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大学・研究所にある論文を検索できる 「慢性骨髄性白血病における血中循環腫瘍 DNA を用いた全エクソームシークエンスの臨床的有用性の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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慢性骨髄性白血病における血中循環腫瘍 DNA を用いた全エクソームシークエンスの臨床的有用性の検討

武井, 智美 東京大学 DOI:10.15083/0002007015

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 武井 智美
本研究は、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia: CML)の遺伝子解析におい
て、臨床腫瘍領域で低侵襲に包括的な遺伝子解析ができるバイオマーカーとして注目され
ている血中循環腫瘍 DNA(circulating tumor DNA: ctDNA)の有用性を初めて検討した
ものであり、下記の結果を得ている。
1. CML 患者 13 例から、腫瘍検体として、骨髄 13 検体、髄外腫瘤 1 検体、末梢血 1 検
体、腫瘍検体と同時期に採取した ctDNA 14 検体を採取し、全エクソームシークエン
ス (whole exome sequencing: WES)を行った。解析結果から CML の進行に関連す
ると考えられるがん関連遺伝子変異を同定し、腫瘍検体と対応する ctDNA の結果を比
較検討した。この結果、骨髄検体から ABL1 キナーゼドメイン変異 3 検体、 ASXL1
変異を 5 検体、SETD2 変異を 1 検体から検出し、合計 9 の遺伝子変異を同定した。こ
れら 9 の遺伝子変異は、全て対応する同時期に採取した ctDNA からも検出し、変異遺
伝子の variant allele frequency (VAF) に強い相関関係を認めた(R2 = 0.812752)。こ
のことから、ctDNA を用いたがん関連遺伝子変異解析は、CML においても骨髄検体
と同等の結果を得られる事が示唆された。
2. 骨髄生検 FFPE 検体を使用した 1 症例については、WES の結果 TP53 変異を骨髄検
体では検出せず、ctDNA からのみ検出したが、同変異の ddPCR アッセイを作成し解
析を行った結果、骨髄にも同変異が存在している事を確認した。これは骨髄生検
FFPE から抽出した DNA が、WES 解析を行うにはクオリティが低く、変異を検出で
きなかったためと考えられた。進行期 CML では骨髄が dry tap となり骨髄生検が必要
となる事も少なくなく、通常の骨髄穿刺による骨髄液吸引による検体採取よりも採取
量や DNA の収量が限られるため、WES 解析を行う為に必要な検体量を確保する事が
難しいと考えられる。このような例では、ctDNA を骨髄の代替として解析に用いる事
で、非侵襲的により高いクオリティで包括的な遺伝子変異解析を行う事ができる可能
性が示唆された。
3. 中枢神経髄外腫瘤として再発した 1 症例については、髄外腫瘤生検検体から ABL1、

WT1、IKZF1、GATA2 の 4 変異を検出したが、対応する ctDNA、末梢血からは同変
異を検出できなかった。この原因として、脳血液関門のため血漿からは解析に必要量
の ctDNA を検出できなかったためと推測され、今後脳脊髄液由来の ctDNA による解
析の検討を行う必要があると考えられた。
4. ABL1 変異の有無、ABL1 以外のがん関連遺伝子の有無、WES を施行した検体を採取

した時点での臨床病期による OS の比較では、遺伝子変異を持つ症例、進行期の症例
で、plot 上は OS が低くなる傾向を認めたが、有意差は認めなかった。一方 PFS の比
較において、ABL1 変異を持つ症例は、変異を持たない症例と比較し有意に PFS が低
かった(p=0.012)
。ABL1 以外のがん関連遺伝子を持つ症例は plot 上 PFS が低くな
る傾向を認めたが、有意差は認めなかった。また、検体を採取した時点での臨床病期
による PFS の比較では、plot 上は進行期症例よりもむしろ CP 症例の方が低い傾向を
認めた。この事から、NGS 施行時の ABL1 変異の有無は、臨床病期よりも予後の推測
において優れている可能性が示唆され、ABL1 以外のがん関連遺伝子変異について
も、症例数が不足していたため有意差を検出できなかった可能性が高く、ABL1 キナ
ーゼドメイン変異以外のがん関連遺伝子変異を含めた包括的な遺伝子解析を行い、症
例を蓄積する必要があると考えられた。
以上、本論文は CML 患者の ctDNA を用いた WES 解析において、骨髄・腫瘍検体と同
等の解析結果を得られ、特に dry tap のため骨髄生検が必要となる際に ctDNA を骨髄の
代替として用いる事も可能であることを明らかにした。この成果により、非侵襲的に繰り
返し検体を採取可能な ctDNA を用いて、骨髄検体を用いた際と同等の包括的な遺伝子解
析が可能となる事が示唆され、本研究は CML の予後予測や、治療戦略、遺伝子変異の意
義についての知見の蓄積において貢献を成すと考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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