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大学・研究所にある論文を検索できる 「Identifying and characterizing people with dementia not accessing Japanese Community-Based Integrated Care System using health insurance claims data」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Identifying and characterizing people with dementia not accessing Japanese Community-Based Integrated Care System using health insurance claims data

海野 あかね 三重大学

2022.10.24

概要

(背景)
日本では高齢化に伴い、高齢者が地域で自分らしく生活していけるよう、住まい、医療、介護、予防、生活支援を提供する地域包括ケアシステムの構築がすすめられてきた。また、認知症高齢者に対しても、住み慣れた地域での生活を続けられる社会の実現のための施策が講じられてきた(オレンジプラン・新オレンジプラン)。その施策の一つが認知症初期集中支援事業であり、早期の適切な介護介入を実現するため、支援を必要としている認知症高齢者に集中的・包括的にかかわり、支援体制を調整する認知症初期集中支援チームが各自治体に設置された。しかし、その対象者の把握は家族らからの自発的な相談に頼っており、相談がなく、地域包括ケアシステムへの紐づけのない認知症者を自治体が把握することは困難である。我々はレセプトデータを利用して、地域包括ケアシステムに紐づけのない認知症患者を特定し、その属性を明らかにし、支援介入することを試みた。

(方法)
本研究は、三重県玉城町役場、たまきあい(玉城町の外郭団体)、三重大学の三者研究契約のもとで行った。玉城町が管理する2016年の5月・6月の後期高齢者医療保険のレセプトデータを匿名化後に三重大学に提供してもらい、抗認知症薬を処方された患者を抽出した。玉城町役場にて、匿名化解除後に介護保険の利用歴のある者を除き、さらに予防サービスや施設入所などその他の地域包括ケアシステムのサービスを利用している者、死亡者を除いて、2018年1月時点で地域包括ケアシステムに紐づけのない認知症患者を特定した。たまきあいが訪問の事前同意を得て訪問調査、1年間の介入・追跡を行った。再度匿名化した調査結果を三重大が解析した。

(結果)
2016年の5月・6月の後期高齢者医療保険利用者1,809名のうち、抗認知症薬を処方されていたのは138名だった。そのうち2018年1月時点で地域包括ケアシステムに紐づいていなかったのは16名だった。臨床的に認知症が否定され内服を終了していた1名を除き、15名とその家族が訪問調査に参加した。15名中、10名が男性で、13名は身体的・認知的に比較的自立していた。15名全員が家族介護者と同居しており、独居者はいなかった。15名全員がサービスの利用を拒否していた。15名中10名の家族は閉じこもりの予防や認知機能低下の進行抑制のためにサービスを必要と考えていたが、患者本人の拒否やそのほかの理由により利用していなかった。残る5名の家族はサービスを必要と考えていなかった。サービスや認知症についての情報提供と症状や希望にあったサービスを紹介したところ、7名が介護保険のサービスまたは認知症予防サービスの利用を開始した。

(考察)
認知症初期集中支援チームについての既報告では、介入対象者は女性が多く、身体的には自立しているが、認知的に自立度が低下してきた場合に独居または高齢夫婦世帯だと、自発的な相談から介入に至る傾向が報告されている。本研究で特定し介入した、自発的な相談がなくケアに紐づいていなかった15名は男性で、身体的・認知的に比較的自立しており、家族介護者がいるなど、異なる特徴を示していた。これは、男性は女性よりも介護サービスの利用開始が遅く、女性介護者による介護をできるだけ長く受ける傾向にあるとの国内外の複数の報告と一致する。また、自立度が比較的高く、家族の介護能力があるためケアに紐づきにくかった可能性が示唆された。また全例で患者本人の拒否が、サービスの利用につながらない原因となっており、初期の認知症でみられやすい拒否や否認がケアに紐づきにくい最大の要因となっていると考えられた。また、今回の介入で約半数がサービス利用に至っており、ケアに紐づきにくい症例でも、サービスや認知症についての情報提供や、本人の症状・介護環境・希望に沿ったサービスの紹介によりスムーズにサービス利用に至る場合があることが分かった。

(結論)
レセプトデータを利用し、地域包括支援システムに紐づけのない認知症患者を特定することができた。また、その訪問調査により、男性で、身体的・認知的に比較的自立しており、家族介護者がいる場合、家族がサービスを必要としていても自発的な相談をせず、ケアに紐づきにくい傾向があることが示唆された。本研究は、自発的な相談がなくケアに紐づきにくい場合でも、自治体がレセプトデータを利用し認知症患者を特定することで、認知症患者への早期・適切な介護介入を実現できる可能性を示した。リアルタイムデータの利用やどの保険を利用するか、他の自治体にも適用できるかなどはさらなる研究が必要である。