軽症者等宿泊療養施設に入所したcoronavirus disease 2019患者の重症化リスク評価および機械学習を用いた呼吸不全発症予測の試みと療養延長に影響を及ぼした要因の解析
概要
(書式18)
学
(
位 論 文 要 約
A b s t r a c t )
博士論文題目 Title of dissertation
軽症者等宿泊療養施設に入所した coronavirus disease 2019 患者の重症化リスク評価および機械学習を
用いた呼吸不全発症予測の試みと療養延長に影響を及ぼした要因の解析
東北大学大学院医学系研究科医科学専攻
内科病態学講座総合医療学分野
氏名 Name
研究背景
只野
恭教
COVID-19(coronavirus disease 2019)患者のうち、その多くが重症化リスクの低い軽症の患者で
あるが、そのような患者群に焦点を当てた報告は過去になく、実際の臨床的特徴や重症化率、療養経過につい
ては不明な部分が多い。また、軽症の患者は自宅や療養施設で療養しているため、重症化した場合に対応が遅
れる懸念がある。以上より、軽症者等宿泊療養施設に入所した COVID-19 患者の臨床的特徴と重症化リスクを
評価し、本研究対象者における重症化の基準となる呼吸不全を予測するモデル作成を試みた。加えて、療養期
間の延長に関わるリスク因子を解析した。
研究方法
2020 年 12 月 7 日から 2021 年 2 月 21 日の間に宮城県において COVID-19 軽症者等宿泊療養施設か
ら退所した患者全員を研究対象とし、後方視的コホート研究を行った。患者背景、基礎疾患、呼吸不全発症率
から本患者群の特性を確かめ、患者背景、基礎疾患、バイタルサインと各症状の変化を用いて、観察時点から
24 時間後の呼吸不全発症を予測するモデルを機械学習により作成した。加えて、COVID-19 発症から 2 週間を
超える療養期間に関連するリスク因子を、多変量ロジスティック回帰を用いて解析した。
研究結果
研究対象者は 944 人で年齢の中央値は 38 歳、女性が 412 人(43.6%)
、重症化に関連する基礎疾患
が 1 つ以上あった患者は 255 人(27.0%)
、入院となった患者は 63 人(6.7%)であった。呼吸不全を発症し
た患者は 63 人(6.7%)であり、年齢の上昇(オッズ比 1.08、95%信頼区間 1.06-1.10)と男性(オッズ比 4.70、
95%信頼区間 2.39-9.22)が有意に関連していた。
呼吸不全発症予測モデルの結果は AUC
(area under the curve)
0.88、感度 80.0%、特異度 85.1%であった。2 週間を超える療養期間となった患者は 123 人(15.6%)で、年齢
の上昇(オッズ比 1.02、95%信頼区間 1.01-1.04)、アトピー性疾患(オッズ比 1.69、95%信頼区間 1.09-2.64)、
発症時の咳の存在(オッズ比 1.64、95%信頼区間 1.09-2.48)、そして発症後 COVID-19 診断前に処方された経
口抗菌薬(オッズ比 2.37、95%信頼区間 1.33-4.22)が有意に関連していた。
結論
軽症者等宿泊療養施設に入所した COVID-19 患者において、実際に重症化する頻度は COVID-19 患者全体
の頻度より低く、呼吸不全発症には年齢の上昇と男性であることのみが関連していた。呼吸不全発症の予測は、
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機械学習モデルによって高い精度で予測することができた。2 週間を超える療養期間の延長には年齢の上昇、
アトピー性疾患、発症時の咳の存在、そして発症後 COVID-19 診断前に処方された経口抗菌薬が有意に関連し
ていた。 ...