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大学・研究所にある論文を検索できる 「非可食バイオマス由来糖と糸状菌による糖化酵素製造技術を基盤とした循環型タンパク質生産プラットフォームの展開」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

非可食バイオマス由来糖と糸状菌による糖化酵素製造技術を基盤とした循環型タンパク質生産プラットフォームの展開

新井, 俊陽 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

非可食バイオマス由来糖と糸状菌による糖化酵素製
造技術を基盤とした循環型タンパク質生産プラット
フォームの展開

新井, 俊陽
(Degree)
博士(科学技術イノベーション)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8750号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485934
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(別紙様式 3
)

論文内容の要旨

氏 名 新 井 俊 陽





科学技術イノベーション研究科バイオプロダクション分野

論文題目(外国語の場合は,その和訳を併記すること。)

非可食バイオマス由来糖と糸状菌による糖化酵素製造技術を基盤と
した循環型タンパク質生産プラットフォームの展開

指導教員

石井純



) 2
, 000字∼ 4
, 000字でまとめること。

(氏名:

新井俊陽

NO. 1

地球規模の温暖化、気候変動問題に対処することを目的に、国際社会が一体となって脱炭
素社会構築に向けて動き始めている。こういった脱石化の世界的な流れの中で、バイオエコ
ノミーにおける工業分野はバイオリファイナリーとも呼ばれる。様々なバイオマスから異
なるバイオ化成品を生産するコンセプトであり、オイルリファイナリーに代わる新たな産
業として期待されている。バイオリファイナリーは、サトウキビなどから得られる糖蜜、ト
ウモロコシなどのデンプン、すなわち可食バイオマスを原料とする第 1世代のバイオリフ
ァイナリーと、木質系・草本系バイオマス(リグノセルロース系バイオマス)、すなわち非
可食バイオマスを原料とする第 2世代のバイオリファイナリーに大別される。
これまでに、本論文の執筆者が所属する花王株式会社では、第 2世代のバイオリファイナ
リー推進のため、糖化酵素自体の高機能化、及びその糖化酵素を安価に製造する技術開発を
実施してきた。
ここで糖化酵素の生産宿主として世界的に使用されるのが、糸状菌乃1

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である。T.r
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0g/Lを超えるその高いタンパク質生産能力から、糖化酵素の生産
のみならず、異種タンパク質生産に有望な宿主とされる。しかしながら、トリコデルマは異
種タンパク質生産宿主として汎用的に利用されるまでに至っていない。その大きな原因と
して、

トリコデルマを利用したタンパク質生産は一般的に特殊な誘導発現系に依存するこ

とが挙げられる。
本研究において、非可食バイオリファイナリーの推進に向け、特殊な誘導生産系からの脱
却を試み、糖化酵素の安価製造技術を開発しコストに関する課題解決を図ること、加えてそ
の糖化酵素の生産システムを拡張することで、糖化酵素のみならず様々なタンパク質を安
価に製造する技術を構築することを目指した。
さらに、それらの技術を活用しながら、「極めて高いタンパク質生産性を示すトリコデル
マの生産系を今後どのように事業展開するべきか」という問いに対し、戦略構築を行うこと
を目的とした。既に検討された糖化酵素ビジネスや非可食糖製造ビジネスとは切り離して、
誘導物質フリーでのその特異なタンパク質生産能を活かすのか、糖化酵素の生産自体もシ
ステムに組み込みながら活かすべきなのか、有する技術ポートフォリオ、社会的な潮流、競
合となるプレイヤーの存在など、総合的に判断しながらその向かうべき方向性を見定め提
案し、その実現に向けて事業、技術、知財、財務の観点から戦略立案を行った。

0章で構成される。
本論文は全 1
第 1章では、本研究に関わるバイオリファイナリー、タンパク質生産技術、これまでに検
討されたイノベーション・ストラテジーの背景について述べる。
第 2章では、技術的ブレイクスルーの 1つである誘導物質フリーでの糖化酵素生産研究
について述べる。本章では、T.r
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e
iの誘導物質フリーでのセルラーゼ・ヘミセルラーゼ

