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大学・研究所にある論文を検索できる 「藻類育種・培養法検討に基づく新規オイル生産方法の開発及び事業化に向けた展望」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

藻類育種・培養法検討に基づく新規オイル生産方法の開発及び事業化に向けた展望

小山, 智己 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

藻類育種・培養法検討に基づく新規オイル生産方法
の開発及び事業化に向けた展望

小山, 智己
(Degree)
博士(科学技術イノベーション)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Date of Publication)
2024-03-01

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8675号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482423
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(別紙様式 3
)

論文内容の要旨

氏 名

小山智己

専 攻

科学技術イノベーション

論文題目(外国語の場合は,その和訳を併記すること。)

藻類育種・培養法検討に基づく新規オイル生産方法の開発及
び事業化に向けた展望

指導教員

蓮沼誠久教授



) 2
, 000字∼ 4
, 000字でまとめること。

(氏名:小山智己

)
NO. 1

人々は石油をはじめとした化石資源の利用によって文明を発展させてきた.一方,化石資源の
使用時に生じる二酸化炭素によって地球温暖化問題を招いている.地球温暖化問題を解決する
為には,大気中の二酸化炭素排出量を削減させる事が不可欠である.二酸化炭素排出量を削減
させる為には,石油を代替可能かつ,環境負荷の少ない新たな資源の確立が急務とされている.
植物・微細藻類・廃棄物等といったバイオマス資源由来オイルの利用は二酸化炭素排出量の削
減が期待できる.

この事から,バイオマス由来オイルは石油に代替する資源として注目を集め

ている.バイオマス由来オイルの中でも,筆者は微細藻類由来のオイルに着目し,先端科学技
術研究,イノベーションアイディアの考案,イノベーションストラテジーの構築に取り組んで
きた.本論文では,筆者がこれまで行ってきた先端科学技術研究の成果及び研究成果をイノベ
ーション創出に繋げるためのイノベーションストラテジー(事業戦略・技術戦略・知財戦略・
財務戦略)について纏めている.

本論文は 10章で構成され,各章の概要はそれぞれ以下の通りである。

第 1章全体概要】

第 1章では,科学技術上のブレイ クスルーを応用したイノベー ションアイディアについて述
べた.筆者が提案するイノベーションアイディアは,細胞増殖とオイル生産を同時に可能な微
細藻類変異株用いた新規オイル製造技術を用いて製造したオイルを石油化学品原料であるナフ
サ,航空・熱生産用途向け燃料として利用普及させる事とした.

第 2章背景・解決を目指す課題 】

第 2章では,第 1章で述べたイノベーションア イディアを考案するに至った 背景について纏
めた.解決する社会的な課題を「大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う地球温暖化問題」と定
義し,地球温暖化問題を解決する為に,石油を代替可能かつ環境負荷が少ないと言われている
バイオマス資源由来のオイルを利活用する事とした.バイオマス資源由来のオイルの用途とし
て,化学品原料であるナフサ,熱生産用途・航空用途向け燃料とした.

第 3章微細藻類を用いたオイル生 産の可能性と課題】

第 3章では,微細藻類由来オイルの有用性を示すと共に商用利用に向けた課題を記載した.
微細藻類由来オイルは第 2章で述べた他のバイオマス資源である植物・廃棄物由来のオイルと
比較して持続的な利用が可能である.しかし,「微細藻類の細胞増殖と細胞内オイル生産がトレ
ードオフである」,「オイルを生産可能な窒素欠乏条件では細胞状態が悪化する」,「オイル生産
藻類として有望視されている 微細藻類は培養に貴重な淡水 資源を使用する」等,微細藻 類由来
オイルの商用利用を実現する為には解決すべき課題がある.そこで本論文では,微細藻類から
オイルを生産する上での課題を解決する為に,「海水を想定した条件かつ,窒素存在下・一段階
でオイル生産可能な新規微細藻類由来オイルプロセスの開発」を目的とした.

