リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Proteomic analysis of shell matrix proteins in the pond snail Lymnaea stagnalis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Proteomic analysis of shell matrix proteins in the pond snail Lymnaea stagnalis

石川, 彰人 東京大学 DOI:10.15083/0002006272

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

石川

彰人

本論文は、軟体動物の巻貝類が左右に非対称な構造の貝殻を形成す
ることに着目し、その貝殻基質タンパク質(Shell Matrix Proteins: SMPs)を
コードする遺伝子の発現量を体の左右で比較することにより、貝殻形成で
重要な機能を持つ SMPs を推定した先駆的研究である。また、同種内の
右巻と左巻の系統間で SMPs の組成や遺伝子発現プロファイルを比較す
ることで、貝殻形態の左右性の維持への関与が疑われる SMPs に関する
予察的な検討も行った。これまでに軟体動物をはじめとする多くの生物で、
硬組織中の基質タンパク質の網羅解析が行われているが、SMPs と体の
左右性との関連は本研究により世界で初めて明らかにされた。
全 5 章からなる本論文の第1章は General introduction であり、軟体動
物における貝殻形成で重要なバイオミネラリゼーション(生体鉱化作用)の
プロセスと、その中で特に重要な役割を持つと考えられる SMPs の構造と
機能、そして本研究で分析対象に用いられたヨーロッパモノアラガイ
(Lymnaea stagnalis)に関する先行研究についてレビューされている。
第2章では、ヨーロッパモノアラガイの SMPs の網羅解析の結果と、そ
れらの遺伝子発現量の左右比較の結果が述べられている。本章における
研究の結果、本種右巻系統の成体殻から、新規タンパク質 42 種を含む、
合計 207 種の SMPs が同定された。さらに、これらの SMPs 遺伝子の発現
量を、外套膜の左右から別々に得られたトランスクリプトームデータを用い
て比較したところ、32 種の SMPs においてその発現量が左右で有意に異
なることが見出された。これらのうち、11 種の SMPs は足部で発現していな
い外套膜特異的な配列であり、いずれも外套膜の右側より左側で高発現
であった。
トランスクリプトームで差異の見られた 32 種の SMPs について、さらに定
1

量 PCR 法により、発現量の比較を行った結果、4 種の SMPs において同
様の左右差があることが確認された。これらのうち 3 種は外套膜左側で、1
種は外套膜右側で、より高発現であった。これらのことから、巻貝の形態
形成において、SMPs は貝殻形成の促進よりも抑制のコントロールにおい
て働いている可能性が示唆された。
右側で高発現だった SMP は新規タンパク質であるが、既知の SMPs に
含まれるドメインを持つものであった。また、左側で高発現であった 3 種の
SMPs のうち、2 つは新規タンパク質であり、残りの1つは貝殻形成におい
て重要視されている Pif 様タンパク質であることがわかった。この Pif 様タン
パク質は通常の Pif が持つ VWA ドメインを欠く。VWA ドメイン以外の保存
ドメインのアミノ酸配列をもとに分子系統解析を行った結果、この Pif 様タ
ンパク質は、元々二枚貝と巻貝の共通祖先が有していた Pif タンパク質に
由来し、二次的に VWA ドメインを失ったことが示された。すなわち、二枚
貝類では貝殻形成を促進することを示す知見が得られている Pif であるが、
ヨーロッパモノアラガイに至る系統で VWA ドメインが失われた結果、逆に
貝殻形成を抑制する働きを持つようになったことが示唆された。
第3章では、巻貝の巻き方向の左右性に注目し、右巻系統と左巻系統
間で貝殻プロテオームの比較を行った。本章では新たに左巻系統の外套
膜トランスクリプトーム解析と、右巻左巻両者の貝殻プロテオーム解析が
行われ、443 種の SMPs が同定された。これらのうち、いくつかの SMPs は
右巻系統と左巻系統の間で明らかに貝殻から検出される量が異なること
が分かった。また、SMPs 遺伝子の外套膜左右における発現プロファイル
も、右巻系統と左巻系統の間で必ずしも鏡像関係にないという意外な事
実も明らかになった。左巻系統の SMPs の左右比較で唯一発現量に有意
な左右差が見られたのは EF-hand ドメインを2つ持つ新規 SMP であり、左
巻系統の外套膜左側でより高発現であった。
第 4 章は、General discussion であり、これまでの章の研究で明らかとな
2

ったヨーロッパモノアラガイの SMPs の構造と発現パターンの特徴を総括し、
その機能的、進化的意義を考察した。また、第5章では本研究で用いた
材料と手法を詳細に記述している。
以上述べたように、本論文は、軟体動物巻貝類の左右性に着目し
て、貝殻形成で重要な機能を持つと考えられる SMPs を同定した独
創的な研究成果である。なお、本論文の第2章は、清水啓介、磯和
幸延、竹内猛、趙然、紀藤圭治、藤江学、佐藤矩行、遠藤一佳との
共同研究であるが、論文提出者が主体となって分析及び検証を行っ
たもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。したがって、
博士(理学)の学位を授与できると認める。

3

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る