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大学・研究所にある論文を検索できる 「ホモγ-ポリグルタミン酸の低コスト・高効率な微生物生産プロセスの開発に向けた研究とバイオファウンドリにおける事業化検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ホモγ-ポリグルタミン酸の低コスト・高効率な微生物生産プロセスの開発に向けた研究とバイオファウンドリにおける事業化検討

山本, 純也 神戸大学

2022.09.25

概要

プラスチックによる環境汚染問題を背景に、バイオプラスチックの需要が高まりつつある。新たな特性を持つバイオプラスチックの開発に向けて、納豆のネバネバの主成分であるy-ポリグルタミン酸(以下y-PGA)というポリマーが新規原料として注目されている。しかし、納豆菌などのバクテリアが生産するy-PGAは、互いに光学異性体で異なる構造のD体とL体のグルタミン酸が重合したヘテロポリマーであり、結晶性が低いためにプラスチックとしては実用的でない。一方、L体のみの同一構造の物質からなるホモy-PGA(y-L-PGA)は結晶性が高く、強固なプラスチックとなるポテンシャルを持つ。また、遊離したCOOH基の化学反応効率が高く、機能付加が比較的容易である。このような特性を持つy-L-PGAを新規プラスチック原料として利用することで、新たな機能を持つバイオプラスチック素材の開発が期待できる。

y-L-PGAを生産する微生物としては、好塩古細菌Natrialba aegyptiacaが唯一の報告であるが、その増殖およびy-L-PGA生産には豊富な栄養源を必要とし、さらにその生産効率も低い。そのため、現状のv-L-PGA生産は非常に高コストで、プラスチック原料としての普及の大きな障壁となっている。一方で、物質生産能に優れた枯草菌を宿主としてyーL-PGA生産を実現できれば、その低コスト・高効率化が期待できる。枯草菌は、グルコース・アンモニアを単一の炭素源・窒素源とした安価な最少培地でも増殖できるため、培地コストの大幅な低減が可能である。また、遺伝子操作が簡便で、グラム陽性細菌のモデル微生物として研究が大きく進んでおり、遺伝子の改変による高効率化も期待できる。

本研究では、最少培地においてy-L-PGAを高生産する枯草菌株の開発に向けて研究を行った。そして、従来のN.aeguptiacaによるy-L-PGA生産と比較して、大幅な低コスト化が実現し得ることを示した。しかしながら、バイオプラスチックの低コスト要求に応え得るほどの高い生産効率は実現しなかった。さらなる高生産化に向けては、y-L-PGA生産に関与する様々な遺伝子の発現量を最適化することが求められるが、その改変パターンは膨大で、人の手で仮説・検証を行うことはほぼ不可能である。この課題の解決には、コンピュータ支援・オートメーション化が進んだバイオファウンドリにおける研究開発が効果的と考えられたことから、神戸大学発バイオファウンドリ「株式会社バッカス・バイオイノベーション」における事業化を検討した。

バッカス社における事業化を検討する前に、まず創業期のバッカス社にも成功に向けた戦路分析が必要である。そこで、先行する米国のバイオファウンドリAmyris社、Ginkgo Bioworks社、Zymergen社のバリューチェーンを中心としたベンチマーク分析を行い、また、ファウンドリビジネスの成功事例である半導体ファウンドリTSMC(Taiwan Semiconduct or Manufacturing Company)社のバリューチェーンとの比較分析を行い、創業期のバイオファウンドリに適切な戦路を分析するためのインプリケーションを得た。そして、それを踏まえて、バッカス社へ戦路提言を行い、研究成果であるy-L-PGAの事業化提案を行った。

本論文は第一部の「先端研究」と第二部の「事業化検討」で構成される。
第一部の「先端研究」は三つの章で構成される。

第一章では、y-PGAの高生産化を実現した「細胞分化の抑制によるy-PGAの高生産化」について述べる。本研究では「枯草菌MGIB874株」と呼ばれる、物質生産の障害となり得る非必須遺伝子領域を大規模に失したゲノム縮小株を親株として利用した。一方で、このMGB874株は、ゲノム縮小に伴う増殖速度の低下というネガティヴな表現型が見られた。これまでの筆者らの研究で、この増殖速度の低下は枯草菌が持つ細胞分化機能の誘導によるもので、さらにこの分化の誘導がMGB874株の物質生産能の低下にも繋がっていると考えられた。本研究では、グローバル制御因子AbrBを恒常的に高発現することで、細胞分化の抑制を試みた。結果として、細胞分化をほぼ完全に抑制し、それによって増殖速度の回復とv-PGA生産効率の倍増を実現した。

第二章では、バクテリアにおけるyL-PGA生産を初めて実現した「枯草菌におけるyーレ-PGA生産の実現」について述べる。枯草菌では、y-PGA合成酵素複合体PgsBCAEによってヘテロy-PGAが生産される。一般的に、y-PGAの生産にはPgSB、PgsC、PgsAがそれぞれ必須と考えられているが、それらの詳細な機能は分かっていない。本研究では、yーレ-PGAを生産する突然変異株のスクリーニングに成功した。そして、その変異を解析することでPgsBCAの機能を部分的に解明し、枯草菌においてyL-PGAが生産されたメカニズムを明らかにした。得られたy-L-PGAの分子量は、N.aegyptiaca由来のものと比較して6倍の大きさであり、産業利用の拡大が期待できる。

第三章では、先端研究の総括として、これら2つの研究成果の今後の展望を述べ、成果を統合することで、従来のN.aegyptiacaによる生産と比較して低コスト・高効率なy-L-PGA生産が実現し得ることを示した。

第二部の「事業化検討」は七つの章で構成される。

第一章では、背景として、生物学における新たな学問分野である合成生物学、研究開発のワークフローであるDBTLサイクル、そしてDBTLサイクルを効率的に実施するプラットフォームであるバイオファウンドリについて述べた。

第二章では、まず産業バイオ業界のPEST分析やバイオファウンドリ業界の5-Froces分析によってバイオファウンドリの外部環境について分析した。そして、内部環境分析として、産業バイオ業界とバイオファウンドリのバリューチェーンを作成し、それをもとにバイオファウンドリのビジネスモデルを定義した。

第三章では、先行する米国のバイオファウンドリAmyris、Ginkgo Bioworks、Zymergenのベンチマーク企業分析を行い、各社のビジネスモデルや経営資源などについて分析した。そして、それをもとに創業期のバイオファウンドリが選択しなければならない戦略のオプションについて分析した。

第四章では、ファウンドリビジネスの成功事例である半導体ファウンドリTSMCのバリューチェーンをバイオファウンドリのバリューチェーンと比較分析した。そして、TSMCの成功要因をもとにバイオファウンドリの課題を見出し、それを解決するために求められる創業期のバイオファウンドリの当面の戦略を分析した。

第五章では、第三・四章の分析内容とバッカス社の経営資源を踏まえて、バッカス社へ戦路提言を行った。

第六章では、第五章の戦略提言に沿って、第一部の研究成果である低コスト・高効率なy-L-PGA生産に関する事業化提案を行った。

第七章では、第二部の総括を行った。

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