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Differences in prothrombotic response between the uninterrupted and interrupted apixaban therapies in patients undergoing cryoballoon ablation for paroxysmal atrial fibrillation: a randomized controlled study

Ando, Monami 安藤, 萌名美 名古屋大学

2020.01.07

概要

【緒言】
 心房細動(AF)に対する肺静脈隔離は効果的な治療法として広く受け入れられている。高周波カテーテルアブレーションが標準的な治療であるが、クライオバルーン(CB)を用いた治療も最近では普及してきている。AFに対するカテーテルアブレーション周術期においては、脳梗塞や全身血栓塞栓症予防に抗凝固療法が必須である。現在では血栓塞栓性合併症を最小限に抑えるためにワルファリンの継続投与が推奨されている。更に最近では直接抗凝固薬(DOAC)においてもアブレーション周術期に継続投与の可能性が報告されており、直接第Xa因子阻害薬であるアピキサバンはモニタリングが不要で、アブレーション患者でも広く使われるようになってきている。しかし、CBアブレーション周術期については異なる抗凝固療法のストラテジーで合併症リスクを評価した報告はまだ少ない。
 そこで本研究では、CBアブレーション周術期におけるアピキサバンの休薬と無休薬での血栓形成反応の違いを血栓塞栓症イベントの評価に有用なマーカーのひとつであるD-ダイマー値に基づいて比較検討を行った。

【対象及び方法】
 本研究は無作為化非盲検試験である。2014年7月から2017年2月の間に名古屋第二赤十字病院でCBアブレーションを予定した連続97例の発作性心房細動(PAF)患者を対象とした。低用量アピキサバンまたは他の抗凝固薬内服中の患者、年齢20歳未満または85歳以上、心内血栓を有する患者、コントロール不能な心不全患者、人工弁術後または血行動態に関与する弁膜症を有する患者、進行した肝疾患のある患者、高度腎機能障害のある患者、アブレーション手技の禁忌に当たる患者は除外した。
 対象患者をアピキサバン無休薬群(グループ1、32例)とアピキサバン休薬群(グループ2、65例)にブロック無作為化法を用いて1:2の比率で割り付けた。
 当院からの以前の報告に基づき、D-ダイマー値0.2μg/mLの差を検出するために必要なサンプルサイズを推定した。
 アピキサバンは手術4週前より通常容量(1回5mg、1日2回投与)内服とした。休薬群では術当日朝の内服1回分を休薬とし、術後は通常容量で内服再開とした。アブレーション中はシース挿入時にヘパリン100単位/kgをボーラス投与した後、20分毎に活性化凝固時間(ACT)を測定し、ACT300~350秒を維持するようにヘパリンを追加した。
 アブレーションの手技については28mmの第二世代CBを使用し、1回3分間の冷凍を行った。1回で肺静脈隔離ができなかった場合は再度3分間の冷凍を施行し、CBで隔離できない場合は冷凍カテーテルによるタッチアップアブレーションを施行した。術直前、術直後、24時間後、48時間後にD-ダイマー値を測定し両群で比較した(Figure 1)。
 主要評価項目はD-ダイマー値で示される血栓形成反応の違い、副次的評価項目は出血、血栓塞栓症の発症とした。大出血の定義はISTH出血基準を用いた。小出血は介入を必要としなかった穿刺部血腫または心嚢液貯留と定義し、血栓塞栓症は症候性虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、全身塞栓症と定義した。アブレーションセッションの開始から術後30日までに発症したものを合併症と定義した。

【結果】
 患者背景をTable 1に示す。平均年齢は66.7±10.3歳、75例(77.3%)が男性であった。両群間でのベースライン特性には有意差は認められなかった。
 アブレーション手技は全患者で問題なく完了した。アブレーション手技の所見をTable 2に示す。手技時間は121.9±18.2分と128.5±23.2分(p=0.17)で透視時間は24.5±8.2分と26.3±6.3分(p=0.12)で有意差はなかった。
 周術期の合併症をTable 3に示す。出血合併症の出現率は両群間(グループ1 vs. グループ2)で有意差がなかった(大出血:3.1% vs. 1.5%; p=0.61、小出血:3.1% vs. 4.6%; p=0.73)。大出血の詳細としては、心タンポナーデがグループ2の患者で1例(1.5%)発生した。プロタミンでヘパリンを拮抗させたが輸血の必要はなく回復した。また、グループ1の患者で1例(3.1%)外科的介入を必要とする血管合併症が発生した。穿刺部位での難治性出血に対してアブレーション翌日に右大腿静脈枝の外科的結紮を施行したが、輸血は不要であった。小出血としては、穿刺部位の血腫がグループ1で1例(3.1%)、グループ2で3例(4.6%)発生した(p=0.73)。両群とも血栓塞栓症の発症は認めなかった。
 D-ダイマー値は両群とも術後に上昇が見られた。しかしながら、アブレーション24時間後と48時間後のD-ダイマー値では、休薬群(グループ2)は無休薬群(グループ1)と比較して有意に上昇が見られた(24時間後:0.58±0.16から0.98±0.42μg/mL vs. 0.58±0.20から0.84±0.23μg/mL; p=0.01、48時間後:0.58±0.16から1.01±0.42μg/mL vs. 0.58±0.20から0.82±0.25μg/mL; p=0.01)(Table 4)。グループ2では術後48時間にわたってD-ダイマー値が上昇し続けたのに対し、グループ1ではD-ダイマー値は24時間後でピークを迎えた(Figure 2)。ベースライン(アブレーション直前; T1)からアブレーション後24時間および48時間までのD-ダイマー値の増加率はグループ2よりもグループ1で有意に小さかった(+47.1±31.6% vs. +68.0±44.6%; p=0.03、+46.6±34.8% vs.+73.3±72.0%; p=0.02)(Figure 3)。

【考察】
 本研究はPAFに対するCBアブレーション周術期の血栓形成反応を特定の凝固系バイオマーカー、すなわちD-ダイマー値に基づいてアピキサバン休薬群と無休薬群で比較した最初の無作為化試験であると考えられる。通常容量のアピキサバン休薬群および無休薬群共にCBアブレーション周術期の合併症は少なく有意差は認めなかったが、術後24時間と48時間のD-ダイマー値の増加率は無休薬群で有意に低い結果が示された。この結果はアピキサバン休薬群では無休薬群と比較しアブレーション周術期に過凝固になるリスクがあることを示唆している可能性がある。突然の抗凝固薬中断が予期せぬ血栓塞栓イベント発生につながるリバウンド現象が報告されている。この現象はワルファリンやヘパリンの中断で起こることが知られているが、アピキサバンでも同様の現象が報告されている。これを踏まえて無休薬アピキサバン療法はアブレーション周術期に過凝固になるリスクを低減し、無症候性脳塞栓症の発生に関与する血栓形成を減少させる可能性があると考えられた。
 本研究ではD-ダイマー値で表される血栓形成傾向と磁気共鳴画像で検出される無症候性イベントの相関は直接評価していない。更に、本研究は単一施設での研究で対象人数が少ない。本研究のサンプルサイズは臨床的な合併症率の差ではなくD-ダイマー値の差を検出することに基づいて算定しており、二群間の臨床的な合併症イベントの差を評価するには不十分である。今後無症候性脳塞栓症の発生検出も含めた前向き無作為化多施設共同研究が必要である。

【結論】
 PAFに対するCBアブレーション周術期の無休薬アピキサバン療法は出血のリスクを増加させることなく、術後に過凝固状態となるリスクを軽減する可能性があると考えられた。

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