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大学・研究所にある論文を検索できる 「Dual-energy CTの解像特性に関する検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Dual-energy CTの解像特性に関する検討

菅原, 暖斗 東京大学 DOI:10.15083/0002002349

2021.10.13

概要

背景
1972 年にHounsfield により最初のCT の臨床使用が発表されて以降、CT は様々な発展を遂げ、臨床現場になくてはならない検査装置となった。近年、一度に複数のエネルギーレベルのデータを収集して画像化し、複数のエネルギーレベルでの CT 値からさまざまなパラメータを計算することができる Dual-energy CT が実用化され始めている。

特に臨床応用が期待されているのは、仮想単色X 線画像によるコントラストの上昇である。Dual- energy CT では仮想的に任意のエネルギーレベルの画像を作成することで、コントラストを調節することができる。特に低エネルギー領域ではヨード造影剤のコントラストが上昇し、使用造影剤量を低減した際に有用であると報告されている。

CT における画質評価には、歴史的に信号雑音比 (Contrast to noise ratio, CNR)が用いられてきた。しかし、2000 年代に開発された逐次近似再構成法の画質評価における検討から、逐次近似再構成では CNR による評価では不十分で、画質の優劣を決める際には何らかのタスク(病変の検出や、病変の性状評価など)を用いて評価すべきであるとの報告が見られるようになった。 Dual-energy CT の過去の報告では CNR による評価を行っているものが多い。しかし Dual- energy CT も画像再構成法が複雑であることから、これまでの CNR による評価では限界があり、 CNR 以外の要素が画質に影響を及ぼしている可能性があると考えられた。

目的
CT における画質では、コントラストのほかに空間分解能が大きな影響を持つとされる。このため、実験Ⅰ アクリルファントムによる空間分解能の検討において、Dual-energy CT と Conventional CT の空間分解能を比較することを試みた。

次に、より実臨床に近い状況での画質評価を行うため、血管の描出能に関して検討することとした。まずは実験Ⅱ 血管ファントムによる実験により、実臨床に近い血管ファントムを作成し、血管内腔の計測誤差を比較した。さらに、実験Ⅲ 造影剤量低減患者における血管描出能の検討において、実際に造影剤を半量に減量した Dual-energy CT の画像と造影剤を通常量使用した Conventional CT の画像の血管描出能を比較検討した。

さらに、これまでの Dual-energy CT の検討では単純 CT や低線量での報告が少なかったため、単純 CT かつ低線量での Dual-energy CT の画質を評価するため、実験Ⅳ 超低線量 CT における Dual-energy CT の画質評価の検討を行った。

方法
実験Ⅰ アクリルファントムによる空間分解能の検討
空間分解能の比較のため、アクリル製のファントムを使用し、Modular transfer function (MTF)を測定した。

実験Ⅱ 血管ファントムによる実験
4 種類の内腔径、3種類の内腔濃度の血管モデルを使用し、血管ファントムを作成した。これを Conventional と Dual-energy のそれぞれのモードで撮影し、血管モデル断面のプロファイルカーブからピーク CT 値と半値幅を計測した。血管内腔の自動計測ソフトを使用し、血管モデルの内腔の実測値から計測誤差を算出した。

実験Ⅲ 造影剤量低減患者における血管描出能の検討
単一の施設において、腎機能低下(eGFF 45mL/分/1.73m2 以下)により、Dual-energy CT による造影剤低減プロトコル(造影剤使用量; 300 mg/kg)が撮影され、かつ過去5年以内に通常の (Conventional な)プロトコル(造影剤使用量; 600 mg/kg)で撮影された履歴がある患者 21 人(男性 10 人/女性 11 人、平均年齢 73.9 歳、平均体重 56.3 kg)を対象とし、後方視的に解析した。軸位断像にて円形の関心領域(Region of interest, ROI)を大動脈、右腸腰筋、腹腔動脈根部、上腸間膜動脈根部に置き、CT 値、ノイズ、信号雑音比(CNR)を算出した。冠状断の最大値投影画像 (Maximum intensity projection, MIP)を厚さ 10 mm、間隔 1mm で作成し、2 名の放射線科医が血管の描出を 4 段階(4, 完全に描出される; 3, 部分的に見えないあるいは口狭不整に見える部位がある; 2, 部分的に見える; 1, 見えない)で評価した。

