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Physiological function of dietary oleamide in the regulation of skeletal muscle mass

小林 恭之 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017713

2022.07.05

概要

序章
骨格筋は運動機能や姿勢の保持だけでなく、糖や脂質の代謝も担う組織である。現代社会におけるデスクワーク中心のライフスタイルは運動不足を引き起こし、年齢に関わらず骨格筋の量的・質的な低下をもたらす。骨格筋量の低下は運動機能の低下だけでなく、代謝性疾患に罹患するリスクを増大させる。骨格筋量は筋線維におけるタンパク質の合成と分解のバランスで制御されており、運動などの刺激に応答してタンパク質の合成の割合が分解を上回るとき、筋線維は肥大し、骨格筋量が増加する。近年、骨格筋の健康を維持する有効な手段として機能性食品成分の活用に期待が寄せられている。摂取された機能性食品成分は吸収後、標的組織に適切な濃度で到達し、作用する必要がある。生体内における食品成分の機能性を正しく理解するために食品成分の吸収過程、代謝機構、生体利用率を考慮した考察が必要である。オレアミド(cis-9,10-octadecenamide)は代表的な一級脂肪酸アミドである。オレアミドは生体内で合成され、運動後のラットの骨格筋細胞間質液において濃度が3倍まで上昇する。一方で、オレアミドは食品成分に含まれ、外因的に体内へと取り込まれる。しかし、オレアミドが骨格筋のホメオスタシスを維持する脂質メディエーターとして機能性を発揮するかは不明である。またオレアミドの内因性の血中濃度に関しては統一した見解はなく、さらにオレアミドを外因的に経口摂取した際の吸収過程、代謝機構も不明である。そこで本研究では代表的な一級脂肪酸アミドであるオレアミドの骨格筋量へ与える影響とその詳細な分子機構、さらにオレアミドの腸管における吸収過程と代謝機構について解明することを目的とした。

第1章行動範囲制限マウスで誘発される前脛骨筋萎縮に対するオレアミドの影響
7週齢ddYオスマウスにおいて内因性のオレアミドの血中濃度は約30nMであった。オレアミドを経口摂取した際に外因性と内因性のオレアミドを区別するために、分子量が2異なる安定同位体標識オレアミド(SIL-オレアミド)を合成した。SIL-オレアミド(50mg/kg)をマウスへ経口投与した結果,投与後1時間でSIL-オレアミドの血中濃度が約170nMに達し、投与後6時間まで維持された。したがって、内因性オレアミドの濃度を考慮すると、外因性オレアミドが投与された際のオレアミドの血中濃度は約200nMにまで達すると予想された。次に現代人の運動不足なライフスタイルを模倣するために、通常のケージの床面積を1/6サイズにしたケージで飼育することで行動範囲を制限したマウスへのオレアミドの投与実験を行った。通常のケージで飼育するcontrol群、通常のケージの床面積を1/6サイズにしたケージで飼育するsedentary群、sedentary群へオレアミド(50mg/kg/day)を経口投与するsedentary-oleamide群の全3群を4週間飼育した。飼育期間中に全身の運動性を示すマウスの前肢の握力を測定した結果、行動範囲を制限することで低下する前肢の握力がオレアミドを経口投与することによって抑制された。4週間後のオレアミドの血中濃度はcontrol群とsedentary群の間で有意な差はなく、30―40nMであった。一方でsedentary-oleamide群のオレアミドの血中濃度は約120nMであった。骨格筋量に関しては瞬発的な動きを担う前脛骨筋において行動範囲を制限することによって筋重量が減少し、オレアミドを摂取することでその減少が抑制された。骨格筋を構成する筋線維の断面積を測定したところ、行動範囲を制限することで筋断面積の大きい筋線維の割合が減少し、筋断面積の平均値も減少したが、オレアミドを摂取することによって筋断面積の低下は抑制された。骨格筋でのタンパク質合成系の主要なシグナル経路であるmTOR経路について評価した結果、前脛骨筋においてAkt(mTORの上流因子)、mTOR、p70S6K(mTORの下流因子)のリン酸化レベルがオレアミドを摂取することで上昇した。タンパク質分解系として凝集タンパク質などのクリアランスを担うオートファジーについて評価した。オートファジー不全を起こしたマウスは筋萎縮を呈し、オートファジーマーカーであるLC3-IIと選択的基質であるp62が蓄積する。行動範囲制限マウスの前脛骨筋において、LC3-IIとp62のタンパク質レベルが増加したが、オレアミドの摂取によりその増加が抑制された。以上の結果から、オレアミドは行動範囲を制限したマウスが呈する前脛骨筋の萎縮を抑制した。また前脛骨筋においてオレアミドの摂取はmTOR経路を活性化させ、行動範囲制限マウスが呈するオートファジーの低下を抑制すると示唆された。

