リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Case-control study of postprocedural arterial puncture site hemorrhage after neuroendovascular treatment」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Case-control study of postprocedural arterial puncture site hemorrhage after neuroendovascular treatment

玉利, 洋介 名古屋大学

2021.07.20

概要

【緒言】
 血管内治療の頻度は低侵襲手術として世界中で増加している。穿刺部位の多くは総大腿動脈である。総大腿動脈へのカテーテル操作に関連する穿刺部出血は、患者の 5〜10%に合併症として発生し、後腹膜出血や外科的修復を必要とする致命的な仮性動脈瘤を引き起こす可能性がある。大腿動脈のカテーテル誘導後の標準止血法の用手圧迫に加え、止血デバイスが開発され、複数のメタ解析で良好な安全性と有効性が報告されている。しかし、入院安静と新しい止血デバイスを使用しても穿刺部出血は起こりうる。この症例対照研究の目的は、脳血管内治療後の穿刺部動脈性出血の予測因子を同定することである。

【対象及び方法】
 対象は 2014 年 4 月から 2016 年 2 月の 23 ヶ月間に当院の脳血管内治療で逆行性経大腿動脈穿刺を施行した 255 例を後方視的に検討した(Table1)。術後の穿刺部出血は、 血腫形成後に一度止血が得られた後の動脈性出血と定義した。出血群 15 例と非出血 群 240 例に分類し、術後抗凝固薬、術直後 activated clotting time(ACT)、抗血小板薬数、 血小板反応性、シースサイズ、止血方法及び手術時間の因子を 2 群間で比較した。血 小板反応性は VeryfyNow system(Accumetric Inc、San Diego、CA、USA)を用い、aspirin- reaction unit(ARU)、P2Y12 reaction unit(PRU)を術前に測定した。High on-treatment platelet reactiveity(HPR)は ARU550 以上、PRU213 以上と設定した。HPR の症例には dual antiplatelet therapy(DAPT)に加えてシロスタゾール 200mg を追加投与した。止血方法は 用手圧迫または止血デバイスを使用した。止血デバイスは 6Fr/7Fr Exoseal(Cordis Corporation、Miami Lakes、Florida)または 6Fr/8Fr Angioseal(Terumo Interventional Systems、 Aomerset、NJ)を使用した。シースを抜去する直前の ACT が 300 秒以上、3 剤の抗血小 板薬の併用、術後ヘパリン化及びシースサイズが 7Fr 以上の患者について、多変量ロ ジスティック回帰分析を行った。
 カテゴリー変数は Fisher’s Exact Test、連続変数は Mann-Whitney Test を用いて評価した。p 値<0.05 を有意差ありと判断した。統計学的検討には、EZR(Saitama Medical Center、Jichi Medical University、Saitama, Japan、version 1.35)を使用した。

【結果】
 穿刺部出血は 255 例中 15 例(5.9%)に認めた。年齢、性別、body mass index(BMI)、糖尿病、高血圧、心血管疾患、末梢血管疾患、腎機能及び造影剤に関しては、出血群と非出血群との間に有意差は認めなかった。術後にヘパリンを投与された患者は、ヘパリンを投与されなかった患者に比べて有意に出血が多かった(13.2% vs 3.6%; p<0.05)。シースを抜去する直前の ACT が 300 秒以上の患者は、300 秒未満の患者に比べて有意に出血が多かった(13.2% vs 4.0%; p<0.05)。triple antiplatelet therapy(TAPT)では、DAPT 以下と比べ有意に出血が多かった(17.4% vs 4.7%; p<0.05)(Table2、Table3)。 PRU95 未満、シースサイズ、止血方法、手術時間においては有意な差を認めなかった(Table2)。多変量解析より、シースを抜去する直前の ACT が 300 秒以上と術後ヘパリン化は術後穿刺部動脈性出血の独立した危険因子であった(Table3)。脳血管内治療方法による統計学的有意差は認めなかった(Table4)。

