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大学・研究所にある論文を検索できる 「ナノサイズの構造を有する柔軟性環境対応材料の創出と高性能化」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

ナノサイズの構造を有する柔軟性環境対応材料の創出と高性能化

青山, 泰三 神戸大学

2021.03.05

概要

近年、環境面において産業材料のリサイクル、マイクロプラスチックスによる海洋汚染、地球温暖化に加えて都市のヒートアイランド化等が大きな問題となっており対応策が求められている。これらの問題に対する解決策として、材料面から貢献できるナノサイズの構造を有する以下の3つの柔軟性環境対応材料をとりあげ、その創出と高性能化について研究した結果を報告する。

1.完全飽和型イソブチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン―イソブチレン―スチレンブロック共重合体(SIBS)は、これまで存在していなかったIIR(ブチルゴム)の熱可塑性エラストマーとして位置づけられる唯一の材料である。リビングカチオン重合法を応用し、イソブチレンを重合したのち引き続きスチレンを添加し重合させることで合成される。特定の溶媒種の組み合わせにより安定的な量産化技術を確立した。スチレンによる物理架橋相のドメインサイズが約10~30nmの相分離構造を有し、柔軟成分がイソブチレンからなるリサイクル可能な環境対応型のゴム材料として創出した。イソブチレン骨格由来の特徴として、完全飽和型であり耐熱老化性に優れ、さらに柔軟性、ガスバリア性、粘着性、制振性等の特徴を活かして、シール材、チューブ材、粘着材、制振材等での用途が期待でき、より具体的には軟質コンパウンド、ガスバリア性樹脂の改質剤、粘着保護フィルム、制振性サンドイッチ成形体等での特性を示し、用途展開の可能性を提案した。

2.生分解性ポリエステル(3-ヒドロキシブチレート―3-ヒドロキシヘキサノエイト共重合体(PHBH))は、植物由来のパームオイルを栄養分とする微生物産生の生分解性ポリマーであり、カーボンニュートラルで廃棄物抑制の環境型ポリマーである。また、海洋分解性を有しており、マイクロプラスチックスへの対応策で近年、大きく注目されている。柔軟性成分である3-ヒドロキシヘキサノエイトの共重合により柔軟性があり実用性が高いが、成形加工時の結晶性が悪く、使用範囲が限定されてきた。PHBHの結晶構造(ラメラの厚み)は約5nmであり、加工時にそのPHBH自身の残存結晶が効果的な結晶核剤として作用することを、オンラインの近赤外分光法により確認した。押出混練という動的な環境下での分析で、押出機出口での残存結晶量と、その後の押出ストランドの結晶化挙動との関連付けを行い、両者に密接な関係があることを確認した。また、アブラミの式により結晶化挙動の解析を行い、結晶核の生成がより不均一であり、結晶成長が棒状で一次元的であることを示唆する結果が得られた。また、 PHBHよりも高融点のPHB(3-ヒドロキシブチレート重合体)を添加することによる効果についても検証し、より高い加工温度領域においても残存結晶による結晶核剤としての効果が発現することを確認した。以上のことから、PHBHにおいて適切な加工条件を選択し、残存結晶量を制御することで、各用途における実用的な結晶化挙動が得られることを示した。

3.都市部で問題となっているヒートアイランド現象を緩和できる環境材料として高日射反射率塗料が注目されている。コア(柔軟性成分)/シェル(硬質成分)型で粒子径が約200nmの乳化重合粒子からなる弾性型のアクリルシリコン系塗料の表面に親水性材料を偏在させることで、低汚染型の屋根用高日射反射率塗料となり、高い反射率を維持でき、熱負荷低減効果を有することを確認した。これらの効果が、塗料の色に関係なく、濃色系においても低汚染型の効果があることを確認した。また、日米の促進汚染試験法の比較を行い、日本の暴露環境や低汚染性の材料にもより適した促進試験法の提案を行った。また、実物件における効果を確認し、日本だけではなく、より東南アジアの地域において、その熱負荷低減効果が大きいことを示した。また、太陽高度の変化による日射反射率の季節変動や塗膜の劣化による影響を確認した。以上のことから、低汚染型塗料の効果を示し、屋根用高日射反射率塗料に応用することの有効性を示した。

以上、3つのナノサイズの構造を有する柔軟性材料について、それぞれリサイクル可能な新規イソブチレン系熱可塑性エラストマーの創出、マイクロプラスチックス問題に対応した海洋分解性の生分解性ポリエステルの結晶化促進、ヒートアイランド問題改善のため、低汚染型塗料の屋根用高日射反射率塗料への応用を提案するものであり、これらの研究を通じて新しい材料の創出や高性能化を図り、材料面から環境対応への貢献を高められるものであると考えている。

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