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大学・研究所にある論文を検索できる 「密封小線源と外部照射併用療法における生物学的効果比と線量分割を考慮した新たな三次元線量評価法の確立」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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密封小線源と外部照射併用療法における生物学的効果比と線量分割を考慮した新たな三次元線量評価法の確立

小林, 大輔 筑波大学

2020.07.27

概要

【目 的】
放射線治療では,種類の異なる放射線を組み合わせて実施されることがある。近年では,密封小線源と陽子線を用いた併用療法が注目されている。併用療法は高い治療効果が得られる反面,放射線ごとに生物学的影響が異なり,予期せぬ放射線障害を生じる可能性がある。そのため,精度の高い線量評価が必須となる。線量評価には,物理学的線量と生物学的線量が用いられ,併用療法では生物学的影響を考慮した生物学的線量が一般的に利用される。生物学的線量は, 主に生物学的効果比( Relative Biological Effectiveness:RBE)と線量分割に依存する。RBE と線量分割を変化させたときの生物学的影響の予測モデルはいくつか存在するが,密封小線源と陽子線の併用療法に適応するためには,複数の最適なモデルを組み合わせる必要がある.しかし,現在,臨床で使用されている線量評価システム(治療計画装置)では,任意にデーターベースをカスタマイズすることができないため,複数のモデルを組み込むことができず,密封小線源と陽子線併用療法において精度の高い線量評価は行われていない。
本研究の目的は,RBE と線量分割を考慮した線量評価システムを構築し,密封小線源と外部照射併用療法における新たな三次元線量評価法を確立することである。

【方 法】
(1) 物理学的線量評価システムの構築
生物学的線量は,物理学的線量に対して種々のモデルを用いることで算出される。そのため,高い計算精度の物理学的線量が取得でき,さらに,種々のモデルを組み込めるシステムが必要である。そこでまず,密封小線源治療と陽子線治療における高精度な物理学的線量評価システムを構築した。治療計画の計算アルゴリズムには,原子力分野で広く応用されるモンテカルロシミュレーションコードである Particle and Heavy Ion Transport code System(PHITS)を用いた。計算精度を検証するために,放射線検出器(半導体検出器とラジオクロミックフィルム)を用いて実測データを取得し,シミュレーションと比較を行った。密封小線源は,水等価ファントムを使用して,線源から 4 mm 離れた断面(ファントムの幾何学的構造と線量強度を考慮した適切な位置)の線量プロファイルで比較した。陽子線は,水中における深部量百分率と軸外線量比で比較した。
(2) RBE と線量分割を考慮した生物学的線量評価
RBE は,Microdosimetric-Kinetic-Model(MKM)を搭載した PHITS の Microdosimetric Function(微小領域内でのエネルギー付与を計算できる機能)を用いて算出した。MKMは線質の変化を考慮することで,RBE を算出できる生物物理学的モデルである。本研究では,MKM を用いて密封小線源で使用する 192Ir の RBE を算出した。基準放射線は外部照射で頻用される 10 MV-X 線とした。陽子線では,媒質中の深部方向における RBEの変化を考慮した生物学的線量を算出した。
線量分割を考慮した生物学的線量として,2 Gy 換算等価線量(Equivalent dose in 2 Gy fractions:EQD2)を算出した。EQD2 の計算には,通常 Linear-Quadratic(LQ)modelが用いられるが,密封小線源と陽子線の併用療法の場合,LQ model で正確に計算できる線量範囲を逸脱している。そこで,密封小線源と陽子線の併用療法で使用する線量域まで正確に計算可能な Linear-Quadratic-Linear(LQL) model を用いて EQD2 を算出した。

【結 果】
(1) 物理学的線量評価システムの計算精度
物理学的線量評価システムでは,密封小線源の線量プロファイルにおいて,線源近傍の領域では,実測値とシミュレーション値との差異は最大 2.3%であった。陽子線の深部量百分率と軸外線量比においては,シミュレーションと実測値の差異は 2%以内であった。
(2) RBE と線量分割が生物学的線量に及ぼす影響
10 MV-X 線を基準放射線にした場合,192Ir の RBE は 1.1 であった。陽子線の深部方向における Spread-Out Bragg Peak(SOBP)終端の線量は,従来の線量評価法と比較し, RBE の変化を考慮した場合 21%増加し,線量分割を考慮した場合 26%増加した。RBEと線量分割を考慮した場合,密封小線源と陽子線の併用療法において,従来の線量評価法と本研究が提案する線量評価法では 103%以上の乖離が見られた。

【考 察】
密封小線源の線量計算は人体を均質な水としており,骨や空気などの不均質媒体を考慮していない。本研究で使用したモンテカルロシミュレーションは,不均質媒体の計算が可能であり,かつ最も精度が高い計算アルゴリズムである。そのため,モンテカルロシミュレーションを用いることは,物理学的線量の計算精度の観点からも有用である。さらに,この物理学的線量評価システムの構築によって,MKM と LQL model を組み込んだ新たな三次元線量評価が可能となった。
192Ir とほぼ同等のエネルギーの RBE に関しては,細胞研究において 1.15 であると報告されている。これは,本研究の結果とほぼ同等であり,MKM の計算精度が高いことを示している。また,陽子線の深部方向における RBE の変化に関しては,過去の研究により実測を再現することが証明されている。このように,MKM は従来の治療計画装置では考慮できない線質の変化を計算可能なモデルであり,MKM を用いることで,RBEを考慮した精度の高い線量評価が可能である。また,一般的に,線量分割は 1 回の線量が高いほど影響が大きい。そのため,陽子線と 1 回の線量が高い密封小線源の併用療法 においては,RBE と線量分割を考慮した線量評価が必須である。本研究で構築した線 量評価システムは,MKM と LQL model を組み合わせることにより,RBE と線量分割の 両方を考慮した正確な線量評価が可能であり,これまでにない新たな線量評価法である。

【結 論】
本研究では,密封小線源と陽子線の併用療法において,生物学的影響を考慮して高精度に評価することを目指し,RBE と線量分割の両方を考慮した新たな線量評価法の確立に成功した。この手法を用いることにより,密封小線源と外部照射併用療法が安全かつ正確に実施可能になる。

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