(氏名:小山智己

NO.2)


第 4章:科学技術上のブレイクスルー①:窒素源存在下でオイルを高蓄積する微細藻類変異
株の開発】
第 3章で挙げた海水を想定した条件で微細藻類を培養し,窒素源存在下・一段階でオイル生産
. 可能な培養プロセスを開発する為に,変異株の創出を行った.海洋性オイル生産藻類

Chlamydomonass
p
.KORl株に対し,重イオンビームを照射する事で細胞集団にランダムな突
然変異を導入・変異細胞集団を作製した.変異細胞集団を窒素源存在下で培養し,オイルを高
蓄積している細胞を蛍光活性セルソーターで選抜する事で,窒素源存在下で乾燥重量あたり約

20%のオイルを蓄積する KAC1710株を獲得した.窒素源存在下でのオイル含有率を更に向上
させる為に, KAC1710株を用いて再度同様の育種を行った結果,窒素源存在下で乾燥重量あ
たり約 30%のオイルを蓄積可能な KAC1801株を獲得した.


第 5章:科学技術上のプレイクスルー②:窒素源存在下でオイルを高蓄積する微細藻類変異
株を用いた一段階オイル製造方法の開発とオイル増産機構の解析】
第 4章で獲得した有望株 KAC1801株を用いた半連続培養方法を確立すると共に, KAC1801
株における窒素源存在下でのオイル増産機構を解析した. 1
8
.
6 m M の硝酸塩を含む MB

(
M
o
d
i
f
i
e
dB
o
l
d
)12N培地に海水塩を添加した培地を用い, 24時間おきごとに, 0
.
8
,
.
.
,
_
,
,
0
.
9gL
1
の乾燥細胞重量で継代培養した結果親株 KORlは乾燥重量あたり 9%のオイルしか蓄積しなか
ったのに対し, KAC1801株は乾燥重量あたり 20%以上のオイルを継続的に蓄積した.窒素源
存在下での半連続培養期間中においても KAC1801株の細胞増殖や窒素消費は維持されており,
研究目的である「海水を想定した条件かつ,窒素存在下・一段階でオイル生産可能な新規微細
藻類由来オイルプロセスの開発」を達成した.メタボローム解析及びトランスクリプトーム解
析によって KAC1801株のオイル増産機構を解析した結果,光合成能の低下や窒素同化経路の
強化といった典型的な微細藻類の窒素飢餓応答が発生した.本章では,半連続培養によって窒
素源存在下・一段階の培養方法を確立したとともに,変異株におけるオイル増産機構に関する
知見を提供した.


第 6章:事業戦略】
第 6章では,第 4章・第 5章で示した科学技術上のブレイクスルーを利用してどのような事
業を行うかといった「事業戦略」を纏めている.本事業における事業戦略は,科学技術上のブ
レイクスルーを応用した技術パッケージ(育種,屋外環境を想定した培養プロセス検討,オイ
ル抽出残消の活用法検討)提供,受託研究,コンサルティングを行う「基盤技術開発・提供企業」
を設立し,「微細藻類を用いたオイル(燃料・化学品用途)生産を目指している者」に対してサー
ビスを実施する事である.サービス提供先は本事業から提供されたサービスを利用して製造体
制を構築オイルを製造し,販売する事で社会的な価値を創出していく事とした.



~



(氏名:小山智己

)
NO.3

第 7章:技術戦略】

第 7章では,第 6章で述べた本事業にて提供する技術パッケージを開発する為の方針につい
て述べた.本事業では,①.屋外環境で簡易的にオイルを高生産可能な藻類変異株,②.変異
株を用いたベンチスケール培 養方法,③.変異株からオイ ルを抽出した後の残消活用方 法とい
った技術パッケージを開発・提供する.①.変異株の開発に関しては,「変異育種」・「ゲノム編
集」・「実験室進化(馴化)」といった 3つの育種方法を駆使して,科学技術上のブレイクスルー
のコンセプトである「海水を用いた一段階オイル生産」を実現するとともに,「屋外環境での培
養に適した特徴」を付与して いく.②.培養プロセス検討 に関しては,事前準備として 微細藻
類における過去の培養研究を網羅的に調査・リスト化しておく.その上で,培養戦略を立案し,
実験室規模∼ベンチスケール規模での培養方法を検討・確立していく.③.残消の活用方法は
微細藻類の細胞内に含まれる 成分の分析,分析結果で明ら かになった成分の市場規模等 を調査
しておくことで,残漬の活用法を提案できるようにしておく事とした.

