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Pediatric fulminant myocarditis in Japan: a retrospective nationwide database study of hospital volume, management practices, and mortality

大木 伸吾 広島大学

2021.05.27

概要















Pediatric fulminant myocarditis in Japan: a retrospective
nationwide

database

study

of

hospital

volume,

management practices, and mortality
(日本における小児劇症型心筋炎:医療機関あたり症例数,
治療内容,および死亡率に関する後方視的データベース研究)
Pediatric Critical Care Medicine, 2021, in press.

主指導教員:志馬
(医系科学研究科

純子

教授

疫学・疾病制御学)

副指導教員:久保
(医系科学研究科

大木

教授

救急集中治療医学)

副指導教員:田中
(医系科学研究科

伸朗

達彦

教授

公衆衛生学)

伸吾

(医歯薬保健学研究科

医歯薬学専攻)

【背景と目的】
小児急性心筋炎の中の重症群である劇症型心筋炎は,強心薬や血管収縮薬に加えて機械的循
環補助や心臓移植を要することがあり,各種治療法の進歩が得られた現在でも高い死亡率を示
す。小児劇症型心筋炎の予後を改善するためには,その特徴や非劇症型心筋炎との違いなどを理
解する必要がある。しかし,小児劇症型心筋炎の罹患率は低いため大規模な調査が少なく,非劇
症型心筋炎との各種アウトカムの差異や,治療実態および死亡に関連する因子については十分
に明らかにされていない。また,他の小児重症患者群では,症例数が多い医療機関での治療が良
好な生命予後と関連することが示されているが,小児劇症型心筋炎を対象とした検討はこれま
で行われていない。
以上の背景を踏まえた本研究の目的は,1)小児劇症型心筋炎の院内死亡率,入院日数などの
アウトカムを,非劇症型心筋炎と比較すること,2)小児劇症型心筋炎の治療実態を明らかにす
ることおよび 3) 医療機関あたりの症例数や治療内容などの要因が小児劇症型心筋炎患者の生
命予後に与える影響を検討することである。
【方法】
日本全国の急性期医療機関の入院患者データが含まれる Diagnosis Procedure Combination
(DPC)データベースを用いて,1,000 施設以上の医療機関を対象とした後方視的調査を行った。
各患者の DPC データには,年齢や性別などの基本情報,診断名,投薬や処置の内容,診療報酬
な ど の 詳 細 が 記 録 さ れ てい る 。 ま ず , 小 児 急 性 心筋 炎 に 該 当 す る 9 つ の International
Classification of Diseases, Tenth Revision コードを用いて,2012 年 4 月から 2018 年 3 月の期
間に DPC 対象医療機関を退院した 18 歳未満の急性心筋炎患者を抽出した。このうち,入院 7
日目までに強心薬/血管収縮薬投与,機械的循環補助および心肺蘇生のいずれか 1 つ以上を受け
た患者を劇症型心筋炎群に分類した。
なお,治療期間中に転院が必要となり連続して複数の医療機関に入院した患者の場合,DPC
データベース内には入院した医療機関の数だけ個別のデータが生成されることから,これらの
データを連結する必要があった。研究のために抽出された DPC データは全て匿名化されていた
が,患者の性別,生年月日,郵便番号は使用可能であり,これらの情報を用いて同一患者を特定
した。同一患者で複数の入院データが存在し,初回の入院データの退院日と 2 回目の入院データ
の入院日が同一の場合にはデータを連結し,入退院日,投薬や処置の有無,入院期間,退院時転
帰などの項目を調整した。
統計解析としては主に 3 つのことを行った。まず,記述統計として患者背景,治療内容および
院内死亡率などの各種アウトカムを,劇症型心筋炎群と非劇症型心筋炎群とで比較した。次に,
劇症型心筋炎群を対象に患者背景,医療機関種別,医療機関あたりの小児劇症型心筋炎症例数お
よび治療内容と院内死亡の関連を,単変量・多変量ロジスティック回帰分析により検討した。多
変量ロジスティック回帰分析に用いる独立変数は,事前に設定していた年齢(中央値を用いて 2
カテゴリに分割),医療機関あたりの小児劇症型心筋炎症例数(三分位数を用いて highest tertile
群,middle tertile 群および lowest tertile 群の 3 カテゴリに分割)
,機械的循環補助の有無およ

