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大学・研究所にある論文を検索できる 「U(1)(μ-τ) gauge symmetry and its phenomenology」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

U(1)(μ-τ) gauge symmetry and its phenomenology

浅井, 健人 東京大学 DOI:10.15083/0002006637

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

浅 井 健



本論文は8章からなり第5、6、7章が主題である。第1章はイントロダクションであ
り、本博士論文の研究対象である U(1)Lμ−Lτゲージ対称性を含む新物理模型の背景について
述べられている。第2章では U(1)Lμ−Lτ模型を議論するのに必要な基礎的事項、および標準
宇宙論のレビューが与えられている。第3章では第7章で重要となる WIMP 暗黒物質のレ
ビューが与えられている。第4章では第6章で重要となる宇宙の物質反物質非対称性の起
源、特に右巻きニュートリノの崩壊による物質反物質非対称性生成機構であるレプトジェ
ネシスについてのレビューが与えられている。第8章では全体のまとめがなされている。
主題の一つである第5章では U(1)Lμ−Lτ模型におけるニュートリノ質量のフレーバー構
造およびニュートリノ振動パラメータへの予言についての議論がなされている。U(1)Lμ−Lτ
模型では U(1)Lμ−Lτゲージ対称性によりレプトンの湯川相互作用および右巻きニュートリ
ノ質量行列が非常に制限されている。この章の議論によって U(1)Lμ−Lτゲージ対称性を自発
的に破るヒッグス場が一つしか存在しない最小模型においてはニュートリノ混合角と
Dirac CP 位相およびニュートリノ質量和の間に強い相関があることが示された。その結果、
将来の質量和の観測、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊、ニュートリノ振動パラメ
ータの精密測定によって最小 U(1)Lμ−Lτ模型が検証可能であることを示した。なお本章の結
果は U(1)Lμ−Lτゲージ対称性の破れのスケールには依存しない普遍性のある結果であり、最
小 U(1)Lμ−Lτ模型の検証において重要な結果である。
第6章では最小 U(1)Lμ−Lτ模型におけるいわゆる比熱的レプトジェネシス機構による宇
宙の物質反物質非対称性の生成についての議論がなされている。比熱的レプトジェネシス
機構では右巻きニュートリノがインフレーションを引き起こすインフラトン場の崩壊によ
って生成されるシナリオになっている機構で、本章では比熱的レプトジェネシス機構と矛
盾しないインフレーション模型の具体的な提案もなされている。上述のように最小 U(1)Lμ
−L τ

模型ではレプトンの湯川相互作用や右巻きニュートリノ質量行列が非常に制限されて

おり、CP の破れのパラメータ間に強い相関がある。その結果本章の議論から現在 T2K 実
験で示唆されている Dirac CP 位相と最小 U(1)Lμ−Lτ模型における比熱的レプトジェネシス
機構で生成される物質反物質非対称性の符号が整合していることを示した。Dirac CP 位相
の測定は今後のニュートリノ実験の大きな目標の一つであり、その測定によって最小 U(1)L
μ−Lτ

模型におけるレプトジェネシスが部分的にではあるが検証可能であるということを示

したことは重要である。
第7章は U(1)Lμ−Lτ模型を用いた軽い暗黒物質模型の提案となっている。現在宇宙の小規
模構造の観測の進展などから GeV 程度以下の質量を持つ暗黒物質の可能性に興味が持た

れている。しかしながらそのような軽い暗黒物質の場合、現在観測されている暗黒物質質
量密度を自然に説明することは一般に難しい。特に WIMP 暗黒物質のように熱的に生成さ
れて対消滅した後の残存量で質量密度を説明する機構は宇宙背景放射の観測からの厳しい
制限によって GeV 程度以下の暗黒物質に適応することが難しい。しかし本章の議論によっ
て GeV 程度以下の暗黒物質の対消滅先が U(1)Lμ−Lτゲージ粒子であれば最終的に暗黒物質
のエネルギー密度の殆どがニュートリノに持ち去られるため、WIMP に対する宇宙背景放
射からの制限を逃れられることを示した。さらに暗黒物質が持つ U(1)Lμ−Lτ電荷がレプトン
の電荷の大きさよりも大きい場合暗黒物質の残存量とμ中間子の異常磁気能率の実験と標
準模型の乖離の問題を同時に解決可能であることを示した。さらに本章では、この暗黒物
質模型の Super-Kamiokande や Hyper-K 実験による検証可能性も議論されている。本章
の結果は U(1)Lμ−Lτ模型に対する新たな動機付を与えるものであり今後の発展につながる
と期待される。
なお、本論文第5章は津村氏(九州大)・永田氏(東京大)・濱口氏(東京大)・Tseng 氏(東京
大)との共同研究、第6章は永田氏(東京大)・濱口氏(東京大)・Tseng 氏(東京大)との共同研
究、第7章津村氏(九州大)・大川氏(Victoria 大学との共同研究をもとにしている。これら
の共同研究は、論文提出者が主体となって進めた研究であり、論文提出者の寄与が十分で
あると判断する。
従って、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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