジョ(Dioscorea japonica Thunb.)‘稲武2号’の担根体の収量および品質に影響を及ぼす養分吸収特性と施肥法に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ジネンジョ(Dioscorea japonica Thunb.)‘稲武2号’の担根体の収量および品質に影響を及ぼす養分吸収特性と施肥法に関する研究

中村, 嘉孝 ナカムラ, ヨシタカ 東京農工大学

2021.12.13

概要

ジネンジョ(Dioscorea japonica Thunb.)はヤマノイモ科ヤマノイモ属に属し,1m程度に伸長生長する地下部の担根体が芋(新生芋)として収穫される.この新生芋は地中深くまで伸長するため,収穫作業の効率化や土壌病害の防除が栽培時の課題であったが,未耕地の土壌を詰めたパイプ状の栽培容器を作土に埋設し,そこに担根体を誘導するパイプ栽培が1970年代に開発されたことによって課題が解決し営利栽培が広まった.しかし,栽培容器に新生芋を誘導するための催芽処理の温度条件や,栽培容器に充填される土壌(充填土壌)および栽培容器が埋設される作土からの養分吸収特性や,施肥量と新生芋の品質との関係は明らかでない.ジネンジョの持続的な安定生産のためには,これらの課題を解明して,新たな栽培方法を確立する必要がある.

 そこで本研究では,主産地である愛知県の主要品種‘稲武2号’を用いて,窒素(N)およびカリウム(K)の施肥条件が,養分吸収特性に基づいて新生芋の収量と品質にどのように影響を及ぼすかを栽培容器の外部となる作土と充填土壌に分けてそれぞれ解明した.さらに,明らかになった養分吸収特性に基づいて持続的な栽培に向けた効率的な施肥法を考察し実証した.

 種芋を養成するためのむかご(葉腋にできる担根体)とパイプ栽培の種苗とする種芋の萌芽の不揃いは作業効率を悪化させ,栽培容器への新生芋の誘導にも悪影響を及ぼす.そこで第2章では,温度条件がそれらの萌芽と初期生育に及ぼす影響について15~35℃の温度域で試験した.その結果,むかごでは30℃区で最も早く萌芽し,萌芽率も高く,芽および根が最も伸長した.一方,種芋の萌芽率および根の伸長は25℃区および30℃区でともに高かった.これらの結果から,むかごは約30℃,種芋は25~30℃の温度域で萌芽と初期生育を促進できることが明らかとなった.以降の催芽処理はこれらの温度条件で行った.第3章では,充填土壌への施肥量の違いが新生芋に及ぼす影響を明らかにした.充填土壌への施肥試験を実施したところ,個体当たり1gのN,リン(P)またはKを施肥した区の新生芋重は,慣行の無施肥区と同程度であった.さらに個体当たり3gのNを施肥した区では奇形芋が発生し新生芋重は出荷規格を満たさなかった.この結果より充填土壌に無機態N含量が多いと新生芋の生育が劣り奇形芋が発生することが示唆された.外観品質に優れた新生芋を安定生産するためには,充填土壌に窒素を施肥しないことが重要であると考えられた.

 第4章および第5章では,作土への施肥量が新生芋の養分吸収量と収量に及ぼす影響を明らかにするため,NまたはKの施肥量を変えて栽培試験を行い,各養分の植物体への蓄積および分配特性を明らかにした.その結果,茎葉のN蓄積量は7月から8月にかけて増加し9月以降は減少したが,新生芋のN蓄積量は11月まで漸増し続けたことから,新生芋における9月以降のN蓄積量の増加は茎葉からの転流によるものと考えられた.これらの結果より,新生芋の生育には,茎葉のN蓄積量が最大値に達する7月から8月までのN供給が重要であると示唆された.一方,本試験の作土は産地の圃場と同程度のNおよびK含有量であったが,NまたはKを無施肥とした区においても施肥区と同程度の収量が得られた.この結果は産地圃場に残存肥料が多いことを示唆している.ジネンジョのパイプ栽培では作土に過剰に施肥しても地上部の茎葉やむかごへの分配蓄積による緩衝効果によって充填土壌中で生育する新生芋への障害が回避されていると考えられた.しかし,この特性が連作圃場での過剰な施肥につながっている可能性があるため,持続的に安定生産するためには圃場での施肥法の改善が必要であると考えられた.

 第6章では,施肥法の改善策として全量基肥施肥法を試験した.前章までの知見に基づき,Nは茎葉の吸収特性に合わせて溶出する被覆尿素肥料40日リニア溶出型とし,慣行よりも施肥量を50%削減(10g・m-2)した.KおよびPは吸収量に応じた施肥量とした.いずれも作土に全量を基肥として施肥した.その結果,慣行施肥区と同程度の新生芋の収量が試験圃場で得られた.さらに,同様の結果が生産者の圃場でも実証された.

 前章までの結果から作土への過剰施肥は新生芋の品質悪化に直結しないことが示唆されている.この結果を踏まえて第7章では,新生芋の品質を左右する褐変と施肥量の関係を調査した.その結果,新生芋の褐変に施肥量は影響せず,表皮部のポリフェノールの酸化が関与していると考えられた.

 以上の結果から,ジネンジョのパイプ栽培において,種芋を適温で催芽処理し,Nの少ない土壌を充填した栽培容器に新生芋を誘導し,作土にNを茎葉の吸収特性に合わせた肥効調節型肥料で,吸収量に応じたKとPとともに全量基肥施用する栽培法を提案した.この方法は,新生芋の収量と品質を維持しつつ,過剰な施肥による環境負荷の軽減と肥料資源の消費抑制につながり,持続的な生産活動を通じた産地の発展に寄与すると考えられる.

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