リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「新たな特徴を持つ蚕品種の育成ならびに新品種に適した飼養技術の開発に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

新たな特徴を持つ蚕品種の育成ならびに新品種に適した飼養技術の開発に関する研究

岡田, 英二 オカダ, エイジ 東京農工大学

2021.05.10

概要

⽇本の蚕育種の背景には、 ⽇本の蚕⽷業の歴史が⼤きく関わる。江⼾時代になって盛んになった蚕⽷業は、ヨーロッパ諸国が、微粒⼦病という蚕の病気で衰退する中、着実に養蚕の技術を⾼め、明治に⼊ると外貨獲得に向け、国策として蚕⽷業を進め、国内で⼤量に作られた蚕の繭は、より付加価値の⾼い⽣⽷へ繰⽷することで、⼤量に海外へ輸出された。この輸出によって莫⼤な利益を得て、国を興したため、⽇本の蚕育種の⽅向は、最⼤量の⽣⽷を得ることを⽬ 的とし、そのため⾍体を⼤きくし、それに伴い繭⽷を⼤量に吐く蚕を開発することが基本となった。特に⽇本の蚕育種で優れた功績は、外⼭博⼠により開発された「雑種強勢による⼀代雑種 」の利⽤であり、異種交雑によるF 1で繭⽣産 量が⼤幅に改善され、世界最⼤の⽣⽷輸出国へと変貌した。しかし、世界恐慌や、ナイロンなどの化学合成繊維の開発、これに続く太平洋戦争によって、蚕品種は整理統合され縮⼩した。戦後、整理された蚕系統からかつての規模への回復が求められたが、特需によって息を吹き返した⽇本経済は、産業構造が農業・軽⼯業から重化学⼯業へとシフトし、蚕⽷業はさらに衰退した。蚕品種の育成は明治から計量形質の増⼤、⼀辺倒であったが、昭和終盤から平成にかけて、国内蚕⽷業の⽣存を掛けて、既存の蚕品種にどの様な付加価値が付けられるか、特徴のある新しい蚕品種へと育種の⽅向性が変わっていった。

本研究では、 特徴のある新しい蚕品種育成を前提とし、これからの絹⽷として注⽬される、繭⽷の物理的特性(強度)に着⽬し、⾼強度を有する繭⽷を吐⽷する蚕(カイコ: Bombyxmori)を育 種すること。また、近年、新しい特徴のある蚕品種として開発された極細繊度品種について2つの問題が⽣じ、これまでの育種法による技術でこの点を改善すること。そして、化学繊維にはない、独 特な趣のある⽟⽷を効率よく産⽣する蚕品種を開発し、この蚕品種に最も適した営繭のための装置、上蔟法について開発することを主題として展開した。

第1 、2章では、繭⽷に⾼強度な特性のある蚕の育種について記述している。これまでにほとんど調査されてこなかった特徴であるため、素材探索から始め、 農研機構で保持するカイコの地域型蚕品種 2 95 種の繭⽷について網羅的に強度、伸度、ヤング率についての物理的特性を調査した。ここから得られたデータより「 諸桂などの素材候補を選抜した。遺伝資源ストックからの素材だけでは、 計 量形質へ反映できないため実⽤品種についても調査して選抜を⾏い、これらについては、効率の良い交配形式を選ぶために、強度についての遺伝効果を解析した。これら解析から候補とした品種を使って育成を⾏い、新しくできた⾼強度繭⽷を吐⽷する蚕品種「 MN 5 0 2 、「 MC 5 0 2及びその交雑 種「 MN 5 0 2 × MC 5 0 2を育成した。カイコの繭⽷強度は⼀般に3〜4 gf /デニール(d )といわれるが、この交雑種は5 .3 1 gf / dを記録した。

第3、 4章では、 農林⽔産⼤⾂指定を受けた最後の品種 「はくぎん」の改良で、この品種は1. 6 〜 1 .7 dの細い繊度の繭⽷を吐く蚕とされ、 計量形質よりもニーズや差別化を⽬的に⾼付加価値のあるブランド化を⽬指して作られたが、 近年、その繊度が2 d前後と当初よりも太くなった。蚕は⼀般的に交配後、直ぐに産卵を始め、翌⽇までにほぼ全卵を産むが、「中 515号」の雌は産卵を3⽇ 間、掛けて⾏う。そのため卵の孵化管理に必要な浸酸ができず、蚕種製造業者は苦慮していた。よって育種⽬標を繭⽷繊度2 d以下と改良種の産卵性の向上に定め、 ⽇本における細繊度蚕品種全ての元祖となる「 MK 」品種を⽤い、「はくぎん」の⾎縁度をさらに「 MK 」へ近づけ、その回帰を主眼とし、新たな品種
「中 516号」、「中 517号」とその交雑種「⽩麗」を育成し、 1 .8 d前後の繭⽷ 繊度として2 d以下を維持し、⻑時間を掛ける産卵性の問題も解決した。

第 5 章では、「琉球多蚕繭」という品種から2 頭以上の蚕が1つの繭を作る⽟繭品種「珠⾥丸」を育成した。⽟繭から取れる⽟⽷で織物を作ると、その趣により⾼価な⽣地として取引されている。この品種は熟蚕を普通の2倍以上の頭数を千年蔟に放り込むと⽟繭蚕率が4 0 %となる。しかし、この状態では過密であり、営繭時に蚕がする糞尿で繭がかなり汚染される。そこで、営繭装置として回転蔟に使われる既存のボール蔟を改良した⽟繭⽤ボール蔟を⽤いて営繭させたところ、外部汚染繭や奇形繭の割合が低減し、解舒率も上がった。普通 蚕品種の⽟⽷節よりは、「珠⾥丸 」の節は劣るが、織物特性はより柔らかいものとなることが⽰唆された。

現在、 蚕品種登録制度は蚕⽷業法の廃⽌によりなくなったが、これに代わる保証のために既存の雑誌への論⽂提出が望ましいと考える。新しい育種法として他の⽣物においては、DNAマーカー育種が⽤いられているが、カイコでは緒に就いたところである。その他に、遺伝⼦組換えや遺伝⼦編集による育種も進んでいるが、組換えによる緑⾊蛍光繭を⽣産する蚕がカルタヘナ法上の1種使⽤されたが、新育種法の素材となる蚕の存在は依然として重要である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る