実験Ⅳ 超低線量 CT におけるDual-energy CT の画質評価の検討
単一の施設において、健診目的に超低線量 CT が撮影された 23 人(男性 15 人/女性 8 人、平均年齢57.1±9.4 歳、平均体重67.7±13.9 kg)の患者を対象とし、後方視的に解析した。Conventional撮影群として、モデルベース逐次近似再構成法(Iterative Model Reconstruction, IMR)で、Dual- energy 撮影群として仮想単色 X 線画像の 40 keV と 70 keV の画像を再構成した。軸位断像にて円形の ROI を左側背部の皮下脂肪、気管分岐レベルの大動脈、甲状腺右葉、右胸鎖乳突筋におき、CT 値、ノイズ、CNR を測定した。2 名の放射線科医が各領域(縦隔、甲状腺、頸部軟部組織)の画質を 4 段階で評価(4, 診断画像として全く問題ない; 3, 診断画像としてほぼ問題ない; 2,診断画像として問題あるが使用可能; 1, 診断画像として不適切である)した。また頸部と縦隔レベルでのアーチファクトをそれぞれ 4 段階 (4, アーチファクトなし; 3, 軽度のアーチファクトあり; 2, 中等度のアーチファクトあり; 1, 高度のアーチファクトあり)で評価した。

統計
血管ファントムの実験における半値幅と血管内腔の計測誤差に関しては、多元配置分散分析 (multi-way ANOVA)で解析し、post hoc test として Scheffe 検定を行った。造影剤量低減患者における血管描出能の検討に関しては、定量的評価、定性的評価ともに、Mann-Whitney U 検定を行った。超低線量 CT における Dual-energy CT の画質評価の検討においては、定量的評価、定性的評価ともに、一元配置分散分析(one-way ANOVA)で解析し、post hoc test として Scheffe 検定を行った。いずれも p < 0.05 を統計学的有意とした。

結果と考察
実験Ⅰ アクリルファントムによる空間分解能の検討
Dual-energy 撮影(70 keV, 50 keV)では Conventional 撮影(120 kVp)と比較して、すべての空間周波数において MTF の値が低値であり、空間分解能が低下していることが示唆された。

空間分解能が低下した原因として、Dual-energy CT で 2 種類のエネルギーデータを収集する際の位置ずれの影響や、画像再構成法の複雑さの影響が考えられる。

実験Ⅱ 血管ファントムによる実験
血管ファントムによるピーク CT 値と半値幅の計測では、50 keV におけるピーク CT 値はいずれの造影剤濃度群でも 120 kVp, 70 keV のピーク CT 値より高かった(P < 0.0001)。半値幅に関しては、いずれの撮影モードでもピーク CT 値が低下するにしたがって下がる傾向にあったが、減少の程度は 120 kVp, 70 keV, 50 keV で違った傾向が見られた。

70 keV (Dual-energy)では、すべての濃度で 120 kVp (Conventional)よりも測定誤差が有意に大きいか、有意差なしとなった。

50 keV (Dual-energy)では、低濃度血管モデルでは 120 kVp (Conventional)よりも有意に測定誤差が小さかったが、高濃度血管モデルでは有意に測定誤差が大きくなった。

各群で内腔の計測誤差に差が見られた原因としては、Dual-energy CT の空間分解能の低下のほか、 120 kVp (Conventional)画像での低濃度血管モデルの内腔の低すぎる CT 値や、 50 keV (Dual-energy)画像での高濃度血管モデルの内腔の高すぎる CT 値が原因として考えられる。