第2章オレアミドの筋肥大作用に対するGタンパク質共役型受容体CB1の関与
第1章で行動範囲制限マウスで誘発される筋萎縮をオレアミド摂取が抑制することを明らかとした。本章ではオレアミドが骨格筋量を調節する分子機構を解析した。マウス由来筋芽細胞株C2C12細胞を分化させた筋管細胞において、オレアミドを外因的に経口摂取した際の生理的濃度範囲内である100nMのオレアミド存在下で培養を行った。その結果、オレアミドはタンパク質合成を促進し、筋肥大の指標である筋管細胞の短径を有意に上昇させた。さらにオレアミドは筋管細胞においてAkt、mTOR、p70S6Kのリン酸化レベルを上昇させた。またmTORの阻害剤あるいはp70S6Kの阻害剤はオレアミドがもたらす筋肥大作用を抑制した。次にオレアミドの標的タンパク質としてGタンパク質共役型受容体であるcannabinoid receptor 1(CB1)に着目した。オレアミドは脳において数µMの濃度範囲でCB1を活性化させるが、生理的濃度範囲内である100nMでのオレアミドによる筋肥大作用にCB1が関与するのかは不明である。siRNAを用いてCB1をノックダウンした筋管細胞においてオレアミド存在下で培養を行った結果、オレアミドがもたらすp70S6Kのリン酸化レベルの上昇、タンパク質合成の促進、筋肥大の促進がCB1ノックダウンによって抑制された。さらにCB1のノックダウンに対するレスキュー実験を行うため,siRNA耐性CB1を高発現させた細胞で、内因性CB1の発現をsiRNAによってノックダウンさせた。その結果、オレアミドによるp70S6Kのリン酸化レベルの上昇がCB1ノックダウン下においてその作用が抑制された一方で、siRNA耐性CB1を高発現することでオレアミドのp70S6Kのリン酸化レベルの上昇が回復した。CB1を含むGタンパク質共役型受容体は細胞内Gタンパク質と共役することで下流のシグナル伝達を制御し、生理機能を発揮する。そこで4つの主要なGタンパク質であるGαs、Gαi、Gαq、Gα12/13に関連する転写活性に及ぼすオレアミドの影響を評価した。その結果、CB1高発現下においてオレアミドはGαs、Gαi、Gαq、Gα12/13に関連するいずれの転写活性にも影響を及ぼさなかった。CB1はGタンパク質非依存的にチロシンキナーゼであるSrcを活性化させることから、Srcについて評価した。その結果、オレアミドは筋管細胞においてSrcのリン酸化レベルを上昇させた一方でCB1ノックダウン下においてその作用が抑制された。さらにSrc阻害剤はオレアミドがもたらすp70S6Kのリン酸化レベルの上昇を抑制した。以上の結果から、オレアミドはCB1/Src/mTOR経路を活性化させ、筋肥大をもたらすことが示唆された。

第3章オレアミドの腸管における吸収経路と機構
経口摂取したオレアミドの機能性を正しく理解する上で、オレアミドの吸収経路や吸収機構に関する情報は不可欠である。そこで初めに、内在性オレアミドと区別できるSIL-オレアミドを用いて、小腸で吸収された食品成分が輸送される門脈あるいは胸管リンパ管へのSIL-オレアミドの輸送について評価した。門脈あるいは胸管リンパ管へカテーテルを挿入したラットの十二指腸内へSIL-オレアミドを投与した結果、SIL-オレアミドは主に門脈へと輸送され、体内循環することが判明した。小腸上皮モデルCaco-2細胞において、SIL-オレアミドの細胞内への取り込みについて評価した結果、オレイン酸または脂肪酸輸送体CD36阻害剤によってSIL-オレアミドの取り込みが抑制された。オレアミドの腸管吸収を評価するためトランスウェル上でCaco-2細胞をSIL-オレアミド存在下で培養した結果、SIL-オレアミドが細胞内へと取り込まれた後、基底膜側(下層)へと透過した。一方で、細胞内と基底膜側のSIL-オレアミドの総量は、頂端側(上層)で減少したSIL-オレアミド量の2.3±0.3%と極めて低かった。そこでオレアミドが細胞内で脂肪酸アミド加水分解酵素FAAHにより分解されていると仮説を立てた。トラスウェル上でCaco-2細胞をSILオレアミドとFAAH阻害剤存在下で培養した。その結果、FAAH阻害剤非存在下において、細胞内と基底膜側のSIL-オレアミドの総量は、頂端側で減少したSIL-オレアミド量の7.0±1.8%だったが、FAAH阻害剤共存下において、細胞内と基底膜側のSIL-オレアミドの総量は45.0±6.9%にまで増加した。さらにオレアミドの血中濃度に及ぼすFAAH阻害の影響を評価するため、FAAH阻害剤を投与したマウスへSILオレアミドを投与した。SIL-オレアミドの単独投与時にはSIL-オレアミドの血中濃度は約160nMに達したが、FAAH阻害剤の投与によってSIL-オレアミドの血中濃度は約910nMに達した。以上の結果より、腸管で吸収されたオレアミドは主に門脈を経て体内循環することが明らかとなった。また、オレアミドはCD36を介して小腸上皮細胞内へと取り込まれ、細胞内でFAAHにより分解されると示唆された。

まとめ
本研究をまとめると、オレアミドは行動範囲制限マウスが呈する前脛骨筋萎縮を抑制することが明らかとなった。さらに筋管細胞において、オレアミドはCB1を介してSrc/mTOR経路を活性化させることで筋肥大を誘発することが示唆された。また経口摂取されたオレアミドは主に門脈へと輸送され、体内循環することが明らかとなり、オレアミドはCD36を介して小腸上皮細胞へと取り込まれ、細胞内でFAAHによって分解されていることが示唆された。

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