第 8章:知財戦略】

第 8章では,第 7章で述べた技術戦略にて開発した技術をどのようにして保護していくか,
活用していくかといった知財戦略について纏めている.本事業における知財戦略として,①.育
種に関連する部分では,育種よって付与した特徴に寄与した遺伝子について特許を取得すると
共に,育種方法についてはノ ウハウ化する.②.培養方法 についてはノウハウ化する. ③.残
清の活用方法についてはノウ ハウ化する.④.本事業によ って取得した知財をサービス 提供先
にライセンス,提携先利益の一部を本事業に還元する事とした.

第 9章:財務戦略】

第 9章では設立した「微細藻類基盤技術開発・提供企業」を運営していく上での財務戦略に
ついて述べている.本事業では,研究開発期間(創業 1 2年),他社との共同開発期間(創業

0年目∼).研
3 6年),オイル売上の回収期間(創業 7年目∼)を経て事業を売却する(創業 1
究開発期間における資金運営 方法として,公的機関等から 資金を調達し,自社技術の開 発を実
施していく.同時にコンサルティング等の実施により利益を挙げていく.共同開発期間では,
事業会社との共同開発を実施する際に共同開発先からの出資を得る.同時に受託研究・コンサ
ルティングを実施する事で利益を挙げて行く.オイルの売上回収期間では他社と共同で開発し
た技術を利用し,オイルを販売していく.

この際,提携先利益から本事業で開発した技術パッ

ケージの寄与度を本事業の利 益として享受し,成長を加速 させる.最終的には,事業会 社に本
事業を売却していく事とした.
第 10章:全体総括】


J

第 10章では,本論文における全体総括を記載した.

以上

(別紙 1)

論文審査の結果の要旨

氏名

小山智己

論文
題目

藻類育種・培養法検討に基づく新規オイル生産方法の開発及び事業化に向けた展望

区分



職名



主査

教授

蓮沼誠久

喜I

副査

教授

近藤昭彦




副査

准教授

石川周

副査

教授

尾崎弘之



要 旨
本研究では,先端科学技術研究において,海水を用いた一段階オイル生産微細藻類株の創出方法,微細
藻類変異株及び変異株を用いた培養方法を開発し,それを応用してオイル製造を行うことで,石油由来燃
料・石油化学品原料(ナフサ)を代替することをイノベーションアイデアとしたものである。
本論文はバイオ燃料に関する全体概要,背景と問題解決を目指す上の課題,微細藻類を用いたオイル生
産の可能性と課題,科学技術上のブレイクスルー(窒素源存在下でオイルを高蓄積する微細藻類変異株の
開発、窒素源存在下でオイルを高蓄積する微細藻類変異株を用いた一段階オイル製造方法の開発とオイル
増産機構の解析),イノベーション創出に資する事業戦略,技術戦略,知財戦略,財務戦略と全体総括と
からなる。
これまで,微細藻類からオイルを生産する方法は栄養源が豊富な条件下で細胞を増殖させた後,栄養欠
乏条件でオイルを蓄積させる二段階の培養工程が必要であったが,本研究では,窒素系栄養源が存在する
環境でオイルを高生産する微細藻類を作出することに成功し,良好な細胞状態でのオイル生産を実現し
た。さらに,海水を想定した培地で培養を行うことで淡水資源に依存しない培養方法を確立した。このよ
うに,従来の微細藻類オイル生産法が抱える複数段階の培養工程、雑菌汚染リスクの増大、淡水資源の使
用といった問題を解決し,効率的かつ持続的にバイオ燃料を生産する方法を構築することができた。微細
藻類由来のオイルは原料が二酸化炭素であるため、石油由来オイルを代替することで地球温暖化抑制への
効果が期待できる。また、将来的な微細藻類由来オイルの製造・普及への貢献も期待できる。
先端研究成果は優れた学術的意義を有しており,イノベーションストラテジーの内容も充実している。
本論文から小山氏は先端科学技術の研究開発能力とともに,知的財産化,生産技術開発,市場開拓までの
学術的研究成果の事業化移行プロセスをデザインする能力を有しており,本研究化が輩出する博士人材の
素養を有していると判断できる。
提出された論文は科学技術イノベーション研究科学位論文評価基準を満たしており,学位申請者の小山
智己は,博士(科学技術イノベーション)の学位を得る資格があると認める。

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