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大学・研究所にある論文を検索できる 「Dynamics and mechanisms of Paneth cell granule secretory responses in intestinal mucosal immunity [an abstract of entire text]」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Dynamics and mechanisms of Paneth cell granule secretory responses in intestinal mucosal immunity [an abstract of entire text]

横井, 友樹 北海道大学

2020.03.25

概要

【背景と目的】
腸管内腔は常に食べ物や病原菌および常在細菌などの外来性抗原に曝されており、腸上皮細胞、免疫細胞などから構成される腸管粘膜免疫がこれら多彩な抗原の適切な排除と共生を制御することで、生体恒常性を維持している。この宿主による排除と共生の制御機構破綻が生活習慣病、がん、精神疾患をはじめ様々な疾病と関連することが報告されている。腸管粘膜免疫において、腸上皮細胞は物理的障壁や抗菌物質分泌によって中心的役割を担っている。小腸上皮細胞の一系統である Paneth 細胞は、様々な抗菌物質や生理活性物質を含む顆粒を内腔へ分泌することで腸管自然免疫に貢献する。特に、Paneth 細胞顆粒内容物の大部分を占めるα-defensin は病原菌や日和見菌に対して強力な殺菌活性を示す一方、宿主に有益な共生菌は生かすことで腸内細菌叢を制御している。また、Paneth 細胞の分泌機能異常が炎症性腸疾患や肥満症などの疾病と関与することが知られている。以上より、Paneth 細胞は顆粒を分泌することで、腸管粘膜免疫における排除と共生のバランス制御を介して生体恒常性維持に重要な役割を担っていると考えられる。しかし、これまで Paneth 細胞分泌応答を生体外で解析するための評価系が存在しなかったため、リガンドセンシングから顆粒分泌に至る Paneth 細胞における分泌応答メカニズムは全くわかっていない。そこで、本研究において小腸上皮細胞の 3 次元 ex vivo 培養系である enteroid を用いることを着想した。Enteroid は腸上皮幹細胞と Paneth 細胞を含む 4 系統の最終分化細胞から構成され、小腸上皮構造を模した陰窩様構造と絨毛様構造および内側に閉鎖された内腔を有しており、腸上皮細胞の生理機能解析に適している。本研究の目的は enteroid を用いた Paneth 細胞顆粒分泌評価系を確立し、外来抗原刺激および内在性刺激による Paneth 細胞の顆粒分泌メカニズムを解明することによって、腸管粘膜免疫における排除と共生の制御機構を理解することである。

【方法】
Enteroid培養のために、C57BL/6マウスの空腸をEDTA含有HBSS中で反応後、振動を加えて小腸陰窩を単離した。単離陰窩をMatrigelで包埋し、EGF、Noggin、R-spondin-1を含む培地にて培養した。培養開始から3–4日目のenteroidにおけるPaneth細胞を刺激前および刺激開始から30分後に共焦点レーザー顕微鏡で撮影し、刺激前後の顆粒面積および体積の減少率を顆粒分泌率として算出した。内腔側からの刺激に対するPaneth細胞顆粒分泌応答は試験物質をenteroid内腔にmicroinjectionによって導入し、顆粒分泌率を算出することで評価した。Paneth細胞のmRNA発現解析のために、Paneth 細胞顆粒に亜鉛が高濃度で蓄積されていることから亜鉛プローブZinpyr1でPaneth細胞を特異的に染色してfluorescence-activated cell sortingによりソート後、 超微量電子制御ピペットを用いてPaneth細胞のみを回収した。抽出したmRNAを逆転写反応後、nested PCRによりアセチルコリン受容体のmRNA発現を解析した。加えて、アセチルコリン受容体およびその細胞内シグナル因子に対する各種阻害剤でenteroidを前処理することで、Paneth細胞顆粒分泌評価を行った。さらに、Ca2+センサーであるYC3.60ノックインマウスからenteroidを作成し、Förster resonance energy transfer (FRET)を利用したCa2+イメージングにより Paneth 細胞における細胞質内 Ca2+動態を解析した。マウス小腸組織におけるコリン作動性細胞の局在はPan-neuronマーカーおよびアセチルコリン合成酵素に対するwhole-mount免疫蛍光染色した後、透明化して3次元的画像を取得することで解析した。分泌応答後の顆粒再形成能はCCh刺激後、培地交換をしてtime-lapse解析をすることで評価した。