【考察】
 出血性合併症の発生率は、0.63〜9.7%と報告されている。脳血管内治療の合併症として穿刺部出血の報告は少ない。Sato らは、脳血管内治療における穿刺部合併症の頻度は、術中のヘパリン投与と術前の多剤抗血小板薬投与を行った症例で高いと報告している。
 Exoseal の有効性と安全性を検討した 7F ECLIPSE 試験では、ACT 300 秒以上は除外基準であり、Exoseal の添付文書には、シース抜去直前の ACT が 300 秒以上の安全性は確立されていないと記載されている。今回の検討では、シースを抜去する直前の ACT が 300 秒以上の患者は穿刺部出血の危険性が高く、予防目的の介入の必要性を示唆している。
 Hwang らは、HPR の症例において TAPT は、重大な穿刺部出血はないが微小出血や局所血腫形成に関連すると報告している。今回の検討では、TAPT は、DAPT 以下に比べ有意に穿刺部出血が多かったが、多変量解析では、TAPT の有意な穿刺部出血の増加は認めなかった。
 ADAPT—DES 試験は、Low on-treatment platelet reactiveity(LPR)として PRU が 95%未満の患者は、出血危険度が有意に増加すると報告している。しかし、今回の検討では穿刺部動脈性出血の増加は認めなかった。ADAPT—DES 試験は、出血をヘモグロビン値が 3g/dl より大きい低下、輸血の投与、外科的手術が必要または後腹膜出血と定義している。これは、血管穿孔や解離のような術中の手技的失敗の症例が多く含まれると考えられる。我々は、術中の穿刺部出血を除外し手技的失敗のない危険因子に注目している。この相違が、LPR と出血の関連性にも影響していると推察される。
 今回の検討では、術後にヘパリンを投与した患者は、出血率が有意に増加した。一方、Enomoto らは、術後抗凝固療法を行った患者と行わなかった患者は、脳血管内治療による穿刺部合併症率は同等であったと報告している。筆者らは、術後抗凝固療法を行った患者で出血性合併症が少なく虚血性合併症が多いことから、術中の出血または虚血性合併症の発生に術後抗凝固薬使用は影響を受けていると考察している。今回の検討では、術中の穿刺部合併症は除外しており、術後のヘパリン投与の効果をより正確に反映している可能性がある。ヘパリンは抗トロンビン活性を有し、患者間のばらつきが大きく投与量による効果を正確に予測することは困難である。一方、アルガトロバンは L-アルギニン由来の合成直接トロンビン阻害薬であり、投与後 2 時間以内に用量依存性の定常状態に達すると報告されている。今回の研究では、アルガトロバンを投与した患者は、術後の穿刺部動脈性出血の有意な増加は認めなかった。ヘパリンを使用する場合は、術後のシース抜去直前の ACT が 300 秒未満であることを確認し、周術期の凝固能を日常的に観察することが必要と考える。もし実施できなければ、アルガトロバンは術後の抗凝固療法として考慮される可能性がある。
 シースサイズは、術後の穿刺部動脈性出血との有意な相関は認めなかった。最近の研究で、止血デバイスの使用と用手圧迫は、穿刺部出血率に有意差はないと報告されている。止血デバイスの適応のあるシースより大きいシースにも一部使用したが、適応の有無で出血率に有意差は認めなかった。止血方法は、穿刺部出血に関連する因子ではないと考えられた。
 急性心筋梗塞を対象とした研究では、高齢、女性、低体重及び腎機能障害が有意に出血を増大させた。一方、Nishi らは、脳血管内治療後の major bleeding は高齢、性別、低い体表面積とは関連はなかったと報告している。今回の検討では、年齢、女性及び BMI は術後の穿刺部動脈性出血の危険性の増加に関連を認めなかった。動脈硬化や小径血管に対し、合併症予防のため穿刺部位の変更や小口径へのシースサイズの使用を行っているためと考えられる。腎機能障害は、ヘパリンの薬物動態に影響を与え、 Moscucci らは、major bleeding の危険性の増加に関連すると報告している。今回の検討では、推定糸球体濾過率は出血群で低値であったが、統計学的に有意差は認めなかった。術後の穿刺部動脈性出血のうち、major bleeding の割合は低く、腎機能障害は術後の穿刺部出血と関連していない可能性がある。

【結論】
 本研究は、脳血管内治療後の穿刺部出血の危険因子を検討した。術後のシース抜去直前の ACT300 秒以上、術後のヘパリン投与及び 3 剤の抗血小板薬投与は、穿刺部出血の危険性増加との関連性が示唆された。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る