(氏名:
生産のための菌株改変技術を構築した。従来の変異型

新井俊陽

NO. 2

XYR1V821F を利用した誘導物質フリ

ー系の課題であるセルラーゼの発現不足を今回の検討により克服した。これにより、最も一
般的で汎用的なグルコースを利用して安価に糖化酵素を生産可能となることが見込まれ、
さらに可食糖のグルコースだけでなく、非可食を利用した糖化酵素生産の可能性も見えて
きた。
第 3章では、第 2章の誘導物質フリーでの糖化酵素生産系を拡張し、異種タンパク質の

e
e
s
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iの
高効率生産プラットフォームの構築を目指した研究について述べる。本章では、T.r
誘導物質フリーでのセルラーゼ・ヘミセルラーゼ発現系を利用した組換えタンパク質生産
について検討し、この新しいプラットフォームは、不要なセルラーゼ遺伝子を置き換え、一
般的で安価な可溶性糖であるグルコースを唯一の炭素源としながら、極めて強力なセルラ
ーゼプロモーターを組換えタンパク質生産に利用可能であることを実証した。これはT.

r
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s
e
iの組換えタンパク質生産に関する課題を解決するものであり、本アプローチは、他
の従来型微生物を用いた組換えタンパク質生産の新しい代替法として大きな可能性を秘め
る。第 2章で述べた誘導物質フリーでの糖化酵素生産技術と併せ、さらに異種タンパク質生
産にも展開することで、極めて高い生産性を誇るトリコデルマの生産系を利用した安価非
可食糖の獲得、及びその糖を利用した糖化酵素生産と目的タンパク質の安価生産の可能性
が見えてきた。
第 4章では、第 1章で述べた背景やこれまで構築されてきたイノベーション・ストラテ
ジー、及び第 2章、第 3章で構築してきた技術、さらに既存ビジネスの調査を総合的に検
討し、本研究としてのイノベーション・ストラテジーをどのような方向性の事業とすべきか
考察について述べる。
第 5章では、技術戦略について述べる。現時点で有する技術プラットフォームの整理、不
足しているポートフォリオ、プロトタイピング、今後の開発方針について整理した。
第 6章では、知財戦略について述べる。自社の糖化酵素/タンパク質生産系の出願と、タ
ンパク質素材に関する他社の出願状況について整理し、今後の戦略立案を行った。
第 7章では、事業戦略について述べる。第 9章で財務戦略について考察するためのター
ゲット及びビジネスモデルを構築した。その上で、事業環境分析と競争優位性について評価
した。
第 8章では、財務戦略について述べる。第 8章でのモデルに基づき財務・収益性の分析
を行った。さらに、財務計画をもとにした事業価値の評価を行った。
第 9章では、イノベーション・ストラテジーのまとめと、第 8章のモデルからさらに拡
張した、将来的なイノベーション・アイデアについて述べる。

0章では、本研究の成果をまとめた上で、本研究の波及効果について述べる。
第1

(氏名:

新井俊陽

NO. 3

本研究おける問いに対し、最終的に、糖化酵素を基盤として得られた非可食バイオマス由
来の糖、及び安価大量のタンパク質生産技術を用いて、「発酵生産タンパク質そのものを素
材として活用する」という新たな循環型素材を提供するプラットフォームの提案に行き着




この提案に対し、技術・知財・事業・財務の 4つの視点から戦略分析を実施した結果、ト
リコデルマを用いた生産系の確固たる優位性である「高いタンパク質生産能」と「タンパク
質の製造ノウハウ」を活かすだけでなく、その背後にある糖化酵素の製造に基づく非可食糖
を獲得可能であるという希少性及び将来性を組み込みながら素材へと繋げていくことで、
高い競争力を維持した事業展開の可能性が考えられた。