【結果】
1. Enteroid を用いた ex vivo Paneth 細胞顆粒分泌評価系の確立と外来抗原および内在性刺激に応答した顆粒分泌の解明 α-Defensin に対する蛍光免疫染色より、enteroid 中の Paneth 細胞が in vivo と同様に顆粒中に α-defensin を発現していることを確かめた。Paneth 細胞の α-defensin 分泌を誘導することが知られているコリン作動薬である carbachol (CCh)を enteroid 培地に添加、すなわち基底膜側から刺激すると、Paneth 細胞は CCh 添加直後から顆粒を分泌し始め、10 分後には大部分の顆粒が分泌された。
Paneth 細胞の顆粒分泌を定量化するために、CCh 刺激前後における顆粒の面積と体積を計測することで顆粒分泌率を算出したところ、両者は強い正の相関を示した。したがって、測定が簡便な面積顆粒分泌率によって体積顆粒分泌率を反映した正確な顆粒分泌を定量化できることを確認した。次に、腸管内腔に該当する enteroid の内腔は閉鎖されているため、内腔側からの刺激に対する顆粒分泌評価のために microinjection による enteroid 内腔への物質導入を試みた。Fluorescein を enteroid 内腔に microinjection したところ、enteroid 外では microinjection 前後で蛍光強度比の上昇がみられなかった一方、内腔では顕著な上昇を示したことから、漏出することなく、物質を内腔に導入する方法を開発した。Paneth 細胞-defensin 分泌を誘導することが知られ、腸管内腔に存在するグラム陰性細菌の外膜構成成分である lipopolysaccharide (LPS)を microinjection により enteroid 内腔へ導入すると、Paneth 細胞はすみやかに顆粒を分泌した。これに対して、LPS を培地中に添加したところ、全く分泌応答を示さなかった。加えて、グラム陰性細菌である Salmonella enterica serovar Typhimurium ΔphoP (S. typhimurium ΔphoP)の生菌を enteroid 内腔へ導入すると、導入から 4–19 分後にかけて顆粒分泌応答を示した。以上より、Paneth 細胞顆粒分泌応答の ex vivo 評価系を確立し、Paneth 細胞が腸管内腔の外来性抗原刺激および基底膜側からの内在性刺激をそれぞれ細胞極性に依存してセンシングすることで、顆粒を分泌していることをはじめて明らかにした。

2. コリン作動性刺激による Paneth 細胞顆粒分泌応答シグナル伝達経路の解明
Paneth 細胞は基底膜側からのコリン作動薬 CCh 刺激によって顆粒を分泌したことから、Paneth 細胞直下の粘膜下層にコリン作動性細胞が存在し、Paneth 細胞顆粒分泌を制御していると考えた。そこでまず、透明化免疫染色によって小腸組織におけるコリン作動性細胞の局在を解析したところ、Paneth 細胞直下の粘膜下層にコリン作動性神経が存在していた。次に、コリン作動性刺激による Paneth 細胞顆粒分泌応答のメカニズムを明らかにするために、小腸上皮細胞の中から Paneth 細胞のみを単離し、nested PCR を行うことで、Paneth 細胞はアセチルコリン受容体 mRNA を発現していることを示した。また、アセチルコリン受容体に対するアンタゴニストで前処理した enteroid は有意に顆粒分泌応答が抑制された。さらに、アセチルコリン受容体下流の細胞内シグナル因子に対する各種阻害剤およびFRET によるカルシウムイメージングを用いることでPaneth 細胞分泌に関わる細胞内シグナル伝達経路を明らかにした。以上の結果より、Paneth 細胞が上皮下神経刺激に応答して顆粒を分泌するメカニズムを明らかにした。

3. 分泌応答後における Paneth 細胞顆粒再形成能の解明
Paneth 細胞が分泌応答後にどのような運命を辿るのかを明らかにするために、顆粒分泌後の Paneth 細胞を time-lapse によって追跡した。CCh による顆粒分泌後、1 時間から新しく形成された顆粒の充填が開始され、21 時間後にはほぼ分泌前の状態まで再形成した。さらに、この再形成後の Paneth 細胞は 2 回目の CCh 刺激に対しても 1 回目と同程度の顆粒分泌能を示した。このことより、Paneth 細胞は腸管内腔において顆粒の分泌と充填を繰り返しながら常に刺激到来に備えている可能性を示した。

【結論】
本研究は enteroid を用いた Paneth 細胞の顆粒分泌 ex vivo 評価系を確立して、Paneth 細胞顆粒分泌応答の生理的動態およびその細胞内シグナル伝達メカニズムをはじめて明らかにした。本成果はPaneth細胞を介した排除と共生による腸管粘膜免疫の恒常性維持機構に新たな知見を加えるものであり、様々な疾患の新規予防法、治療法開発に大きく貢献する。

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