イオン温度異方性による非線形プラズマ不安定性のシミュレーション
概要
研究目的 (Research Objective):
地球内部磁気圏の磁気赤道域において、数 Hz 帯に電磁イオンサイクロトロン(EMIC)ライジングトーン放射と呼ばれる新たなプラズマ波動放射現象が CLUSTER 衛星により観測された[Pickettetal.,GRL,2010]。その後、あけぼの衛星、THEMIS 衛星でも EMICトリガード放射が多数観測されている。この EMIC ライジングトーン放射は、ホイッスラーモードコーラス放射と同様に強い非線形波動粒子相互作用によって周波数上昇を伴う EMIC 波として観測される。この波動の存在により、内部磁気圏における高エネルギーのプロトンの生成や散乱、及び相対論的電子の消失に大きく関わっていることがこれまでの理論シミュレーション研究により明らかになりつつあるため、あらせ衛星や Van Allen Probes をはじめとした内部磁気圏衛星観測ミッションにおいても重要な観測対象となっている。本研究の目的は、 A-KDK システムを利用した大規模計算によって、これらの次世代衛星観測に先立ち非線型 EMIC 放射による非線形波動粒子相互作用を再現し、内部磁気圏プラズマ環境へのインパクトを明らかにすることである。本稿では、 EMIC ライジングトーン放射により低ピッチ角プロトンが高ピッチ角に散乱される様子をテスト粒子計算で明らかにしたもの、及びその結果として別のライジングトーン放射が励起するためのエネルギー源になり得ることを示す。