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大学・研究所にある論文を検索できる 「ハイリスク妊娠で新生児標的スクリーニングに役立つ先天性サイトメガロウイルス感染症に関係する臨床・超音波所見」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ハイリスク妊娠で新生児標的スクリーニングに役立つ先天性サイトメガロウイルス感染症に関係する臨床・超音波所見

Imafuku, Hitomi 神戸大学

2021.01.20

概要

【目的】
サイトメガロウイルス(CMV)感染症は世界的にも頻度の高い母子感染症の一つである。先天性CMV(cCMV)感染児の約20%は胎児発育不全、低出生体重、中枢神経障害や多臓器障害などを有する症候性感染児であり、70~90%は難聴、精神運動遅延、言語発達遅延などの神経学的後遺症をもつ。また、無症候性であっても10~15%が進行性の感音性難聴や精神遅滞などの後遺症をきたす。

産科的合併症を有する妊娠では、産科的合併症のない妊娠と比してcCMV感染率が高いことが示されており、胎児発育不全(FGR)、低出生体重(LBW)、切迫早産、多胎の出生児の1~4%にcCMV感染がみられている。

新生児11,715人のスクリーニング検査を施行した前方視的研究では、25歳未満、先進国初産婦、高収入が初感染のcCMV感染のリスクであり、若年および未就業が非初感染のcCMV感染のリスクであったという報告されている。一般産科施設を対象とした最近の研究では、妊娠中の感冒様症状、妊娠第2三半期の切迫流早産がcCMV感染を予知する因子であると報告されている。しかし、この研究では妊娠高血圧症候群、重症FGR、多胎、胎児異常、入院を要する切迫流早産、34週未満の早産などのハイリスク妊娠は含まれていない。

そこで我々は、ハイリスク妊娠を多数扱う総合周産期施設において、新生児標的スクリーニングに役立つcCMV感染症に関係する臨床・超音波所見を調べる前向きコホート研究を行なった。

【方法】
本研究は倫理委員会の承認下、患者の同意を得て行った。2010年2月から2019年8月の間に神戸大学で出生し、尿CMVPCR検査を受けた新生児とその母体を対象とした。尿CMVPCR検査が陽性であった新生児には、cCMV感染による症状を精査した。

当院を受診した妊婦は、初診時、および定期健診時に、感冒様症状、出血、腹痛、子宮収縮感の有無を確認し、超音波で胎児推定体重を測定し、胎児形態異常の有無もチェックした。FGRは胎児推定体重が-1.5SD以下、小頭症は頭囲が・3.0SD以下、LFDは出生体重が10%タイル以下、LBWは出生体重が2,500g以下と定義した。

新生児尿は出生後1週間以内に採取し、PCR検査にてCMV感染を同定した。小頭症、肝牌腫、肝炎、血小板減少症、脳画像異常、網膜症、聴覚異常のいずれか1つでも認めたものを症候性感染とした。

妊娠22週までに受診した妊婦、および妊娠22週以降にcCMV感染を疑う胎児超音波異常を認めた妊婦は、血清のCMV・lgM、lgGの測定を行った。2013年9月以降は、母のインフォームドコンセントを得て、新生児に聴カスクリーニング検査を行った。

cCMV感染発生に関係する因子として、①母体年齢、②分娩回数、③妊娠中の発熱.感冒様症状の有無、④妊婦高血圧症候群の有無、⑤妊娠糖尿病の有無、⑥糖尿病の有無、⑦自己免疫疾患の有無、⑧甲状腺疾患の有無、⑨多胎の有無、⑩切迫流早産の有無、⑪FGRの有無、⑫胎児超音波異常の有無、⑬前置胎盤の有無、⑭妊娠37週未満早産の有無、⑮妊娠34週未満早産の有無、⑯分娩時週数、⑰帝王切開による分娩の有無、また新生児の①性別、②出生時体重、③LBWの有無、④lightfordateの有無、⑤心奇形の有無、⑥腎疾患の有無、⑦腸閉鎖症の有無、⑧染色体異常の有無、を収集し、解析した。

【結果】
本研究期間に4,380人の妊婦と4,613人の新生児が対象となった。4,380人の妊婦のうち、31.8%が産科合併症を有し、41.5%が内科合併症もしくは婦人科合併症を有し、26.1%が高齢妊娠、3.1%がCMV・lgM陽性もしくは疑陽性により紹介された。cCMV感染新生児は32人(0.69%)に発生し、20人が症候性感染児で、残りの12人は無症候であった。

児のcCMV感染を認めた妊婦(n=32)では児のcCMV感染を認めなかった妊婦(n=4,348)に比し、年齢は若く(29歳vs33歳p<0.01)、妊娠中の発熱・感冒様症状(59.4%vS21.5%,pK0.01)、FGR(25.0%vs6.9%,p<0.01)、FGRを含む超音波異常(59.4%vs7.3%,p<0.01)、妊娠37週未満早産(62.5%vs25.7%,p<0.01)、妊娠34週未満早産(34.4%vs9.5%,p<0.01)を有する割合が有意に高く、分娩時週数は有意に早かった(36週vs38週p<0.01)。CCMV感染児(n=32)はcCMV感染なし児(n=4,581)に比して有意に出生体重が軽く(2,252gvs2,830g,p<0.01)、LBWの割合が高かった(59.4%vs30.0%,p<0.01)。

