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大学・研究所にある論文を検索できる 「Three-dimensional multimodality fusion imaging as an educational and planning tool for deep seated meningiomas」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Three-dimensional multimodality fusion imaging as an educational and planning tool for deep seated meningiomas

佐藤 充 横浜市立大学

2021.02.28

概要

【Introduction】
近年、脳神経外科治療の低侵襲化が進み、若手脳神経外科医の直達手術経験数が限られた現状にいて術者育成が大きな課題となっている。術者育成の一つの有効な手段として virtual reality(VR)手術シミュレーションが注目されており、中でも高精細な患者特異的解剖情報を有す Three-dimensional multimodality fusion imaging (3DMFI)を用いた手術シミュレーションの有用性が示唆されている(Kin et al., 2009)。3DMFI を用いた VR 手術シミュレーションは多くの脳神経外科手術において有用であると考えられるが、深部髄膜腫摘出術においては特にその需要が大きい。本邦において髄膜腫は年間 1000 件程度の新規発症が確認される最も頻度の高い頭蓋内腫瘍の一つである。頭蓋内髄膜を発生起源として種々の部位に出現し得るが、うち 40%程度が頭蓋底を含む深部発生である(Japan, 2009)。治療法は手術による最大限摘出が必須であり手術以外での有効な単独治療法は、小型の病変を除き、確立されていない(Ichinose et al., 2010)。一方で頭蓋底髄膜腫をはじめとする深部髄膜腫において合併症なく全摘出を達成する難易度は高く、全摘出達成率は 50%程度にとどまる(Levine et al., 1999)。これが詳細な VR 手術シミュレーションが必要とされる理由であるが、いまだ深部髄膜腫摘出術に関する 3DMFI を用いた手術シミュレーションの教育的効果に関する報告はない。そこで本論文では、頭蓋内深部髄膜腫摘出術に関して 3DMFI の有用性を明らかにすることを目的とした。

【Material and Methods】
2009 年 10 月から 2011 年 1 月までの期間に横浜市立大学附属病院で初回手術を行った連続 14症例の深部髄膜腫患者を対象とした。すべての患者において高解像度 MRI、CT、digital subtraction angiogram (DSA)を撮像し、これらを重畳して 3DMFI を作成した。 3DMFI を 3Dコンテンツ portable document format(PDF)と推奨される手術アプローチムービーの二通りの方法で脳神経外科レジデントおよびフェローに呈示し、シミュレーションを行わせた。その上で、手術解剖、重要構造物温存手順、腫瘍全摘出手順の 3 項目についての理解度を、従来各自で行っていた各 2D 画像を参照しながらの術前検討法と比較しつつ、評価した。また、3DMFI の精度を評価するため、術前予測所見と術中所見の対照を行った。それを元に術前予測所見と術中所見が適合した数を解析し、解剖学的重要構造物(腫瘍栄養血管と腫瘍関連穿通動脈および細静脈)についての同定率(identification rate;IR)と陽性的中率(positive predictive value;PPV) を算出した。さらに、これらの値を従来通りの各 2D 画像読影による術前予測と比較した。

【Results】
3DMFI による手術シミュレーションののち、手術が施行され 14 例中 13 例(92.9%)で神経学的合併症なく全摘出が達成された。3DMFI は評価者(脳神経外科後期レジデントおよびフェロー11 名)の手術解剖、重要構造物温存手順、腫瘍全摘出手順の 3 項目すべてにおいて理解度向上に寄与した(いずれも p<.0001)。解剖学的重要構造物についての IR は腫瘍栄養血管で 100%、腫瘍関連穿通動脈および細静脈で 92.9%であった。また PPV は腫瘍栄養血管で 98.8%、腫瘍関連穿通動脈および細静脈で 76.5%であった。

【Discussion】
本研究では 3DMFI を用いた深部髄膜腫摘出術前シミュレーションが従来の各2D 画像を参照し ながら行う術前検討法と比較して優れていることが明らかとなり、有用な手術支援ツール・手術 教育ツールであることが示された。またシミュレーションに用いた 3DMFI は解剖学的重要微細 構造物の描出において高い精度が確認され、従来の術前予測法よりも優れていることが示された。この結果は、VR 3D モデルの高精細化(微小構造物が正確に描出される)、その効果的呈示方法、 および主観性の可及的排除によりもたらされたと考えられた。3DMFI の高精細化に関しては構 造物抽出のための高いコントラストと解像度を有すモダリティを対象構造物毎に細かく選択したことが寄与したと考察された。高精細な 3D-MFI が頭蓋底腫瘍の解剖学的ランドマーク同定と手術計画策定に有用であるとする報告はいくつか存在しており、本研究を支持する結論となっている(Gandhe et al., 1994, Yang de et al., 2009)。また、VR 3D モデルの術者への呈示方法は現在のところワークステーション上での呈示に限られたものが多いが、本研究では 3D PDF とムービーにて呈示したことで術者の理解が深まったものと考えられる。VR 手術シミュレーションに関する研究は、成績に影響する膨大な潜在的バイアスが内在する「手術」という主観性の高いテーマを扱うため客観性を確保することが困難である。主観性の完全な排除が困難とはいえ、患者の生命に直結する重要なテーマであるため本研究のように最大限の主観性排除努力を模索しつつ、今後もこうした研究結果を出す努力は継続されるべきである。以上を総括して、深部髄膜腫手術において 3DMFI は手術教育ツールまた手術計画ツールとして効果的なものと結論された。今後はさらなる技術革新と他疾患への応用により、安全で効果的な手術教育を拡げていく必要があると考えられた。

参考文献

GANDHE, A. J., HILL, D. L., STUDHOLME, C., HAWKES, D. J., RUFF, C. F., COX, T. C., GLEESON, M. J. & STRONG, A. J. 1994. Combined and three-dimensional rendered multimodal data for planning cranial base surgery: a prospective evaluation. Neurosurgery, 35, 463-70; discussion 471.

ICHINOSE, T., GOTO, T., ISHIBASHI, K., TAKAMI, T. & OHATA, K. 2010. The role of radical microsurgical resection in multimodal treatment for skull base meningioma. J Neurosurg, 113, 1072-8.

JAPAN, C. O. B. T. R. O. 2009. Report of Brain Tumor Registry of Japan (1969-2000) 12th Edition. Neurol Med Chir (Tokyo), 49 Suppl, S1-S96.

KIN, T., OYAMA, H., KAMADA, K., AOKI, S., OHTOMO, K. & SAITO, N. 2009. Prediction of surgical view of neurovascular decompression using interactive computer graphics. Neurosurgery, 65, 121-8; discussion 128-9.

LEVINE, Z. T., BUCHANAN, R. I., SEKHAR, L. N., ROSEN, C. L. & WRIGHT, D. C. 1999. Proposed grading system to predict the extent of resection and outcomes for cranial base meningiomas. Neurosurgery, 45, 221-30.

YANG DE, L., XU, Q. W., CHE, X. M., WU, J. S. & SUN, B. 2009. Clinical evaluation and follow-up outcome of presurgical plan by Dextroscope: a prospective controlled study in patients with skull base tumors. Surg Neurol, 72, 682-9; discussion 689.

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