放線菌の潜在的二次代謝に対する抗生物質の濃度依存的活性化作用の解析
概要
研究成果の概要(和文):
抗生物質の元来の定義は微生物が生産し、他の微生物の生育を阻害する化学物質とされている。その一方で、抗生物質が濃度依存的に微生物に対して好影響を与えることが報告されている。代表的な抗生物質生産菌である放線菌では、リボソームを標的とする抗生物質の存在下で生育や二次代謝能が向上することが判っている。本研究では、放線菌におけるこの現象の特性や基本メカカニズムを明らかにした。加えて、それらの解析から得られた結果に基づき、抗生物質の特性を生かして放線菌から潜在的な二次代謝産物を発掘するための新たな手法を考案・検証した。
研究成果の学術的意義や社会的意義
抗生物質が効かない多剤耐性菌が次から次へと発生する中で、新しい抗生物質の開発が求められている。しか し、放線菌をはじめ、微生物の二次代謝産物から得られることの多い抗生物質の発見数は減少し続けている。この窮地を乗り切るためには、新しい抗生物質の開発や抗生物質耐性機構の解明に尽力することに加え、抗生物質の本質を理解することが極めて重要である。本研究で得られた新知見には、抗生物質研究におけるそれらの課題の達成に大きな手がかりを与える内容が含まれており、学術的にも社会的にも意義深い研究成果といえる。
研究成果の概要(英文):
Antibiotics are chemical compounds that suppress the growth of microorganisms. On the other hand, antibiotics can act positively on bacteria. We have previously reported that ribosome-targeting antibiotics at concentrations below the minimum inhibitory concentration enhanced secondary metabolism in actinomycetes, which are one of the major antibiotic producers. In this study, we clarified the characteristics and basic mechanisms of this phenomenon in actinomycetes. Based on the results obtained from the analysis, we devised and verified a new method for discovering potential secondary metabolites from actinomycetes with antibiotic properties.
キーワード: 抗生物質 放線菌 二次代謝 リボソーム Streptomyces