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Structure-Function Studies on Enzymes from Intestinal Bacteria Involved in C-Deglycosylation of Medicinal Natural Products

何, 海兵 東京大学 DOI:10.15083/0002006399

2023.03.24

概要






















海兵

植物に含まれるイソフラボン類グリコシド化合物は、腸内細菌によって脱糖化反応や変換反応が進⾏した後
に吸収され、エストロゲン様活性を⽰す。それにより、乳癌や前⽴腺癌、⾻粗鬆症などに予防効果があること
が知られている。近年、⼤⾖や葛に多く含まれる C-グリコシド化合物 puerarin や O-グリコシド化合物 daidzin
の脱糖化を触媒する⽣合成遺伝⼦群 dgp クラスターおよび dfg クラスターが腸内細菌から報告された。これら
は DgpA/DfgE (oxidoreductase)による糖部分の酸化反応と DgpB/DfgB (hypothetical protein)、DgpC (sugar
phosphate isomerase) /DfgA (β-galactosidase)による C-C もしくは C-O 結合切断の⼆段階の反応により脱グリコシ
ル化を⾏う。興味深いことに、⼆段階⽬の反応においては、DgpB と DgpC、DfgA と DfgB がヘテロ⼆量体を
形成し、他の脱グリコシル化酵素では⾒られない巨⼤複合体構造を形成することが⽰唆されていた。しかし、
これらの酵素の基質特異性や、⾦属要求性などの⽣化学的性質や⽴体構造を基盤とした反応機構などは明らか
とされていなかった。
そこで本研究において何海兵は、巨⼤複合体を形成する脱糖化酵素 DgpB/C および DfgA/B 複合体に着⽬し
て、in vitro での⽣化学的特性の解析やクライオ電⼦顕微鏡や X 線結晶構造解析を⽤いた酵素⽴体構造の解明
を⾏った。エクオールをはじめとするイソフラボン類はその効果から特定保健⽤⾷品や健康⾷品にも利⽤され
ており、その吸収を促進する酵素の触媒反応メカニズムや⽣化学的特性を明らかとすることは、新たなプロド
ラッグ様化合物の創出や酵素の医薬品、⾷品添加などに対する利⽤へとつながり、薬学、⾷品化学の発展への
貢献が期待される。
博⼠論⽂の前半部分において何海兵は、精製した酵素を⽤いた in vitro 反応により、基質特異性、⾦属要求
性など⽣化学的性質の解析を⾏った。Puerarin, orientin, isoorientin, vitexin, isovitexin, mangiferin, aroenin などの
アグリコンの構造やグリコシル化位置の異なる種々C-グリコシド化合物や O-グリコシド化合物を基質として
酵素反応を⾏い、両酵素において C-O 結合の切断が可能である⼀⽅で、C-グリコシド化合物に関しては、
DgpB/C は C8-グリコシド化合物、DfgA/B は C6-グリコシド化合物に選択性を⽰すことを明らかとした。また、
⾄適 pH、温度を検討したところ、⾄適 pH は腸内の環境と⼀致し pH 6.0 を⽰した。⼀⽅、反応温度は 60 度が
最適であり、複合体を形成することで熱安定性を獲得していることが⽰唆された。さらに、⾦属要求性の検討
を⾏った結果、酵素を EDTA で処理した場合、6 割活性が低下し、そこに⼆価⾦属イオンを添加することによ
り活性が回復することを⾒出した。また、種々⼆価⾦属イオンを作⽤させ、Ni2+および Mn2+において最⼤活性
を⽰すことを明らかとした。
後半部分においては、DgpB/C および DfgA/B の⽴体構造解析に着⼿している。何海兵はクライオ電⼦顕微
鏡解析および、X 線結晶構造解析により酵素の全体構造を明らかとし、共にヘテロ⼆量体を形成することによ
って活性部位が構築されることを⾒出した。また、⾦属結合部位は isomerase ドメイン DgpC、DfgA 中に位置
し、活性部位のアミノ酸残基 His/Glu/Asp などが配位することで⾦属イオンが固定されていた。さらに、クラ
イオ電⼦顕微鏡解析によって得られた構造と X 線結晶構造解析によって取得した構造の⽐較から、DgpB/C 複
合体の isomerase ドメイン DgpC において、活性部位上部に位置し 4 つのa-へリックスから構成される
N179~D244 部分の電⼦密度が、結晶構造では⾒られるものの、クライオ電⼦顕微鏡の構造では⽋損している

ことが判明した。⼀⽅、DfgA/B 複合体の isomerase ドメイン DfgA においてはこの部分が短いループに置換さ
れているものの、代わりに結晶構造では hypothetical ドメイン DfgB の Y113-H138 のループが活性部位に突き
出し、同様にクライオ電⼦顕微鏡の構造では⽋損していた。以上の結果より、これらの部分は溶液中において
はフレキシブルであり、基質の結合によって活性部位構造のコンフォメーション変化が起き、活性部位を閉じ
ると推察している。実際に、isomerase ドメインの N179~D244 部分の⽋損実験によりこの部分が活性に重要で
あることを⽰し、hypothetical ドメインのスワッピング実験から DgpB/C および、DfgA/B の組み合わせが複合
体形成に必須であることも明らかとした。また、共同研究先において得られたホモログ酵素の酵素-基質複合
体と DgpB/C、DfgA/B の活性部位構造を⽐較することで、活性部位を構成するループ構造よびアミノ酸残基の
種類によって活性部位形状が変化し、それにより基質特異性が決定すると推測している。
次に、活性部位における触媒残基を明らかとするために変異体実験を⾏った。⾦属配位残基および、DgpB/C、
DfgA/B に保存されているアミノ酸残基に変異を導⼊した結果、⾦属を配位する残基やその近傍に位置してい
る塩基性アミノ酸残基 His143、K265 の変異体において顕著な活性の低下が⾒られた。これらの結果から何海
兵は、⾦属イオンに基質の糖部分が相互作⽤し、His143 もしくは K265 が酸-塩基触媒として働くことで C-C
結合の切断を⾏うと考察している。
本研究は、⽣物活性の発現に重要な脱グリコシル化酵素の機能解析、構造解析を⾏い、⽴体構造、変異体に
基づく反応機構の解明を達成した。⽣体内においてイソフラボン類を吸収するための酵素的機構を明らかとし
たことで、今後新たなプロドラッグの開発や医薬品への酵素の利⽤などが期待される。これらの業績は合成⽣
物学を利⽤した新規活性物質の産⽣や、創薬化学に⼤きく貢献するものであり、本論⽂は博⼠(薬科学)の学
位論⽂として合格と認められる。

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