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大学・研究所にある論文を検索できる 「Structure and Function Analysis of A Novel Endoperoxide-Forming Non-heme Fe(II)- and αKG-dependent Dioxygenase from Filamentous Fungi」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Structure and Function Analysis of A Novel Endoperoxide-Forming Non-heme Fe(II)- and αKG-dependent Dioxygenase from Filamentous Fungi

翟, 睿 東京大学 DOI:10.15083/0002006398

2023.03.24

概要
























抗マラリア薬として利⽤されるアルテミシニンをはじめとして、エンドペルオキシド含有化合物は多様な
⽣物活性を⽰し、その構造と活性から医薬品資源として注⽬される化合物群である。しかしながら、その⽣合
成については未知な部分が多く、酵素の発⾒、機能解析が待たれている。エンドペルオキシド構造を含む⼆次
代謝産物の⽣合成については、⽷状菌 Aspergillus fumigatus 由来 verruculogen の⽣合成が明らかとされており、
遺伝⼦群中の⾮ヘム鉄 α-ケトグルタル酸(α-KG)要求性ジオキシゲナーゼ酵素 FtmOX1 がエンドペルオキシ
ド形成反応を触媒することが報告されていた。近年、⼆つ⽬の例として Aspergillus novofumigatus 由来のメロ
テルペノイド化合物 novofumigatonin の⽣合成中において、⾮ヘム鉄 α-KG 要求性ジオキシゲナーゼ酵素 NvfI
がエンドペルオキシド構造の形成を⾏うことが明らかとされた。NvfI は asnovolin A を基質とし、⼀回の触媒
反応で3つの酸素原⼦を導⼊し、fumigatonoid A を⽣産する。興味深いことに、NvfI は他の α-KG 要求性ジオ
キシゲナーゼと相同性を⽰さず、系統樹解析においてはこれまでに解析された α-KG 要求性ジオキシゲナーゼ
とは異なる系統群に属することが⾒出された。そこで翟睿は、この α-KG 依存性ジオキシゲナーゼ NvfI に着
⽬し、酵素の機能解析、⽴体構造解析に着⼿した。
⾮ヘム鉄 α-KG 要求性ジオキシゲナーゼ酵素群は⼆価鉄を含む酸化酵素であり、低分⼦化合物からタンパク
質や DNA まで様々な⽣体分⼦に対して⽔酸化や脱メチル化、⼆重結合の導⼊など多彩な酸化反応を触媒する。
本酵素群は、細菌から植物、動物まで広く存在しており、ヒトには約 60 個、各植物種のゲノムでは 0.5%を占
めることが明らかとなっている。医薬品資源としても利⽤価値の⾼い⼆次代謝産物の⽣合成中においても重要
な役割を担っており、これら酵素の機能解析、構造解析を基盤とした反応機構解析は、遺伝⼦資源を利⽤した
有⽤化合物の安定供給、機能改変⽣合成酵素を⽤いた新規⽣物活性化合物の創出へつなげることが期待される。
まず、翟睿は酵素を⼤腸菌に異種発現させ、精製した酵素に対して X 線結晶構造解析を⾏った。その結果
2.0 Å の分解能で全体構造の取得に成功した。NvfI の全体構造は、他のジオキシゲナーゼと類似した
double-stranded β-helix (DSBH) core fold を有していたが、⼤きく異なる点として、DSBH を構成する β-sheet が
別の部位の β-strand と相互作⽤し、新たな β-barrel 構造を形成していた。さらに、他のジオキシゲナーゼにお
いては⼆量体化することで活性部位を形成しているのに対し、NvfI では単量体で活性部位を形成しているこ
とが判明した。ゲル濾過カラム解析によっても実際に NvfI は溶液中において単量体で存在していることを確
認している。
さらに翟睿は基質と酵素の結合様式を明らかとするために、結晶に対して基質 asnovolin A のソーキングを
⾏い、酵素-基質複合体を取得した。アポ体と複合体の活性部位構造を⽐較した結果、複数のアミノ酸残基の
コンフォメーション変化が⾒られ、基質結合によって活性部位残基の⼤きな動きが引き起こされることが判明
した。また、コンフォメーション変化が⾒られた活性部位残基および基質と相互作⽤している残基の変異体解
析を⾏った結果、Arg118、Phe127、His138、Trp199 の変異体においてはエンドペルオキシド形成活性が低下し、
代わりに異なる部分が酸化されたアルデヒド化合物や、エポキシド化合物を⽣成することを⾒出した。このこ
とから、これらの残基と基質との相互作⽤や酵素反応中における活性部位構造の動きが、基質認識や基質の結
合様式に重要であると考察している。また、FtmOx1 の酵素反応においては Tyr 残基が酵素反応中エンドペル

オキシドの形成後、ラジカル中間体への⽔素原⼦の付加反応を⾏い、触媒残基として重要な役割を担っている
ことが⽰唆されている。NvfI においても Tyr116 が基質近傍に存在し、同様に重要な役割を担っていると考え
られたが、Tyr116 を Phe に置換した変異体は野⽣型と同程度のエンドペルオキシド形成活性を維持していた。
しかしその⼀⽅で、Y116A 変異体においては⽣成物特異性が変化し、異なる位置の⽔素原⼦が引き抜かれ⽔
酸化された asnovolin B を主⽣成物として与えることが判明した。以上の結果より、Tyr116 残基は、触媒残基
としては機能していないが、芳⾹環がエンドペルオキシド形成反応中、分⼦酸素を認識するのに重要であり、
NvfI においては FtmOx1 とは異なる反応メカニズムにより、エンドペルオキシドが形成されると考察している。
また、翟睿は 18O で標識した酸素、⽔を反応に⽤いることで⽣成物における酸素原⼦の由来についても検討
した。18O2 存在下においては⽣成物+4 の分⼦量ピークが⾒られ、+6 のピークは⾒られなかった。⼀⽅で、H218O
存在下においては、+2 の分⼦量ピークが確認された。この結果は、導⼊される3つの酸素原⼦のうち、2つ
が酸素由来、1つが⽔分⼦由来であり、推定反応機構と⽭盾している。これに対して翟睿は、活性中⼼の早い
溶媒交換が原因であり、溶媒交換により⽔分⼦で置換された ferryl-hydroxo 中間体から3つ⽬の⽔酸基部分が
導⼊されるため、1つの酸素原⼦が⽔分⼦由来となったと考察している。最後に、以上の⽴体構造解析、変異
体解析の結果をもとに、NvfI の反応機構を提唱した。
本研究を通して翟睿は、天然においても珍しいエンドペルオキシド構造を合成する α-KG 依存性ジオキシゲ
ナーゼ NvfI に着⽬し、酵素の機能解析、⽴体構造解析を達成した。今後、酵素に対して構造に基づく合理的
な変異を導⼊することで、⼆次代謝⽣合成酵素の触媒機能のさらなる拡張と、⽣体触媒にも利⽤可能な有⽤酵
素の創出への展開が期待される。よって本論⽂は博⼠(薬科学)の学位請求論⽂として合格と認められる。

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