ファブリキウス嚢非依存的な B 細胞分化経路の特定とその高温耐性評価を目的とした免疫学的研究
概要
鳥類や哺乳動物(例:マウス)の粘膜面で分泌される免疫グロブリンの大部
分が IgA であり、管腔に存在する微生物に結合することで(i)病原微生物の排除
や(ii)共生微生物の定着に働き、腸内環境を健全に保つことに寄与している
(Huus et al., 2021)。抗体 IgA が腸管粘膜面で分泌されるまでの一連のメカニズ
ムは、哺乳動物と鳥類では大きく異なる。哺乳動物では、骨髄由来の IgM+成
熟 B 細胞が、腸管関連リンパ組織(GALT)において抗原刺激を受け取ること
で主に IgA+形質芽細胞へと分化し、その後粘膜面に移行することで、腸管腔に
IgA が分泌される(Lebman et al., 1987, Sato et al., 2003)。マウスでは、空腸-回
腸間に発達するパイエル板が腸管最大の免疫臓器として理解されており、その
組織構造は抗原認識に関わる B 細胞受容体である膜貫通型 IgM を発現する成熟
した B 細胞が集積する濾胞と、その近傍に発達する T 細胞が集積する領域(傍
濾胞)から構成される(ref)。パイエル板はドーム状の濾胞関連上皮(M 細胞)
で覆われており、M 細胞を介して管腔の微生物を取り込み、それを M 細胞下に
待機している抗原提示細胞(例:マクロファージ、樹状細胞)に受け渡すこと
で、濾胞内の IgM+B 細胞に抗原シグナルを伝達し、成熟 B 細胞の増殖や分化
に働く(Lai et al., 2020, Neutra et al., 1996, Rios et al., 2016)。 ...