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書き出し

Synthesis of Polar 1,2-Dimetalloalkenes and Their Application to Organic Synthesis

Takahashi, Fumiya 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24438

2023.03.23

概要

学位論文の要約
題目

Synthesis of Polar 1,2-Dimetalloalkenes and Their Application to Organic Synthesis
(極性 1,2-ジメタロアルケンの合成およびその有機合成への利用)

氏名

高橋 郁也

序論
有機リチウムや有機マグネシウムなどに代表される極性有機金属化合物は、一世紀以上
にわたって有機合成における中心的な役割を担ってきた。これらの有機金属種は、大きく
分極した炭素−金属結合に由来する高い反応性を有するため、量論反応から触媒反応に至る
まで様々な変換反応に利用される。現代の有機合成においては、複雑な分子を単純な原料
から短工程で合成することが強く求められる。このような観点から、分子内に二つ以上の
炭素−金属結合を有する極性有機金属化合物は、複数の結合形成反応を一挙に進行させられ
る有用な合成中間体とみなせる。とりわけ、隣接位に二つの大きく分極した炭素−金属結合
を有する極性 1,2-ジメタロアルケン類は、種々の求電子剤との反応により、他の手法では合
成困難な多置換アルケンを与える、合成化学的有用性の高い分子群になると期待される。
しかしながら、その安定性の低さゆえに、極性 1,2-ジメタロアルケン類の有機合成における
利用は極めて限定的であり、またその調製法に関しても実用性の観点から発展の余地が残
されていた。
そのような背景のもと申請者は、単体アルカリ金属によるアルキンの還元反応に着目し、
1,2-ジメタロアルケン類の簡便な合成手法の開発に取り組んだ。検討の結果、「アルカリ金
属による還元を受けない一方、カルボアニオンとは速やかに反応する」という相反する二
つの特徴を有する耐還元性求電子剤として、アルコキシホウ素類を還元系中に共存させる
ことで、アルキンの還元的 1,2-ジボリル化が進行することを見いだした。さらに申請者は、
一般的には炭素求核剤として用いられる有機マグネシウムや有機アルミニウムを、耐還元
性求電子剤として利用することを着想し、金属ナトリウムによるアルキンの還元的 1,2-ジマ
グネシウム化およびジアルミニウム化も実現した。また、生じた極性 1,2-ジメタロアルケン
類の構造を単結晶X線構造解析により明らかにし、様々な求電子剤との反応性を調査する
ことで、極性 1,2-ジメタロアルケン類の合成中間体としての汎用性の高さを示した。

1章 アルキンの還元的 anti-ジマグネシウム化およびジアルミニウム化による
trans-1,2-ジメタロアルケン類の合成
序論で述べた通り、申請者は単体アルカリ金属によるアルキンの還元において、アルコ
キシホウ素類が耐還元性求電子剤として機能することを明らかにした。申請者は次なる展
開として、有機マグネシウムや有機アルミニウムを耐還元性求電子剤として利用すること
を着想した。検討の結果、有機マグネシウムまたは有機アルミニウムハロゲン化物共存下、
アルキンに対して単体ナトリウムを作用させることで、対応する trans-1,2-ジマグネシオア
ルケンおよび trans-1,2-ジアルミノアルケンを簡便かつ高立体選択的に合成できることを見
いだした。これらの 1,2-ジメタロアルケンの構造は、単結晶X線構造解析により明らかにさ
れた。高い求核性を有する 1,2-ジマグネシオアルケンは、様々な求電子剤と反応し、anti-1,2二官能基化されたアルケン類を高立体選択的に与え、従来法では合成困難な多置換アルケ
ン類の有用な合成前駆体として機能した。また申請者の想定に反し、1,2-ジアルミノアルケ
ンとパラホルムアルデヒドを反応させた場合、アルキン由来のアリール基の脱芳香族化を
伴う二官能基化が進行し、対応する脱芳香族化 1,4-ジオールが高いジアステレオ選択性で生
成した。この特異な脱芳香族化反応の反応機構を明らかにすべく、申請者は詳細な DFT 計
算を行い、1,2-ジマグネシオアルケンと 1,2-ジアルミノアルケンのアルデヒドに対する反応
性の違いを調査した。

