The Effect of Chemotherapy on Stroke Risk in Cancer Patients
概要
〔目的(Purpose)〕
がん患者は、脳卒中リスクが高いことが知られており、がん患者で脳卒中リスクが高い原因としてさまざまな機序が提唱されている。化学療法中に脳梗塞を発症した症例の報告は多数あり、化学療法はがん関連脳卒中の原因の一つとして注目されているが、これまで詳細な検討はなされていなかった。そこで我々は、がん患者において化学療法が脳卒中リスクに与える影響を検討した。
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
当院の院内がん登録に2007年から2015年の間に登録された患者のうち、19006例を対象として後ろ向きコホート、研究を行った。脳卒中の発生は、電子カルテ情報を用いる検証済みアルゴリズムを用いて同定した。がん診断後2年間以内に抗がん化学療法を受けた患者を化学療法群、それ以外を非化学療法群として、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いて脳卒中リスクを比較した。
31%の患者が化学療法群であった。2年以内の脳卒中は化学療法群の44例(0.75%)、非化学療法群の51例(0.39%)に生じた。調整前には、化学療法群は脳卒中リスクが高かった(HR1.84; 95% CI 1.23-2.75)が、がんの部位およびステージで調整すると有意な差は認められなかった(HR1.20; 95% CI 0.76-1.91)。
〔総括(Conclusion)〕
我々のコホートにおいて、化学療法を施行された患者の脳卒中リスクが高かったのは、おそらくは化学療法群のステージが進んでいたからであった。
分子標的薬以外の化学療法は、脳卒中リスクに大きな影響を与えないのかもしれない。