(別紙 1)
新井俊陽

氏名
論文
題目

非可食バイオマス由来糖と糸状菌による糖化酵素製造技術を基盤とした循環型タンパク質生産
プラットフォームの展開




にコ





論文審査の結果の要旨

I

区分

職名

主査

准教授

副査

教授

近藤昭彦

副査

教授

吉田健一

副査

教授

山本一彦

副査

教授

蔭山広明





石井純







地球規模の温暖化、気候変動問題に対処することを目的に、国際社会が一体となって脱炭素社会構築に
向けて動き始めている。非可食資源からのバイオリファイナリー推進に欠かせない糖化酵素の生産宿主と
して糸状菌 Tr
i
chodermar
e
e
s
e
i (トリコデルマ)が世界的に使用されているが、 100g
/Lを超えるその高
いタンパク質生産能力から、糖化酵素の生産のみならず、異種タンパク質生産の宿主としても有望視され
ている。しかし、 トリコデルマはセルロース(の分解物)を基質とする特殊な誘導発現系に依存すること
から、異種タンパク質生産の実例は少なく、宿主として汎用的に利用されるまでに至っていない。
本論文では、強力なタンパク質発現を引き起こす際にトリコデルマで必須となるセルロースを誘導剤と
して使用せずに、安価なグルコース培地において強力なタンパク質発現を実現できる新たな誘導剤フリー
の発現システムを開発し、さらに、内因の酵素タンパク質だけでなく、異種タンパク質である低分子抗体
の生産に成功している。これらの研究成果は、 S
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3
) に掲載された。
また上述の技術をもとに、本論文では「極めて高いタンパク質生産性を示すトリコデルマの生産系を今
後どのように事業展開するべきか」という問いに対する戦略の構築を行い、既に検討された糖化酵素ビジ
ネスや非可食糖製造ビジネスとは切り離して、誘導物質フリーでのその特異なタンパク質生産能を活かす
のか、糖化酵素の生産自体もシステムに組み込みながら活かすべきなのか、有する技術ポートフォリオ、
社会的な潮流、競合となるプレイヤーの存在など、総合的に判断しながらその向かうべき方向性を見定め
提案し、その実現に向けて事業、技術、知財、財務の観点から戦略立案を行っている。本論文は以下に記
載した全 1
0章で構成される。
●第 1章では、本研究に関わるバイオリファイナリー、タンパク質生産技術、これまでに検討されたイノ
ベーション・ストラテジーの背景について述べている。
●第 2 章では、技術的ブレイクスルーである誘導物質フリーでの糖化酵素生産研究について詳述してい


●第 3章では、誘導物質フリーでの異種タンパク質生産プラットフォームの構築について詳述している。
●第 4章では、背景やイノベーション・ストラテジー、及び技術的ブレークスルー、さらに既存ビジネス
の調査を総合的に検討し、イノベーション・ストラテジーの方向性について考察している。
●第 5章では、技術戦略について述べている。現時点で有する技術プラットフォームの整理、不足してい
るポートフォリオ、プロトタイピング、今後の開発方針について整理している。
●第 6章では、知財戦略について述べている。自社の糖化酵素/タンパク質生産系の出願と、タンパク質
素材に関する他社の出願状況について整理し、今後の戦略立案を行っている。

2ページにわたる場合

氏名

1

新井俊陽

●第 7章では、事業戦略について述べている。後述する財務戦略について考察するためのターゲット及びビ
ジネスモデルを構築し、その上で事業環境分析と競争優位性について評価している。
●第 8章では、財務戦略について述べている。第 8章でのモデルに基づき財務・収益性の分析を行い、さら
に、財務計画をもとにした事業価値の評価を行っている。
第 9章では、イノベーション・ストラテジ一のまとめと、第 8章のモデルからさらに拡張した、将来的な

イノベーション・アイデアについて述べている。
0章では、本研究の成果をまとめた上で、本研究の波及効果について述べている。
●第 1
本研究はセルラーゼ生産菌であるトリコデルマについて,セルラーゼの代わりにグルコースを炭素源とし
て利用できる技術を開発したことに加え, 「発酵生産タンパク質そのものを素材として活用する」という新
たな循環型素材を提供するプラットフォームを提案し,産業化に向けた課題を解決するための重要な知見を
得たものとして価値ある集積である。提出された論文は科学技術イノベーション研究科学位論文評価基準を
満たしており,学位申請者の新井 俊陽は,博士(科学技術イノベーション)の学位を得る資格があると認
める。

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