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大学・研究所にある論文を検索できる 「Streptococcus pyogenes の温度依存性線毛産生機構の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Streptococcus pyogenes の温度依存性線毛産生機構の解析

窪田, 星子 大阪大学

2021.03.24

概要

Streptococcus pyogenesは血清型依存的に多様な線毛を分泌する.血清型M49型菌株は通常の培養温度である37˚Cで線毛を産生せず,より低温で産生する.30˚C以下の培養温度では,転写制御因子であるNraが線毛関連遺伝子の発現を正に制御することが報告されている.しかし,温度依存性の線毛産生に関わる制御機構には不明な点が多い.RNA分解酵素であるCvfAは温度変化に伴い莢膜の産生を調節する.本研究では,CvfAに着目し,病原性と温度依存的な線毛産生の機構への関与について検討した.

血清型M49型591株を親株としてcvfA欠失株および復帰変異株を作製し,37˚Cおよび25˚Cで培養した.CvfAの産生量は培養温度に関わらず一定であった.しかし,線毛メジャーサブユニットであるFctAに対する抗血清を用いたウェスタンブロット解析により,37˚Cで培養した何れの菌株からもFctAは検出されなかったが,25˚Cでの培養では,全ての菌株で高分子ラダーバンドがFctAとして検出された.また,FctAの検出量はcvfA欠失により減少した.さらに,25˚Cでの培養時,線毛関連遺伝子cpa,fctA,およびsrtC2の転写量はcvfA欠失により有意に減少した.したがって,CvfAは25˚Cでの線毛産生に関与することが明らかとなった.

ノンコーディングRNAであるfasXはcpaおよびfctAのmRNAの翻訳を抑制する.fasXの転写を解析した結果,野生株および復帰変異株と比較して,cvfA欠失株ではmRNA検出量は有意に減少した.fasXはcpaの翻訳を抑制するが,cvfA欠失株では上記のようにcpa転写量も抑制されたことから,CvfAはfasX以外の線毛産生制御に関わる因子に作用する可能性が示唆された.

二成分制御系CovRSの転写因子であるCovRが線毛マイナーサブユニットをコードするcpaのプロモーターへ結合することにより,線毛関連遺伝子の発現を負に制御する.抗CovR抗血清を用いたウェスタンブロット解析により,25˚Cで培養された野生株,cvfA欠失株,および復帰変異株では,37˚Cでの培養時と比較して,リン酸化CovR量は増加した.25˚Cでの培養で全ての菌株から調製した細胞壁画分では,FctAの重合を反映する高分子ラダーバンドが検出されたこととCovRが線毛関連遺伝子の抑制因子であることに鑑みると,CvfA依存的な線毛産生にCovRが関与する可能性は低く,他の因子の関与が示唆された.また,cvfAの欠失によりcovRのmRNA量は両温度で有意に増加した.しかし,CovR検出量およびリン酸化率はcvfAの欠失により変化しなかったため,CovR依存的な線毛制御機構は培養温度とCvfAに影響を受けないことが示唆された.

cvfAの欠失によるnraの転写への影響を両温度で検討したところ,cvfA欠失株では,野生株および復帰変異株と比較して,nraのmRNA転写量は有意に減少したが,変化は少なかった.cvfA欠失株のNra産生量は,野生株および復帰変異株のそれと比較して,特に25˚Cで著しく減少した.したがって,CvfAはnraの翻訳効率を促進させることが示唆された.また,fasXの欠失によりnraの転写量は有意に増加したが,Nra産生量に変化は認められなかった.したがってNraによる線毛産生の機構には関与しないと考えられた.

CvfAの病原性への関与を検討するためプレートアッセイを行った結果,37˚Cで培養した各菌株間で,溶血能および分泌型システインプロテアーゼSpeBの活性に差は認められなかった.一方,25˚Cでの培養では,野生株および復帰変異株と比較して,cvfA欠失株は高い溶血能を示したが,SpeB分解活性は低下した.また,ヒト全血殺菌試験を行った結果,野生株および復帰変異株と比較して,cvfA欠失株は培養温度に関わらず低い生菌率を呈した.

以上の結果から,血清型M49型菌株のCvfAは,初期感染部位を反映する環境温度(25˚C)でnraの翻訳効率を上昇させ,線毛産生に寄与することが明らかになった.また,CvfAがCovRとfasXによる線毛関連遺伝子の発現制御に関与する可能性は低いことが示された.S.pyogenesは皮膚および咽頭でCvfA依存的に線毛を産生することで定着し,SpeBの活性を上昇させることで組織内に侵入して,宿主の免疫から回避して増殖することが示唆された.

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