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大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒト多能性幹細胞由来腸管オルガノイドにおける代謝機能評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ヒト多能性幹細胞由来腸管オルガノイドにおける代謝機能評価

佐々木 健吾 東北大学

2020.03.25

概要

【研究背景】
経口薬の多くは小腸で吸収され、同時に代謝・排泄の過程も受ける。小腸は経口薬の薬物動態、薬物相互作 用の場として重要な臓器であるが、これらを十分正確に予測できる方法はこれまでなかった。このような中、国立成育医療研究センターにおいて、多能性幹細胞から腸管オルガノイドを作成する新しい方法が開発され、 in vitro でヒト小腸の代謝を再現する実験ツールとしての利用が期待される。本研究は、iPS 細胞からこの 腸管オルガノイドを作成し、小腸の薬物動態に大きく関与する 2 つの代謝酵素、cytochrome P450 (CYP) と carboxylesterase (CES) について評価した。

【研究目的】
腸管オルガノイドにおける代謝機能を評価し、in vitro の消化管代謝の実験モデルとしての有用性を検討する。

【材料・方法】
国立成育医療研究センターで開発された方法によって iPS 細胞から腸管オルガノイドを作成し、評価実験に使用した。CYP の評価においては、a. 腸管オルガノイド、Caco2 細胞、ヒト成人正常小腸組織における小腸の代表的なCYP の定量Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction (RT-PCR) による評価、b. 腸管オルガノイドとヒト成人正常小腸組織における CYP 3A4 の免疫組織化学染色、c. 腸管オルガノイド、 Caco-2 におけるリファンピシン添加による pregnane X receptor (PXR) と CYP 3A4 の定量 RT-PCR による発現誘導評価、d. 7-benzyloxy-4-trifluoromethylcoumarin (BFC) のCYP 3A4 による代謝産物 7-hydroxy-4-trifluoromethylcoumarin (HFC) の定量測定による腸管オルガノイドと HepaRG における CYP 3A4 の代謝活性の評価を行なった。

CES の評価実験として、腸管オルガノイド、Caco-2、ヒト成人正常小腸組織において、CES 1 と CES 2 の a. 定量 RT-PCR、b. 免疫組織化学染色を行なった。

【実験結果】
CYP 3A4、CYP 3A5、CYP 2C9、CYP 2C19、CYP 2D6 の発現は、腸管オルガノイドではヒト小腸のそれぞれ 3.7×10-1±4.7×10-2 倍、3.8×10-1±9.4×10-2 倍、3.5×10-1±3.7×10-2 倍、5.5×10-1±1.1×10-1 倍、 4.7×10-2±1.0×10-2 倍、Caco-2 ではそれぞれ 7.8×10-4±4.7×10-4 倍、4.1×10-3±6.2×10-4 倍、4.1×10-3 ±7.0×10-4 倍、1.4×10-2±2.9×10-3 倍、1.8×10-3±9.6×10-5 倍の発現であった。CYP 3A4 の免疫組織化学染色では、腸管オルガノイドにおいて、ヒト小腸と同様に、腸上皮細胞の細胞質に同程度の染色を認めた。リファンピシンによる CYP 3A4 誘導実験では、腸管オルガノイドにおいて PXR と CYP 3A4 の発現は、それぞれ 8.7 倍、10 倍の有意な増加を認めた 。一方、Caco-2 では、それぞれ 1.2 倍、2.3 倍の増加であり、有意な増加では認めなかった。HFC の測定による代謝活性測定では、腸管オルガノイド、HepaRG においてそれぞれ 1.6×103±1.3×102 pmol/min/mg protein、4.0×102±7.6 pmol/min/mg protein であり、腸管オルガノイドで有意に高い代謝物が産生された。

CES の遺伝子発現、CES 1 は腸管オルガノイド、Caco-2 において、それぞれヒト小腸の 1.4±1.5×10-1 倍、1.8×10±2.5 倍、CES 2 はそれぞれ 7.9±2.8 倍、4.1×10-1±1.3×10-1 倍の発現を認めた。免疫組織化学染色では、腸管オルガノイドの腸上皮細胞の細胞質に、CES 1 は弱く、CES 2 は強く染色され、ヒト小腸と同様の所見を認め、一方、Caco-2 は CES 1 が強く染色され、CES 2 はほとんど染色されなかった。

【結論】
本研究では、国立成育医療研究センターで開発された方法で作成した腸管オルガノイドが、これまでの報告された腸上皮様細胞より、小腸に近い代謝機能を再現していることが示され、小腸の薬物代謝を in vitro で再現する実験系として利用できる可能性が示唆された。

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