実験Ⅲ 造影剤量低減患者における血管描出能の検討
造影剤量低減患者における血管描出能の検討では、Conventional 撮影とDual-energy 撮影では、大動脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈、腸腰筋のすべてにおいて CT 値に有意差は見られなかった。しかしノイズは Dual-energy 撮影で有意に小さく (P < 0.001)、これにより CNR も大動脈、腹腔動脈にて Dual-energy 撮影で有意に大きくなった (それぞれ P=0.011, 0.030)。上腸間膜動脈ではCNR に有意差は見られなかった。定性的評価においては、Conventional 撮影とDual-energy撮影では、腹腔動脈本幹、上腸間膜動脈本幹の描出に有意な差はみられなかった。しかし上腸間膜動脈分枝、辺縁動脈・直動脈、胃十二指腸動脈、膵アーケードの描出は Conventional 撮影で有意にスコアが高かった (いずれも P<0.001)。

Dual-energy CT では造影剤量を半量に減量しているにも関わらず血管の CT 値は保たれ、ノイズの低下により CNR は高値となった。しかし定性的評価では太い血管の描出は保たれたが末梢の描出が低下しており、CNR の結果との乖離が見られた。細い血管の描出が特に低下していたことから空間分解能の低下が主な原因と考えられるが、ノイズの性状やアーチファクトも影響している可能性がある。

実験Ⅳ 超低線量 CT におけるDual-energy CT の画質評価の検討
画像ノイズに関しては IMR 群が 70 keV 群、40 keV 群より有意に低かった (p < 0.001)。大動脈の CNR に関しては IMR と 40 keV の画像は 70 keV の画像より有意に CNR が高かった (p < 0.001)。頸部の筋の CNR は IMR の画像で 70 keV、40 keV の画像より有意に高かった (p < 0.001)。

定性的評価では頸部に関して 70 keV 群が IMR 群に対して有意に高いスコアとなった (p < 0.001)。70 keV 群は 40 keV 群と比較して有意とはいえないまでも高いスコアの傾向があった(p = 0.063)。

縦隔のアーチファクトに関しては各群の間で有意差はみられなかった。頸部のアーチファクトに関しては、70 keV 群が IMR 群、40 keV 群と比較して有意にスコアが高かった (いずれも p < 0.001)。

70 keV 群では CNR が低いにも関わらず特に頸部領域で主観的画質の向上が見られた。低線量 CT では頸部領域のアーチファクトが問題となるが、仮想単色 X 線画像の比較的高いエネルギーレベルで再構成したことによりアーチファクトが低減されたことが画質向上に影響していると考えられる。

結論
アクリルファントムによる実験においてDual-energy CT では通常の撮影と比較して空間分解能の低下が認められた。また血管モデルの実験では、造影剤を減量した血管モデルでも内腔の CT値は保たれたが、測定誤差が大きくなる傾向がみられた。

実際の臨床画像においては、造影剤を減量した Dual-energy CT において、CNR は造影剤を通常量使用した Conventional CT よりも高くなっていたにも関わらず、細血管の描出能は Conventional CT のほうが良好であった。超低線量 CT においては、Dual-energy CT では IMRに比較してノイズが多くなり、CNR も低値となったが、アーチファクトが少なくなり、特に頸部領域で IMR よりも良好な画質が得られた。

これまでの報告では、Dual-energy CT では CNR が保たれるため、Conventional CT と同等の画質となるとの報告がなされていた。しかし今回の研究にて Dual-energy CT では CNR での画質の評価には限界があり、空間分解能やアーチファクトなど様々な要因により画質が影響を受けていることが明らかとなった。

今後も Dual-energy CT は技術的進歩が期待される。画像再構成法もさらに複雑になっていくと予想され、臨床目的に応じた画質評価を今後さらに進めていく必要がある。

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