2章 アルキンの還元的 anti-1,2-ジメタル化を経るテトラアリールエチレン類の合成
テトラアリールエチレン類は、凝集誘起発光などに代表される特異な化学的・物理的性
質を示すため、様々な科学分野から注目を集めている分子群である。緻密な分子設計に基
づいた望みの性質を実現するためには、テトラアリールエチレン類の位置および立体異性
体を精密に作り分けることができる、効率的な合成手法が必要不可欠である。
申請者は、1章で開発した手法で調製できる trans-1,2-ジマグネシオアルケンが、テトラ
アリールエチレン類の合成前駆体になると考えた。しかしながら、ニッケルおよびパラジ
ウム触媒を用いた、1,2-ジマグネシオアルケンとハロゲン化アリールの熊田−玉尾−Corriu カ
ップリングを試行したところ、得られるテトラアリールエチレンは低収率にとどまった。
そこで申請者は、マグネシウムから亜鉛へのトランスメタル化により 1,2-二亜鉛化アルケン
を発生させたのち、パラジウム触媒を用いたハロゲン化アリールとの根岸カップリングを
行えば、所望のテトラアリールエチレンを合成できると考えた。検討の結果、アルキンか
ら発生させた trans-1,2-ジマグネシオアルケンに対し塩化亜鉛を作用させたのち、パラジウ
ム触媒とハロゲン化アリールを加えたところ、目的の anti-1,2-ジアリール化が室温で進行す
ることを見いだした。本手法によって、従来法では合成困難であった置換パターンを有す

るテトラアリールエチレンを、対応するジアリールアセチレンから位置・立体選択的にワ
ンポット合成できるようになった。

Appendix A アルキンのジボリル化還元による 1,2-ジボリル-1,2-ジメタロアルカン類の発生、
および 1,2-ビスボロン酸エステル類の合成への利用
ビスピナコラートジボロン共存下、アルキンに対し単体アルカリ金属を作用させたとこ
ろ、アルキンのジボリル化が進行した。従来の溶解金属還元によるアルキンの水素化とは
異なり、二つの炭素−ホウ素結合および二つの炭素−アルカリ金属結合が一挙に形成し、対
応する 1,2-ジボリル-1,2-ジメタロアルカンが生成した。序論で述べたように、本手法の鍵と
なる反応剤であるビスピナコラートジボロンは、アルカリ金属による還元を受けないもの
の、系中で生じる不安定カルボアニオン種を速やかに捕捉できる、耐還元性求電子剤とし
て機能している。生じた 1,2-ジボリル-1,2-ジメタロアルカンは、単結晶X線構造解析により
その構造を確かめられ、また(E)-ジボリルアルケンなどの様々な隣接ビスボロン酸エステル
類への変換が可能であった。

Appendix B 金属ナトリウムと耐還元性トリメトキシボランを用いた
アルキンの還元的 1,2-syn-ジボリル化
耐還元性求電子剤としてトリメトキシボラン共存下、アルキンに対して金属ナトリウム
を作用させたところ、アルキンの還元的 1,2-ジボリル化が進行した。二つのホウ素置換基は
syn 選択的に導入され、対応する(Z)-ジボリルアルケンを与えた。本反応は、Appendix A で
述べたアルキンの anti 選択的ジボリル化と、
立体選択性の観点から相補的な反応といえる。
また、反応系中で生じるビスボラート種は、ヨウ化アリールとのワンポットでの鈴木−宮浦
クロスカップリングに利用でき、アルキンの形式的な syn-アリールホウ素化が達成された。 ...

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