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1-O-hexadecyl-2-azelaoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(azPC)はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γを介して近位尿細管ナトリウム再吸収を亢進させる

水野, 智仁 東京大学 DOI:10.15083/0002007030

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 水野 智仁
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ (PPARγ) 内因性リガンドの作用は多岐にわ
たるが、近位尿細管での生理的な意義は不明である。本研究は、チアゾリジン誘導体
(TZDs) が近位尿細管ナトリウム再吸収を亢進させる点に着目し、酸化リン脂質の一つ
で、PPARγの有力な内因性アゴニストである 1-O-hexadecyl-2-azelaoyl-sn-glycero-3phosphocholine (azPC) が近位尿細管ナトリウム輸送へ及ぼす影響を調べることで、粥状
硬化症に伴う高血圧発症の一機序の解析を試みたものであり、下記の結果を得ている。
1. 単離近位尿細管の管腔を露出させた状態で、灌流液中のナトリウム濃度を 144 mM か
ら 0 に急速に変化させた際の初期細胞内 pH 変化速度を解析することで、C57BL/6 マ
ウス(雄)の管腔測 NHE 活性の評価を行った。その結果、azPC 添加の有無でマウス
の管腔測 NHE 活性に差を認めなかった。これは、既報の TZDs における結果と同様
であった。
2. Wistar ラット(雄)の単離近位尿細管における NHE 活性を、同様に評価したとこ
ろ、azPC は濃度依存性に、NHE 活性を亢進させた。次に、azPC によるこの作用が
NHE 由来であることを裏付けるために、NHE 阻害剤である EIPA が、この azPC に
よる活性亢進作用を完全に抑制することを証明した。さらに、NHE1 阻害剤である
cariporide が、azPC による NHE 活性亢進作用に影響を及ぼさないという結果を得る
ことで、azPC は、ラットの管腔測 NHE 活性を亢進させることを示した。
3. azPC によるラットの管腔側 NHE 活性亢進作用は、PPARγ特異的アンタゴニストで
ある GW9662 で完全に抑制された。さらに、si-scramble あるいは anti-PPARγ
siRNA (si-PPARγ) で処理した培養単離近位尿細管を使用して、PPARγ特異的遺伝
子発現抑制の影響を解析したところ、si-scramble で処理した培養単離近位尿細管では
azPC による NHE 活性亢進作用を認めたが、si-PPARγで処理した培養単離近位尿細
管では、azPC による NHE 活性亢進作用を認めなかった。以上から、azPC は、
PPARγ依存的に管腔側 NHE 活性を亢進させることが示された。
4. 単離近位尿細管の管腔を虚脱させた状態で、灌流液中の重炭酸濃度を 25 mM から
12.5 mM に急速に変化させた際の初期細胞内 pH 変化速度を測定することで、Wistar
ラット(雄)の基底側 NBCe1 活性を解析したところ、azPC は濃度依存性に、
NBCe1 活性を亢進させた。azPC によるこの NBCe1 活性亢進作用は、GW9662 で完
全に抑制された。また、PPARγをノックダウンした培養単離近位尿細管では、azPC

による NBCe1 活性亢進作用を認めなかった。以上から、azPC は、PPARγ依存的に
NBCe1 活性を亢進させることが示された。
5. azPC による管腔側 NHE 活性亢進作用及び基底側 NBCe1 活性亢進作用のシグナル伝
達経路を調べるために、MEK 阻害剤である PD98059 の影響を検証した。その結果、
azPC による管腔側 NHE 活性及び NBCe1 活性亢進作用は、ともに、PD98059 で完
全に抑制された。ウェスタンブロッティングによる蛋白発現量の分析では、azPC はラ
ット腎皮質における ERK のリン酸化を濃度依存性に亢進させ、この azPC による
ERK のリン酸化亢進作用は、GW9662 及び PD98059 の両者で阻害されることが示さ
れた。
6. 2~5 より、ラットにおいて、azPC は、PPARγ/MEK/ERK 経路を介して管腔側
NHE 活性及び基底側 NBCe1 活性を亢進させることが示された。
7. ヒトの単離近位尿細管及び腎皮質を使用して、同様の検討を行ったところ、ヒトにお
いても、azPC は PPARγ/ERK 依存的に管腔側 NHE 活性及び基底側 NBCe1 活性を
亢進させることが示された。
以上、本論文は単離近位尿細管灌流法で管腔側 NHE 及び NBCe1 の機能評価を行うこ
とで、ラット及びヒトにおいて、azPC が、PPARγ/MEK/ERK 経路を介して、近位尿細
管ナトリウム再吸収を亢進させることを明らかにした。本研究は、粥状硬化により産生さ
れる酸化リン脂質が体液貯留に寄与する可能性を示唆したものであり、粥状硬化症に伴う
高血圧発症機序の解明に重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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