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Evaluation of the Pentax‐AWS® and the Macintosh laryngoscope in difficult intubation: a manikin study

刈谷 隆之 横浜市立大学

2021.11.30

概要

1.序論
 気管挿管困難は麻酔科医にとって重要な問題である.気管挿管の失敗は低酸素症, 徐脈さらに心停止を引き起こす可能性がある(Caplan et al., 1990; 入田ら, 2004).様々な気道確保デバイスが気管挿管困難に対して使用可能になっている.新しいビデオ喉頭鏡であるエアウェイスコープは, 挿管困難症例において有用であるとする報告がある(Asai et al., 2007; Koyama et al., 2007).しかし気管挿管困難の原因には多くの原因があるため, ある状況に有用な気道確保デバイスが別の状況では有用でないことがあり得る.エアウェイスコープの使用がどのような機序やセッティングによる挿管困難に有用であるかは明らかになっていない.これを明らかにすることは, 緊急時に迅速に適切な気管挿管器具を選択することにつながるため本研究を企画した.

2.方法
 気管挿管困難は, 発生頻度はそれほど高くなく, 事前に予測することは困難である(Japanese Society of Anesthesiologists, 2014)ことから, 前向き研究での対象症例の集積は困難と考えられた.また気管挿管は侵襲的処置であるため, 一人の患者に対して, 器具を変えて複数回の気管挿管を試みるクロスオーバー試験とすることは倫理的でなく, また挿管困難管患者においては危険性も高いため許容できないと判断した.代替の研究方法として, 実際の麻酔患者に対して何らかの制限を加えることで挿管困難モデルを作成することが考えられる.しかし, 実際の患者で作成できる挿管困難モデルは非常に限定されたものであり, 今回の研究の目的を達成することができない.このため, 今回の研究方法としてマネキンを使用したシミュレーション研究を選択した.
 様々な挿管困難気道を再現できる高忠実度シミュレーターであるシムマンマネキンを用いたシミュレーション研究を行った.挿管施行者は臨床経験3年以上の麻酔科医とし, エアウェイスコープによる気管挿管を10回以上経験しているものは除外した.(1)正常気道(2)舌浮腫(3)頚部可動域制限(4)咽頭閉塞(5)開口障害(6)咽頭閉塞を伴う舌浮腫の6種類のモデルに対して, マッキントッシュ型喉頭鏡とエアウェイスコープによる気管挿管を行った.プライマリーエンドポイントは, 挿管成功率とした.セカンダリーエンドポイントは, 挿管所要時間と5段階の主観的困難度とした.気管挿管成功率は, パーセントで示し, McNemar testで分析した.気管挿管所要時間は, 平均(標準偏差)で示し, 対応のないt検定で分析した.挿管困難スケールは, 中央値(範囲)で示し, Wilcoxonのsigned-rank testで分析した.P値<0.05を統計的有意とした.

3.結果
 23人すべての参加麻酔科医がこの研究を完遂した.参加者の臨床麻酔経験(中央値(範囲))は, 13(3-22)年であった.舌浮腫と, 咽頭閉塞を伴う舌浮腫の2つのシナリオにおいて, エアウェイスコープはマッキントッシュ型喉頭鏡よりも, 高い気管挿管成功率(100% vs. 34.8%; P<0.001, 65.2% vs. 21.7%; P=0.006)と短い挿管所要時間(14.6(7.0) vs. 33.4(13.0)秒; P<0.001, 24.5(12.0)vs. 37.6(11.9)秒; P=0.047), 低い困難スコア(2(1–4)vs. 5(1–5); P<0.001, 4(2–5) vs. 5(3–5); P=0.001)を示した.頚部可動域制限シナリオでは, 挿管時間はマッキントッシュ型で短かく(20.8(9.0) vs. 14.8(6.3)秒, P=0.013), 挿管成功率・挿管困難度に統計学的有意差を認めなかった. 正常気道シナリオでは, エアウェイスコープはマッキントッシュ型喉頭鏡よりも挿管所要時間が短かった(9.3(2.5) vs. 15.6(10.2)秒, P=0.007, 8.8(2.8) vs. 11.0(2.6)秒, P=0.008). 1回目・2回目ともに挿管成功率・挿管困難度に統計学的有意差を認めなかった.開口障害および咽頭閉塞シナリオでは, , 挿管成功率・挿管時間・挿管困難度に統計学的有意差を認めなかった.

4.考察
 エアウェイスコープは, 舌浮腫, および咽頭閉塞を伴う舌浮腫の2つのシミュレーションにおいてマッキントッシュ型喉頭鏡よりも優れていた.この差が生じた機序であるが, マッキントッシュ型喉頭鏡による気管挿管には, 口腔・咽頭・気管の軸が直線上に並ぶことが必要と言われている(Bannister, 1944)が, 舌浮腫ではこれが阻害されるため, マッキントッシュ型喉頭鏡による気管挿管が困難になる.咽頭浮腫では, 喉頭が前方に圧排され, 咽頭腔が狭まるため, 口腔・咽頭・気管軸が直線上に並びにくくなる.エアウェイスコープはこの3軸を直線状に並べることなく, 声門を同定・観察することができる.また, エアウェイスコープのブレード部分は幅広かつ堅牢であるため, 舌浮腫や咽頭浮腫が存在していても喉頭周囲の構造物を押しのけることができるため, 気管挿管施行者はブレードを適切な位置に挿入することが容易である上, ブレード先端部のカメラにより声門を観察するのに十分なスペースを確保することができる.このため今回の結果が得られたと考察する.頚部可動域制限シナリオでもマッキントッシュ型喉頭鏡では口腔・咽頭・気管の軸が直線上に並ぶのが難しくなるため, エアウェイスコープの方が気管挿管が容易になると予想したが, 結果はむしろエアウェイスコープで挿管所要時間が有意に⾧くなった.この理由として, 今回利用したシミュレーターでのこのシナリオでは, 頚部可動域だけでなく開口も制限される構造だったため, ブレードに厚みがあるエアウェイスコープが口腔内に入りにくく, 操作性も減じたためと考えられる.
 今回の結果は, 臨床の気道確保困難時にエアウェイスコープが強みをもつ状況を示唆するものである.この所見を確認するためさらなる臨床研究が必要である.

参考文献

Asai T, Enomoto Y and Okuda Y (2007), Airway Scope for difficult intubation, Anaesthesia, 62, 199.

Bannister F (1944), Direct Laryngoscopy and Tracheal Intubation, The Lancet, 244, 651-654.

Caplan RA, Posner KL, Ward RJ and Cheney FW (1990), Adverse respiratory events in anesthesia: a closed claims analysis, Anesthesiology, 72, 828-833.

入田和男,川島康男,巌康秀,瀬尾憲正,津崎晃一,森田潔,尾原秀史(2004).「麻酔関連偶発症例調査2002」及び「麻酔関連偶発症例調査1999-2002」について(総論)(社)日本麻酔科学会安全委員会偶発症例調査専門部会報告.麻酔53,320-335.

Japanese Society of Anesthesiologists (2014), JSA airway management guideline 2014: to improve the safety of induction of anesthesia, J Anesth, 28, 482-493.

Koyama Y, Inagawa G, Miyashita T, Kikuchi T, Miura N, Miki T, Kurihara R, Kamiya Y and Goto T (2007), Comparison of the Airway Scope, gum elastic bougie and fibreoptic bronchoscope in simulated difficult tracheal intubation: a manikin study, Anaesthesia, 62, 936-939.

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