オンライン在宅医療実習の教育評価
概要
急速に少子高齢化が進む中、我が国では 2025 年までに団塊の世代が後期高齢者を迎えることにより、医療や介護など社会保障費の急増が懸念されている 1)。こうした中、国は限りある医療・介護資源を活かしながら国民が住み慣れた地域で安心して生活を継続し、人生の最後を迎えることができるよう、地域の包括的な支援・サービスの提供体制(地域包括ケアシステム)構築を推進している 2)。この地域包括ケアシステムでは、患者の生活が医療機関から患者宅や介護施設に移行するため、在宅医療の充実を図ることは必要不可欠である。特に、高齢者の多くは生活習慣病を始めとする慢性疾患を抱えていることが多く、このような患者の治療は薬物治療が中心である。したがって、医薬品の適正使用と薬物治療に伴う患者安全確保の観点から、在宅医療における薬剤師の役割は今後益々重要になると考えられている 3)。
このような医療構造の変化に伴い、薬学教育の在り方も大きく変化してきた。2015 年 4 月から施行された改訂モデル・コアカリキュラムでは、新たに定められた卒業時に求められる資質の一つとして、在宅医療など地域医療への積極的参加を介して、地域における人々の健康増進に貢献する能力を有することが標榜された 4)。これに伴い、2018 年度の OSCE から在宅での薬学的管理に関する課題が新たに加わるようになった 5)。東京薬科大学では、時代の趨勢に先んじる形で 2014 年より 4年生を対象とした実務実習事前実習の一部として、模擬患者参加型の在宅医療を題材とした実習を実施してきた 6)。しかし、2020 年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で学生は大学への通学が制限され、当該実習もオンラインでの実施を余儀なくされた。本稿では、筆者がオンラインで実施した「在宅医療実習」での取り組みについて報告すると共に、オンライン実習による教育効果について検証する。