び人工呼吸の有無に加え,単変量ロジスティック回帰分析で院内死亡と有意に関連していた項
目とした。各医療機関での患者のクラスタリングを考慮するため,マルチレベル分析を適用した。
最後に,post-hoc 解析として 3 通りのプロペンシティスコア(PS)分析(PS マッチング,PS
で調整した多変量ロジスティック回帰分析および逆確率重み付け法)を行い, highest tertile
群の医療機関での治療が院内死亡率に与える影響を検討した。
【結果】
合計 866 例の小児急性心筋炎患者が抽出され,うち 382 例(44.1%)が劇症型に分類された。
劇症型心筋炎による初回入院は,18 歳未満の小児の入院 100,000 例あたり 8.7 例であった。劇
症型心筋炎患者の年齢の中央値は,非劇症型心筋炎患者と比較して有意に低かった(5.0 歳 vs.
12.0 歳; P<0.001)。劇症型心筋炎の院内死亡率は 24.1%であり,院内死亡のオッズは非劇症型
心筋炎の 41.3 倍高かった(95%信頼区間[CI] 14.7 –115.9; P<0.001)。
また,劇症型心筋炎において,以下の要因が院内死亡率の上昇と有意に関連していた:年齢 5
歳以下(オッズ比[OR], 3.41; 95%信頼区間[CI], 1.75–6.64; P<0.001),入院 7 日目までに機械
的人工呼吸が必要(OR, 2.39; 95% CI, 1.03–5.57; P=0.043),入院 7 日目までに心肺蘇生法が必
要(OR 10.63; 95% CI, 5.52–20.49; P<0.001)および入院 7 日目までに腎代替療法が必要(OR,
2.53; 95% CI, 1.09–5.87; P=0.030)。一方, highest tertile 群(小児劇症型心筋炎症例数が 6 年
間で 6 例以上)の医療機関での治療は,lowest tertile 群(小児劇症型心筋炎症例数が 6 年間で
2 例以下)の医療機関での治療と比較して院内死亡率の低下と有意に関連していた(OR, 0.30;
95% CI, 0.13–0.68; P=0.004)。加えて,3 つの PS 分析においても,highest tertile 群の医療機
関での治療はそれ以外の医療機関での治療と比較して院内死亡率の低下と有意に関連していた。
【考察】
小児劇症型心筋炎の院内死亡率は 24%と高値であった。特に乳幼児における生命予後は不良
であったが,乳幼児では心血管系の予備能が低いことや機械的循環補助など各種侵襲的治療の
手技の難易度が高いことが影響していると考えられる。また,患者の約 70%は小児劇症型心筋
炎症例数が 6 年間で 1 –5 例,すなわち年間 1 例にも満たない医療機関で治療を受けていた。そ
の理由として,小児劇症型心筋炎の罹患率が低いことだけでなく,多様な初期症状を呈するため
に初期段階での高次医療機関への患者搬送が難しいことや,日本における小児専門医療機関お
よび小児集中治療室の不足などが考えられる。一方,本研究では他の小児重症患者群の場合と同
様に,小児劇症型心筋炎の治療経験が多い医療機関では患者の生命予後が良好であることが示
された。小児劇症型心筋炎は希少かつ重症度の高い疾患であり,地域の拠点となる医療機関への
症例集約化が救命率向上に寄与する可能性がある。
【結論】
DPC データベースを用いて大規模な後方視的研究を行った結果,日本における小児劇症型心
筋炎の院内死亡率は 24%と依然として高値であった。また,本研究では小児劇症型心筋炎の症
例数が多い医療機関での治療が,院内死亡率を低下させることが示された。医療機関あたりの症
例数により患者予後に違いが出る理由については,引き続き検討が必要である。

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