LaCoste & Romberg型重力計を用いた重力加速度の相対測定
概要
LaCoste & Romberg 型重力計(単に LaCoste 型重力計やラコスト重力計とも呼ばれる)はゼロ長バネを内蔵した可搬型の相対重力計で、異なる重力点間の重力差を測定するために用いられる。また、同様の測定を定期的に繰り返すことで、重力値の時空間変化を把握し、固体地球起源の質量変動を検出することができる。例えば、阿蘇火山や桜島火山では 1960–70 年代から LaCoste 型重力計による相対重力の繰り返し測定が継続されており (久保寺ほか, 1974; 田島ほか, 1975)、ここまでの半世紀に取得された重力データは火山活動の監視にも役立てられてきた。
そもそも、可搬型相対重力計には LaCoste 型や Scintrex 型など複数の種類が存在する。このうち Scintrex型ではボタン操作で重力値を自動で取得できるという強みがあるが、日本国内での利用台数はそれほど多くなく、相対重力の測定はいまだ LaCoste 型重力計が主流である。LaCoste 型は煩雑なマニュアル操作を要するものの、その扱いに慣れてしまえば測定精度約 10 Gal (= 1.0 × 10−7 m/s2 ≃ 1.0 × 10−8 G)という高精度な相対重力値測定を実現できる (e.g., 坪川, 2005)。また、LaCoste 型重力計の相対重力データで時間変化を捉えたい場合には、過去のデータとの連続性という観点からも、将来にわたって LaCoste型重力計による重力測定を続けていくことが重要である。
そこで本稿では、LaCoste 型重力計と検流計を用いて現場で読取値を測定し(リードアウト法)、その読取値から相対重力値を算出するまで一通りの手順を説明する。また、得られた相対重力値と、各重力点の座標値の情報を用いて、重力異常を算出する方法についても触れる。なお、精度の良い相対重力測定を実施するには重力計を事前に検定しておくことが重要であるが、本稿における詳細な説明は割愛し、他の文献 (e.g., 志知, 1985; 渡邉, 2017) に譲ることにする。