児のcCMV感染を認めた割合は、感冒様症状を認めた妊婦の2.0%、FGRを認めた妊婦の2.6%、FGRを含む超音波異常を認めた妊婦の5.7%、妊娠37週未満早産の1.8%、妊娠34週未満早産の2.6%、低出生体重児の1.4%であった。

妊娠中の胎児超音波異常は、児のcCMV感染を認めた妊婦では、児のcCMV感染を認めなかった妊婦に比してFGR(25.0%vs6.9%,p<0.01)、室拡大(21.9%vs0.02%,p<0.01)、小頭症(12.5%vs0.7%,p<0.01)、室内石灰化(9.4%vs0%,D<0.01)、胸水(3.1%vS0.07%,p<0.05)、腹水(25.0%vs0.09%,p<0.01)、肝腫(34.4%vs0.05%,p<0.01)、腸管高輝度(18.8%vs0.05%,p<0.01)の割合が有意に高かった。

児のcCMV感染あり群となし群で臨床因子について単変量ロジスティック回帰分析を行ったところ、母体年齢25歳未満(オッズ比(OR),3.795%倍頼区間(95%CI),1.6-8.5;p<0.001)、妊娠中の発熱・感冒様症状(OR,5.3;95%CI,2.6-10.8p<0.01)、EGR(OR4.5,95%CI2.0-10.1;p<0.01)、FGRを含む胎児超音波異常(OR18.6,95%CI9.1-38.1;pc0.01)、妊娠34週未満早産(OR5.0,95%CI2.4-10.4;p<0.01)、LBW(OR3.8,95%CI1.9-7.8;p<0.01)がcCMV感染発生に関連する因子として選択された。多変量解析では、母体年齢25歳未満(OR2.7,95%CI1.1-6.6;pc0.05)、妊娠中の発熱・感冒様症状(OR5.4,95%CI2.6-11.2;p<0.01)、FGRを含む胎児超音波異常(OR12.7,95%CI5.8-27.7;p<0.01)、妊娠34週未満早産(OR2.6,95%CI1.1-6.0;p<0.05)が総合周産期施設におけるcCMV感染発生に関連する独立した臨床因子として選択された。

さらに、cCMV感染発生の予測に最も適した組み合わせをYoudenIndexを用いて調べた。妊娠中の発熱・感冒様症状、FGRを含む胎児超音波異常、もしくは妊娠34週末満早産のいずれかを認めた場合のcCMV感染発生は、感度90.6%、特異度66.4%、陽性的中率1.9%、陰性的中率99.9%、正診率66.6%で、YoudenIndex0.57で最大となり、cCMV感染発生を予測するのに最適な組み合わせであった。

32人の先天性CMV感染児のうち、6人はCMV非初感染母体(CMVIgG陽性、CMVlgM陰性)からの出生であったと推察され、2人が症候性であった。残り26人の先天性CMV感染児は、母体のCMVIgM陽性が確認されており、CMV初感染母体から出生したと推察され、うち18人が症候性であった。

2013年9月から2019年8月に生まれた児は聴覚スクリーニング検査が実施され、cCMV感染児で非感染児に比して有意に聴覚異常の割合が高かった(44.4%VS2.5%,p<0.01)。

【考察】
ハイリスク妊娠を扱う総合周産期施設における前向き研究において、母体年齢25歳未満、妊娠中の発熱.感冒様症状、FGR、胎児超音波異常、早産、LBW、低出生体重、新生児聴覚異常が、cCMV感染発生に関連する臨床因子であった。また、母体年齢25歳未満、妊娠中の発熱・感冒様症状、FGRを含む胎児超音波異常、妊娠34週未満早産がcCMV感染発生を予測するのに有用な独立した臨床因子であり、妊娠中の発熱.感冒様症状、FGRを含む胎児超音波異常、もしくは妊娠34週未満早産のいずれかを認めた場合がcCMV感染発生を予測するのに最滴な組み合わせであることも明らかにした。妊娠中にこれらの所見を認めた際は、母体の血清CMV-IgG/IgM検査および児の尿CMV-DNA検査をすべきであり、LBWや聴覚異常を認める新生児にも尿CMV検査をすべきである。児のcCMV感染を早期に発見し、早期に抗ウイルス治療を行うことが、児の神経学的予後の改善につながる。

妊娠中の発熱・感冒様症状が独立した先天性CMV感染のリスク因子であることはこれまでにも報告されており、これは母体のCMV初感染、もしくは再感染を示唆すると考えられる。34週未満の早産も独立・した先天性CMV感染のリスク因子であった。これまでに37週未満の早産や一般産科病院での切迫流早産が先天性CMV感染のリスクとして報告されており、切迫流早産の重症例が総合周産期施設に搬送されていると思われる。CMVの子宮感染により、早産が惹起されているのかもしれない。

本知見はハイリスク妊婦が多い集団における研究結果であり、他の妊婦集団での追加研究が望まれる。

【結論】
ハイリスク妊娠では、新生児標的スクリーニングに役立つ先天性CMV感染症に関係する臨床所見は、妊娠中の発熱.感冒様症状、FGRを含む胎児超音波異常、妊娠34週未満早産である。これらの所見があった妊婦の新生児、およびLBWや聴覚異常がある新生児に尿CMV-DNA検査を行うべきである。

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